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88. 浮かぶ魔道具

 みんなが揃ったのでまずは挨拶からとタルボさんが話しだす。


「よし、家族紹介だな。こっちが妻のウルグベ。そして息子のアリオだ」


「はじめまして、わたしがタルボの妻でウルグベだよ! タルボを……うちのを四番目の当たり人に選んでくれてありがとうね。感謝してるよ」


「ホントにっ! ボクはこの二人の息子でアリオ。ここで魔道具屋を任されている。よろしく」


「はじめまして、一番目のテトリから紹介されてきました。迷い人のパール、もうすぐ十歳です。タルボさんは四人目の当たり人になってくれました。次は五人目、アリオさんが当たり人になってくれますか?」


「えっ、えっ、ボ、ボクも当たり人にしてくれるんですか……ど、どうしよう……幸せすぎて、こわいよ……」


「何をグダグダ言ってるんだい。はやく、返事をするんだよ!」


「あぁ、そうだ、パールちゃん! よろしくお願いします! ボクを五人目に選んでくれてありがとう!」


「よかったです。こちらこそ、よろしくお願いします!」


「まぁーっ、今日はなんていう日だろうね。家族が二人も当たり人に選ばれるなんて……」


「怠けずに頑張って石を磨いていた甲斐があったよ……パールちゃん、なにか欲しいモノはあるかな?」


「えっ!? 欲しいモノ……ンーッ、時計?」


「おまえ、時計を持ってないのか? いままで時間はどうやって知っていたんだ?」


 テトリの言葉にみんなが、不思議そうな顔をしている……


「教会の鐘が決まった時間、三時間ごとに鳴るんだよ。それでだいたい、わかるかな?」


「えっ、夜中も? うるさくないのか?」


「ウーン、どうだろう? そういうもんだと思って生活していたら、そんなに気にならないよ。鐘が近くで鳴っているわけでもないし……それより、ひとりで冒険していると、鐘の音が聞こえてこないから、ちょっと不便なんだ」


「パールちゃん、いいモノがあるよ!」


 息子のアリオさんが、お店の棚から何か小さなモノを持ってきてくれた。

 

「指輪?」


「いまはそうだね、大きさは変えられる。スペシャルな腕輪と一緒だよ。そしてこれは、魔道具なんだ。正確な時間と方位をどこの国に行っても、付けている人に教えてくれる。 一時間後とか設定すると、それも知らせてくれるんだよ。 付けて登録してごらん」


 アリオさんに勧められて、小指につけてみる。

 まずは登録。

 指に付けたまま魔力を少し流すと、フワッと光って登録完了。


「時間を知りたいと、思って」

 

 いま何時かな? 


 オーッ! 空中に時間がでてきた!


「見えたかい? 空中に時間が浮かんでいるだろう? 暗くても大丈夫。いつでも自分だけは、もう時間に困らないよ。 方角も! 全部、願うだけだから簡単だろ?」


 これはいい! 

 これからは冒険もしやすくなる。


「パールちゃんはそんなに小さいのに、どうして冒険者なんてしているんだい?」


 ウルグベお母さんが聞いてきた。

 やっぱり気になるのかな? 

 またササッと、両親そしてマークと侯爵令嬢の出来事まで話す。


「たいへんだったね」


 ウルグベお母さんが、抱きしめてくれた。


 それからはみんなわたしが自分の国に帰って、ひとりで冒険しやすくなるモノを考えて渡してくれる。


「アレッ、その腕輪マプさんのかな? それは魔力を貯めておける、ボクが一年かけて作ったモノだよ。そうか、もう大丈夫なんだね……これがあるなら……ちょっと、それをかしてくれるかな。少し待ってて。母さん、あと頼むよ」


「はいよ、あいかわらずだね」


 腕輪を渡すと、それを持って奥へと走っていく。


 今度はタルボさんが、何か小さい箱を何個も持ってきた。


「パールちゃん。テトリから聞いたんだが、マプのところでテントをもらったんだって? それならこれが役に立つ」


 見せてくれたのはテントの四隅に置くと、その中の物が認識されにくくなるモノと、完全にわからなくなって、強いバリアが張れるものだった。

 そのときの状況によって、使いわけしたら良いと教えてくれる。

 あとウルグベお母さんが、サップリメントを数種類持たせてくれた。


「これは、非常用だよ。一日に人族のパールちゃんなら一粒で大丈夫だね! 普通でも百年持つから魔法袋に入れておけば一生待つよ。これを一箱ずつ入れておくからね、あとで見な」


 うわー、サップリメントだ!

 ちょっと、興味があるかも?


 テトリがこれで栄養はとれるぞっと、言っていた。 

 

 それからタルボさんが、ひとりで冒険者をしているのなら、移動はどうしているのか尋ねてくる。


「身体強化を使って、走っているけど……」


「おまえ、あの身体強化でいつも冒険しているのか?」

 

「そうだよ? アレが精いっぱいなんだけど……」


 話を聞いていたタルボさんが、おとなの顔ぐらいの板を持ってくると。


「テトリ。 このボードの乗り方を、パールちゃんに教えてあげてくれるか?」


「わかった。パールよく見ておけよっ!」


 テトリはその板を地面に置いて少し強く踏む。

 急に板が大きくなって、前の方から棒がたてに伸びてきた。

 そのあと横に少しだけ、持ち手部分がでてきたと思ったら、テトリが板の上に乗る。

 両手で、持ち手の部分を握り……


 浮かんだ……!?


「テ、テトリが、浮かんでいるんですけど……!!」


「当たり前だろ? そういう乗り物だからな」


「すごい!! 浮かぶ乗り物があるんだ! 馬もいらないね!」


「テトリ。続きは、庭でたのむよ」


 四人でタルボさんの庭に移動する。

 あーっ?! 金だ、金だらけ! 


「パール。おまえいま、金を拾いたいなぁ〜! なんて言うなよ……」


「わかってる……」


 まずはこの乗り物だよね。


 さあ、わたしの番。


 地面に板? ボード? を置いてもらい、上に乗って強く踏む。


 フンッ! 

 うわーっ! 大きくなった。


 それから、出てきた棒の先にある横棒を両手で握って、そこからは……?


「テトリ、どうやって浮かぶの?」


「その握っている棒に、少し自分の魔力を流して浮かびたいと願うのさ。パール、少しだぞ! 少し浮かびたいと願えよ! そうじゃないと、大変だぞ!」


「降り方も教えておいてよ! そうじゃないと、怖いんだけど……」


「あとは一緒だ。願うとおりに、動くからな! スピードはいまは一番遅くしてあるから、大丈夫だぞ」


「わかった、やってみる」


 まずは、魔力を少し……浮かべ! あっ、少し! わっ!! 

 急に浮かんで、ビックリしたー!!


「パ、パール! 少しって、言っただろ! 危なかったなぁ……」


「テトリ……あんた、ゆっくりって、教えなかっただろう。ホントに危ないねぇ。パールちゃん、ゆっくりだよ! それから座りたいと思ってごらん、椅子がでてくるよ」


「えっ、椅子がでるの?」


 ならもう一度地面に戻って、仕切りなおしだな。


 なんとか地面に無事着地して、今度は椅子を願う……

 なにっ? 

 普通に出てきた!

 テトリ……なぜ先に、教えない……


 ウルグベお母さんが若い子。

 とくに男の子は椅子に座らず、立って乗るのがいま流行っていると教えてくれる。


 テトリも座って乗らないようだった……


 もーーっ!?

 ちゃんと安全な方を教えてよ〜ぉ。


 テトリーッ! たのむよーっ!


 信じてるんだからねぇーーっ!!



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