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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
神学校転入編

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13.初めての実習

 オレたちは校舎に戻り、運動着に着替えてから魔法の練習場に入った。


 運動着といっても、指定の体操服があるわけでなく、動きやすくて汚れてもいい服を持ってきてるだけだ。


 ちなみに、着替えは男女別だった。というか、実習は男女分かれるので、それぞれの練習場の入口から別になっており、入口から練習場までの間に更衣室が設けられているのだ。覗き? オレはそんなことしないよー。


 マルコと喋りながら待っていると、校舎の方から男が一人、練習場に入ってきた。190センチくらいの大柄で筋肉質な体格で、日焼けで色黒な肌、短髪の髪の毛、おまけにジャージみたいな服装と、どう見ても体育教師だ。どの世界でも、運動に最適な服装は同じようなデザインになるんだな。


「こんにちは、諸君。そういえば今日は転入生がいたんだな。え〜と、君かな、私は『風属性』の魔法実習担当のゲルツだ。よろしく」


「タツロウ・タカツキーです、今日からよろしくお願いします」


 威圧感はあるが、そんなにエラソーな言い方ではない。ここはどの教師も程度の差はあれど紳士的だ。なのでこちらも素直に挨拶できる。


 ところで今さらだが、この学校には体育の授業はない。魔法と剣技の実習がその代わりだ。少なくとも週一回、最大で三回実習を選択できるシステムで、オレは魔法二回、剣技一回選択した。剣技も苦手ではないが、どちらかというと魔法の方が得意だからだ。ちなみにマルコも同じ選択だ。


 実習が苦手なやつは大抵魔法一回だけにしている。剣技はやはり運動神経がある程度いいヤツじゃないとキツいしケガするだけだから、学校側もそれを推奨している。


 授業は属性ごとにそれぞれのグループで固まって受ける。中には複数属性持ちもいるが、少数なので毎回グループを変えることで対応しているようだ。


「それではタツロウ君、どれぐらいできるのか教えてくれるかな? 飛行とかはできる?」


 ゲルツ先生からの質問に、オレは即答で返事した。


「もちろんできます! 得意です!」


「そうか、それじゃちょっとこの場でやってもらおうかな」


 先生から許可が出た。よし、午前中のウップンをここで晴らしてやる!


 全身に風を纏うイメージで魔力の集中力を高めていく。そしていよいよ飛べると感じたところで


「それっ」


 と声を出して浮いていく。ユルユルした感じで5メートルほど上がったところで


「はい、出来ました!」


 と大きな声で先生に報告した。どうだ、これだけ飛ぶのは先生でもなかなか難しいだろう?


「……それで、限界ですか?」


 ゲルツ先生からは期待と全然違う反応が返ってきた。え、これまでウチで習ってた時は、先生たちからスゴイですね〜といつも言われてたのに。


「ギャハハ、なんだよそれ! デカい口叩いて全然大した事ねえなー!」


 なんか知ってる声が聞こえてきたのでそちらを向く。げっ、ヒューゴじゃねえか。アイツも風属性かよ。


「いかんぞ、ヒューゴ君。一緒に授業を受けてる仲間じゃないか」


 ゲルツ先生がヤジにすぐ対応してくれた。そしたらアイツ、すぐに黙ってしまった。いい気味だ。


「んー、それじゃ、他のも見せてもらおうかな」


 少し申し訳なさそうに、話を切り替えてくれた。オレはいくつか披露したが、どれも反応はイマイチだ。


 ここでオレは気づいてしまった。くそー、あいつら『ヨイショ』してやがったな! 名ばかりとはいえ皇帝の跡継ぎ、その場はお上手言って誤魔化してたとしても不思議じゃない。


 オレはまさに井の中の蛙だったワケだ。あ〜、これじゃ恥かくだけだ!


「まあ、大体わかった。他に習った魔法はありますか? 一応、全部知っておきたいんでね」


 ゲルツ先生から半ば呆れたように言われてしまった。


 そうだ、あれはまだやってなかったな。どうせボロクソに言われるだろうけど、ここまできたらヤケクソだ。


 オレは右手人差し指の先に集中力を高め、風を指先に収束していった。そして弾丸のような空気の塊を作ると、誰もいない地面に向かってバンッ! と打ち込んだ。周りにいるやつらに衝撃波が飛び、バシッという音とともに地面を20センチくらい抉った。


「……タツロウ君、これを、風烈弾を誰に習ったんだい?」


「ウチの家にいたときに魔法を習った先生、です……」


 ゲルツ先生が迫力ある顔で迫ってきたので、目を逸らしながら恐る恐る答えた。


「これはまだ君たちには教えない、高レベル魔法なんだけどねぇ。知らない人を悪く言いたくはないが、その先生は基礎を教えずにこんなのを教えるなんて、何を考えているのか……」


 そうだったのか、これってそんなに高レベルなやつだったのか。でもこれは先生が悪いんじゃなくて、オレが見栄えのいい風烈弾をたくさん練習させてもらったからなんだけどね。あ、これって忖度されたってやつかな。


 あたりを見回すと、他の学生たちはみんな目を見開いてショックを受けてるようだった。ん、でもなんかすごい視線を感じるな。


 その方向を見ると、ヒューゴが凄い形相で睨みつけてきた。なんだよ、気持ち悪いヤツだな。アイツとは出来うる限り関わらないでおこう。


 オレはここでみんなとは離されて、ゲルツ先生とマンツーマンで基礎ばかりやらされた。魔力の集中の仕方から、腕立て腹筋などの基礎体力まで、キソキソキソ! だった。


 実習は2コマ連続の授業なので、終わるころにはもうヘトヘトになった。あと、危険だからと風烈弾は当分禁止にされてしまった。


「お疲れ、今日は大変だったね。寮に帰って、風呂入ってメシ食ってゆっくり休もう」


 マルコに声をかけられ、やっと起き上がって更衣室に向かった。


 転入初日はいろいろと散々な結果となった。特に、得意と思ってた魔法実習で心を折られかけるダメージを受けてしまった。


 なんかオレって、人質にする価値もない人間なんじゃないか?


 そんなことばかり考えながら、マルコと一緒に寮へ向かった。

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