91. テトリ孤児院をでる
なんだか、すごい話になってきた。
アリオさんは明日、王城へ行くという。
ダルボさんが止めていた。
「アリオ。こういうことは、まず作戦が大切だ。それにおまえがこの革の袋を持っていったら、迷い人が来たことがバレてしまう。そうなれば他の当たり人たちにも影響がでるんだぞ。成功すればまだましだが、失敗したらワシらだけのことではすまなくなる。まずは最低でも、マプのところのスピノちゃんがポーションを飲んでからだ。ブロンはもうしょうがないが、せめてマプのところには王城に行くと先に伝えておかないと、お宝を隠すとか、いろいろ考える時間が必要だろう」
「そうか、そうだね。マプさんたちにも迷惑をかけてしまう……それに、ボクたちを紹介してくれたテトリにも……まずはやっぱり迷い人のパールちゃんが安全に自分の国へ帰って……それからだね。そうだよ……」
せつない声で最後は自分に言い聞かせているようだった。
「テトリ。おまえ、ブロンに店をもらったんだな。じゃあ、明るいあいだに一度孤児院へ帰って院長様に孤児院を出ることになったと伝えてこい。そして荷物をまとめたらすぐに出てくるんだ! 早いほうがいい。なにがあるか分からん。 院長様には、ここで雇ってもらえることになったとだけ言っておけ。いろいろ知ってしまうとおまえをかばって、ウソをつかなきゃならん。なにも言うなよ! 今日はここに泊まったらいいから、まずは今すぐ孤児院に帰って、そこを出るとだけ伝えて早く戻ってくるんだ」
タルボさんの忠告に、テトリはあわてて孤児院へ帰っていく。
わたしにはすぐ帰ってくるから、ぜったい待っていてくれと何度も言っていた。
そのあいだタルボさんの庭で金をとらせてもらえることになり、ウキウキ心弾ませて自分の小さなシャベルを腰のマジックバックからだし金を掘ろうとすると、ウルグベお母さんがすごい勢いで止めにかかる。
「パッ、パールちゃん! ちょっと待って!! そのシャベル、もしかして、てっ、鉄じゃないの?!」
あっ、うっかりしていた……
そうだ、鉄だ!
タルボさんが魔道具の細いシャベルを、あわてて持ってくる。
「パールちゃん。これと、交換してくれ!! これは小さくてもよく掘れるし、この中で保存もサラマンダーが五匹ぐらいならできる。時間は止まらないが、丈夫で便利だぞ!」
素直に交換しておく。
金を入れる袋も一緒にもらい、ふっとみると革?
「タルボさん、これはなんの革ですか?」
「あぁ、それは丈夫だぞ! 魔法袋で毎日洗っても、百年以上軽く持つ。小型のドラゴンの革だ」
「すごい! これはわたしの国ではきっとお宝ですよ!」
「おーっ、そうなのか! じゃあ、いまある革を全部持っていってくれ! ウルグベ頼む!」
「はいよっ!」
ウルグベお母さんは、鉄のシャベルを握りしめて、よい返事でお店の中へ入っていく。
わたしはもらったシャベルで、庭の砂(金)がなくならないように、楽しくとっていった。
タルボさんが庭の砂、全部持っていっても良いと言ってくれたので、遠慮なく楽しめる。
ウルグベお母さんが使い込んだ魔法袋を握りしめてやって来た。
「パールちゃん。この袋ごと持っていっておくれ! 中にはいろいろな革が入っていて、なにがどれだけ入っているのか、わたしもあんまり分かちゃいないけど何かの役には立つ量だと思うよ」
ありがたく、もらっておく。
そんなことをしていると、テトリが帰ってくる。
「テトリ、早かったね!」
「あぁ、別に孤児院にはたいして自分のモノもないし……もともとそろそろ孤児院を出ないといけない歳になってきていたから、院長様にタルボさんのところで働けることになったと言ったら、喜んで見送ってくれたよ。アッサリしたもんさ……」
「テトリ……」
それを聞いたウルグベお母さんがテトリを抱きしめて……
「テトリ。おまえ、うちの子になるかい?」
「「 えっ ?!」」
驚いていたのはわたしとテトリだけで、タルボさんとアリオさんはそんなに驚いていなかった。
魔法袋を買うために、テトリが働いていたときぐらいから、タルボさんが家族にテトリを養子にしようかと相談していたそうだ。
こんなことになって、お宝目当てみたいで言いづらくなったけど、アリオさんのツガイがお姫様だとわかったのなら、また話は別だという。
タルボさんの家族になったほうが、当たり人一番目のテトリを守ってあげられると説明する。
驚いた様子のテトリを見ると。
下を向いて、プルプル震えて……
ポトリっと 一粒、涙 をおとした……
そして……
「ありがとう……」




