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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
演劇大会編

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115.仕留めてやる

「タツロウ。これから数発、お前の顔面にパンチを食らわせてやる。それでお前の脳ミソは激しく揺られ続けて、最終的にはトロトロになって廃人となるというわけだ」


 バスティアンは恐ろしい内容を抑揚がほとんどない口調で表情も変えずにサラッと言った。


 コイツ、ガチの悪党だ。


 目的のために人を傷つけたり命を奪っても何とも思わない、単なる仕事の一環として片付けられる。


 そんな目つきをしてやがるぜ。


 そしてそれを可能にするだけの能力とパワーを持ち合わせている。


 このままでは本当にヤバい、何とか態勢を立て直さないといけないが……。


 だけどさっきの右フックで脳震盪を起こしたのか、オレはまだ身体がまともに動かない。


「さあ、あと何発まで、お前は人間性を保っていられるかな〜?」


 今までバスティアンは表情を変えなかったが、このロクでもないセリフを言った時だけ、少しだがニヤついて嬉しそうにしていた。


 人間を壊すのを楽しんでるんだコイツは!


 背中にゾクッとしたものを感じたと同時に、オレの生存本能みたいなものが身体を動かし始めた。


 そこにバスティアンの声が響き渡る。


「フンッ!!」


 同時に放たれた左フックは何とか躱し、反撃の準備をする。


 そして連続攻撃の右フックを頭を下げて避けた瞬間、オレは左手の拳を握った。


 ショートアッパーで相手の右脇腹、急所のレバーを狙うのだ。


「オラッ!」


「お見通しだ」


 ガチッと右ヒジでガードされてしまった。

 だけどボディが、ストマックがガラ空きだぜ!


「オラアッ!!」


 ボスッ! とボディブローが決まった……が感触がおかしい。


 ヤツの腹周りは単なる贅肉ではなく、なんというか分厚いゴムの腹当てをつけてるかのような、タイヤを殴ったみてーな感触だった。


 ダメージが通ったとは思えず、体重差もあってヤツの身体はビクともしない。


 そして次の瞬間、オレの身体は左後方へ吹き飛ばされていた。


「グワアーーーッ!」


「キャーッ! タツロウー!」


 自分とレオナの悲鳴の直後、地面に叩きつけられたのがわかった。


 ダメだ、頭がフワフワしてるというか、意識があるのか無いのかも自分ではっきりしない。


 しかし追い込まれているのだけは確かだ。


 もうこうなったらアレを使うしかない。

 至近距離で相手に当てたら、下手したら命に関わるかもしれん。


 でもやるしかない……オレがやられたら、ソフィアも、アンジェリカも、レオナも先輩もこんなゲス野郎どもに酷い目に遭わされてしまう。


 オレは右手の指先に密かに魔力を溜める。


 バスティアンが不用意に近づいてきたところを仕留めてやる……!


「タツロウ、もう起き上がれないのか? そっちに行ってやるから、無理やり起こされて毎回吹き飛ばされるのと、マウントポジションから顔面を左右から打たれ続けるのとどっちがいいか考えておけ」 


 バスティアンがゆっくりと近づいてきた。

 いいぞ、もっと接近してこい。


 そしてもう少しで、というところでだった。

 ソフィアを拘束している男のゲスな言葉が耳に入ってきたのだ。


「もう、勝負はついたよな? こんなイイ女を目の前にして辛抱できねえ。今すぐこの場で、コイツ襲っていいだろ?」


 テメェ!!

 絶対に、許さねえぞコラアッ!!


「ソフィア! 今すぐ頭をできるだけ下げるんだ!」


 思わず叫んだオレは、ソフィアが何とか左側へ頭を下げて男の顔が見えた瞬間に、指をヤツに向けた。


 魔力で集中と圧縮をした空気の塊を指先から撃つ!


 ズキューンと弾丸並みの速度で男の頭を撃ち抜いた……いや、わずかに逸れて右頬をかすめ、そこから血がダラダラと流れ落ちている。


 男の顔は恐怖で引きつり、足がガクガクして……ズボンが濡れているのが見えた。


 後ろからバスティアンが呆れたような声で男に言い放った。


「だから、黙って拘束だけしておけといったんだ……雑魚が」


 男は黙って頷き、ソフィアを拘束する腕の力は弛めなかった。


 それから距離を詰めずにオレに話しかけてきた。


「それにしてもタツロウ。殺傷力の高い『風烈弾』まで使えるとはな……。危ういところだった」


「て、テメェらが無茶苦茶やるからよぉ、オレも本気出したまでよ」


「だが、これでこちらにとっては正当防衛を主張しやすくなる。墓穴を掘っただけだったな」


「そうかい。ならついでにお前を仕留めてやらあ!」


 オレは魔力が溜まりきっていない指をヤツの前に出した。

 接近した状態ならこれでもダメージは与えられる。


 しかしヤツのほうが上手だった。


「やはりな、そう来るだろうと思っていた」


 ヤツの右拳がオレの指ごと右拳を打ち砕く。


「うぎゃあああ! オレの、指が変な向きに!」


 情けない叫び声を上げる程の激痛だった。


 それから地面をのたうち回るオレの身体を、バスティアンは無理矢理仰向けにしてドッカと腹の上からのしかかってきた。


 両腕はヤツの両膝の下に敷かれてしまい、体重が違いすぎて跳ね返すどころか全く動かせない。


「タツロウ。このまま、お前の気が狂うまで顔を左右から殴り続けてやる。少しは耐えろよ、すぐに終わっては楽しめんからな……!」


 恐ろしい言葉に思わず身が震えた。

 だけどこのままやられるわけにはいかねえんだ。

 何か、いい手はないのか……!

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