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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
演劇大会編

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113.裏切りとその代償

「クックック……よくやった。名前は……えーと」


「ドミニクです。一応はアンタの後輩ですよ、オスヴァルトさん」


 前から近づいてきたオスヴァルトが、オレたちを裏切ったドミニクのことを褒めている。


 コイツら一体どういう繋がりがあるんだ?


「ドミニク! テメェー、その手をソフィアたちから放せやコラァ!!」


「おーっと、動くんじゃねえぞ……コイツらが痛い目をみてもいいのか? タツロウさんよー!」


 ドミニクの野郎!


 不意打ちを受けて混乱しているソフィアとレオナそれぞれの片腕を背中側に捻り上げて、まるで盾にするようにしやがった。


「痛いっ! ドミニク、いい加減にしないとあたし、本気で怒るよ!」


「……ドミニク君……今なら、間に合いますから……手を、放すのです」


 ソフィアたちの悲鳴が聞こえて、オレは動きが取れなくなってしまった。


 そして後ろから近づいてきた3人の男の内、2人がソフィアたちの両腕を掴んでドミニクから彼女たちの拘束を引き継いだ。


 彼女たちは抵抗するも、片腕の関節を極められたままで思うように力が入らないようだ。


「痛いって! いい加減にしなさいよアンタたち!」


「……タツロウ君、ごめんなさい。脱出は、難しいです」


 そして男たちはゲスなセリフを吐きやがった。


「ウヒヒヒ……今回の案件は女が上玉揃いでヤル気出るわ〜。それでこんだけ密着できるなんて、たまにはこんな役得に預かってもバチ当たらんでしょ」


「ゲヘヘヘ、たまんねえなこれ。バスティアンさん、後で楽しませてもらってもいいんでしょ?」


 コイツら!

 ソフィアたちに欲望丸出しな感情を向けやがって、許さねえ!


「テメエら、今すぐその手を放せ! でないとブチのめすぞコラァ!!」


「あぁ〜!? 今なんつったよ?」


 オレと男たちは睨み合いを続ける。


 だがそれを切り裂くように、バスティアンと呼ばれているデブ男が重低音の声でオレと男たちに警告を発した。


「お前がタツロウだな。大人しくしとけや……でないと女たちがどうなるか。あとお前ら、余計なことを考えずに、指示があるまで黙って女を拘束しておけ」

 

 言っている内容とは裏腹に、落ち着いて抑揚の少ない話し方が却って怖さを感じさせる。


 それから間髪入れずにハンナ先輩とアンジェリカの悲鳴が聞こえてきた。


「止めて! 私たちを引き離さないで!」


「いやぁ〜、放して! 助けてタツロウくん!」


 もう一人の男が先輩を、ドミニクがアンジェリカを抱きかかえて2人を引き剥がしているのだ。


「テメェら! 2人に何しやがんだ、やめろ!」


「タツロウ、さっき言ったよな? 大人しくしとけって。次はないと思え」


 またバスティアンから警告された。


 くそっ。

 だからってこのまま手をこまねいていたら、アンジェリカたちの身が……。


 いや、焦っちゃだめだ。

 奴らのことを慎重に観察して、隙ができるのを待つんだ。


 まずはドミニク……なんで裏切ったのか。


 さっきからアンジェリカに何やら話しかけているが、そこにヒントがあるかもしれない。


 アンジェリカ、少しの間耐えてくれ。



「ぐすっ……タツロウくん……」


「アンジェリカさん、あの男に、タツロウに騙されちゃダメですよ」


「な、何が」


「アイツは、表では女子に優しいフリしてるけど、裏では危ないクスリを校内で売りさばいてる極悪人なんだ」


「ウ……ウソ」


「本当なんですって! 学園祭の時に校内で暴れた奴らの中にいたゲーツとカスパーって人ら、元々はタツロウとは仲間だったんですよ」


「……」


「でも去年仲間割れを起こして、ゲーツたちに全てを擦り付けて退学させておきながら、タツロウはのうのうと学校生活を送ってるんです」


「そんなの……信じられない」


「これは信頼できる人からの情報なんです。ねえ、バスティアンさん?」


 何言ってんだコイツ!


 全然事実に反することを、こんなチンピラどもを纏めてるような男から聞いて鵜呑みにするとか、どういう神経してんだよ!


「テメェドミニク! 嘘ばっか言ってんじゃねえよ!」


「嘘なもんか! バスティアンさんはなあ、実家が貧乏でカネに困ってた俺に、荷物を運ぶだけでそこらのバイトより儲かる案件を紹介してくれた親切なお人なんだ。その人が言うことに間違いなんかある筈ねえよ!」


 運ぶだけなのに割のいいバイト、だと?

 どう考えても怪しいもの……もしかしてアレを運ばされてんじゃねえのかコイツ?


「ドミニク! 運んだ荷物の中身は知ってんのか?」


「病気に効く薬とか栄養食品って聞いてるけど、それがどうしたってんだ」


「お前はバスティアンに騙されてる! 全部!」


 ここでバスティアンが話を遮ってきた。

 都合が悪くなってきたってところなんだろう。


「おいタツロウ……警告したはずだ、次はないって」


 くそっ、ソフィアたちをこれ以上危険に晒すわけにいかない。

 こうなったら……。


 だが意外にもオスヴァルトがバスティアンを止めに入った。


「まあまあ。これくらいは許してあげなよ」


「……オスヴァルトさんがそれでいいなら、こちらは一向に構わない」


「久しぶりだねぇ、アンジェリカ。元気だったかい?」


「いやぁ……こっちに来ないで」


「そんなつれないこと言わないでよぉ。僕たち、演劇部で一緒に頑張った仲じゃないか」


「……」


 アンジェリカの方へ、左手はズボンのポケットに手を突っ込んだまま近づいていくオスヴァルト。


 コイツの汚い手でアンジェリカに触れさせたくねえ。


 一か八かで攻撃を仕掛けて、その勢いというか半分破れかぶれで、ソフィアたちの拘束も強引に外させるか。


 それを実行する寸前で、ドミニクからオスヴァルトに問いかけがあった。


「あ、あの、オスヴァルトさん。アンタの目的は演劇部自体への復讐で、アンジェリカさんのことはおれに預けるって約束で、合ってますよね?」


「うーん、そうだねぇ。ところで話は変わるけど、ウチの家系は薬屋から財産を築いて貴族に成り上がったんだ」


「は、はあ」


「だからさ、今でも帝国内の薬の流通ルートに精通しているんだ……いろんなクスリのね」


「えっ?」


「まだわからないのかい、勘が鈍いねぇ。君が運んでいた商品こそ『危ないクスリ』だったんだよ!」


 話しながらドミニクの背後に回ったオスヴァルトは、左手をポケットから出すと、その手に握っている折りたたみナイフの刃を出した。


 そして一気に、ドミニクの脇腹へと刺したのだ!


「キャーーーッ!」


「グウッ! な、なんで」


「クックック。君はクスリの販売ルートのことでタツロウと揉めて刺殺された……そういう筋書きなんだよ」


 そう言い放ったオスヴァルトの左手には手袋がはめられていた。


「クックック。タツロウ、後でお前の指紋を、このナイフの柄にたっぷりとつけてやるよ〜!」

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