86. 金が大量だ!
四代とはまた、すごいな。
「タルボさん。四代って、息子さんのアリオさんも入っているのか?」
「ああ、そこまで入れてだな」
なんでも、タルボさんのお祖父さんがタルボさんのお父さんが生まれた日に迷い人と出逢って、惜しくも六人目の当たり人になったところから始まったそうだ。
その迷い人から、朝に迷いの森からきたと聞き、それから毎日迷いの森へ朝、様子を見に行っていたらしい。
でも、運に恵まれなかった。
ウワサだけで、なかなかチャンスが巡ってこない。
待ちにまったウワサがまわってきた日は、ちょうど孫のタルボさんが生まれた日で、 タルボさんを見に朝から出ていて森へは行けなかったそうだ。
それからもチャンスを待っていたけど、とうとう出逢えず百年後、千歳で亡くなってしまう。
その想いをタルボさんのお父さんがついで、朝に迷いの森へ見に行くことが習慣になっていた。
やっとチャンスが巡ってきた日、こんどはアリオさんが生まれて、やっぱり迷い人には逢えなかったらしい。
それから、三百年。
次のチャンスを待っていたけど、逢えることなくタルボさんのお父さんも、千歳で亡くなってしまう。
そして、みんなの想いとともに百年。
タルボさん七百歳で、やっと当たり人になれたようだ……長い……
今日も朝には迷いの森へ行っていたそうだけど、会えないときには、どうしたって会えないんだよね……
だから、いつ会えても良いようにと、ずっと持っていたという、ちょっと汚れた魔法袋を渡してくれた。
「ワシの祖父さん、父さん、ワシとアリオが集めた石だ……受け取ってくれるか?」
魔法袋の中には、金、金、金!
「すごーーい!! 金が、大量だ!!」
「どうだ? 気に入ってくれたか? いろんな石を集めて、分けて入れてあるぞ」
「サ、サイコーです!! これは、魔石? えっ? これは、ダ、ダ、ダイヤー! この青いのは、なに? 赤い石は? キレイ!! うわーっ、緑色もある! ア、アレッ?! この石、磨いてある?」
ウォフォッホッ!
「そうだ、みんな磨いてあるぞ。祖父さんがそうして、おまえさんに会える日を楽しみしていたからな……ワシらもそうして、小石は洗い、石は磨いて待っていたんだよ……」
なんだか、ちょっとおもいけど……
わたしがもらって、いいのかな?
若いテトリは、わたしの気持ちがわかってくれたみたい。
ありがたくもらったら良いと、あと押ししてくれたので、ありがたくもらうことにした。
「テトリ、もう十分だよ! この金がこれだけあれば、わたしは一生ラクに暮らせる。最高だよ!」
「おまえ。今までで、一番テンション高いな……これ、石ころだぞ……」
「もーっ、金はお金だよ! そうだ、タルボさんわたしの国のお金いりますか? 高価な金貨と白金貨は、ないですけど」
「おぉーっ、見せてくれ! 金貨に白金貨は、こっちではテトリのいうように石ころだから別になくてもいい」
たしかに……
まずは、一枚ずつ。
鉄貨。
銅貨。
銀貨。
大銀貨。
テーブルの上に出して、タルボさんに見せる。
んっ? タルボさん?
少し手が震えているの?
テトリもわたしの持っているお金に興味があるのか、腰を浮かせて覗き込んでいた。
「おまえ、パ、パール!! これ、銀か? それに……タルボさん、この赤ぽい茶色のこれなんだ? そのとなりのも……オレは、知らないぞ?」
少し震えていたタルボさんは、テトリの言葉でハッと我に返り話しだす。
「パールちゃん? もしかして、これは銀貨かな? それから、こ、これは銅貨? そしてこ、こ、これは鉄、鉄貨なのかな?」
「うん、そうだけど……記念に、いりますか?」
「いる! いるぞ! ぜったいにいる! すごいぞ!」
んーっ、なにがそんなにすごいのかな?
「パールちゃん。ワシらのところでは銀は貴重で銅は、もっと貴重。鉄は、それよりも……もっと貴重なんじゃよ!」
「なにっ?! これが、銅と鉄!? 初めてみたぞ! 銀は知っていたけど……パール。おまえ、すごいモンだすなっ! おどろいたぞ……」
なんと! 鉄が高価なのか……
どうしよう……伝える?
タルボさん、大丈夫かな……
「あの……そのテーブルの上にある剣とナイフだけど……鉄なんですけど……」
「「 えっ! 鉄 !!」」
それからのタルボさんが、すごかった……
ふぅーっと言って、ソファにもたれかかり、しばらく目をつぶっていたかと思うと、スクッと立ちお店の奥へ駆け出す。
テトリが、だんだん慣れてきたのか。
「また、飲めるぞ。黙って飲めよ……」
なにを言っているのかと思ったら、タルボさんが三本の飲み物を持ってきた。
あーーっ、あれっ!
「パールちゃん、テトリ! これは、ワシのとっておきだぞ! さぁ、飲んで! 生気を養って、それから鉄の剣をみるぞ!! ホレ、グイッと飲んでくれ!!」
テトリはわたしに、またニターっと笑って飲んでいる。
わたしも、ニターっと笑いかえしておいた。
やっぱり、あのブロンさんとマプさんのところでもでた、爽やかな……ホントに飲みやすくっておいしいモノだけど……
こんなに飲んで、大丈夫なのか?
タルボさんは飲んだあとのモノを三本、サッと自分の魔法袋に片付けると……
一度軽く深呼吸して、ベルトから剣をはずす。
それを持ち上げ、鞘から抜くと震えていた。
「パール。おまえこれ、さっ鞘も、もしかして、てっ鉄なのか?」
「そうだと、思うけど……もしかしたら、なにか混ざっているのかも? わたしでは、わかんない?」
「これは、すごい! パールちゃん。これを全部ワシがもらって、いいのか?」
「どうぞ! これは、タルボさんの分ですから」
「よかったな! タルボさん! 千六百年待ったかいがあったな! それ、採取用のナイフも鉄だろう? ホント、すごいぞ! オレも触っていいか?」
「もう、タルボさんのモノだから、タルボさんに聞いてね?」
タルボさんのお許しをもらい、テトリも鉄を堪能している。
それから慌ただしくタルボさんの息子さんのお店、魔道具屋さんへ行くことになった。
そこで、いろいろ渡さないと、ここでは無理だと言いだして剣を魔法袋に入れ、お金もしまうとサッとわたしを抱き上げる。
たしかタルボさんは、七百歳。
わたしを抱っこは、ダメだろう?
「タルボさん、わたし重たくないですか? 腰とか大丈夫かな? 行きと同じテトリにおんぶしてもらいましょうか?」
「は、は、はっ! 大丈夫だぞ! 赤ちゃんのパールちゃんを抱くくらい、誰でもできるわっ!」
テトリを見てもうなずいているし……
えっ?
わたしって、ホントに赤ちゃん扱いなの?!
もう、黙って抱っこされておこう……
タルボさんの息子さんのお店で最後。
わたしの旅も、終わりに近づいてきた……
いまのうちに、この金色の景色を心にしまって、チェリーにあとで教えてあげないと……
「パール、着いたぞ! ボーッと、してるなよ! 魔道具屋は楽しいぞ。いっぱい、もらおうなっ!」
そうだ! 魔道具屋!
どんな魔道具があるのか、すごく楽しみ……
テトリが一番目の当たり人で、ホントよかったよ!
ケップラー王国は、楽しいーーっ!!




