73. テトリの魔法袋
ブロンさんは『もしも話』のときから自分は迷い人の全身を剥がして店の一番高級なモノとすべて交換すると言っていたそうだ。
「こわいなぁ〜……」
これは絶対、剥がされる……
「大丈夫! こわいのは顔だけで、心が女性だから優しい人だぞ。 孤児院のオレにもよくしてくれるし、基本紹介するみんな優しい人たちばかりだから、パールを傷つけることは絶対にないから安心していいぞ」
話していたテトリは、急に自分の腰にぶら下げている巾着袋をひっくり返し、木の影にゴミを捨てだした。
そう、ホントにゴミ……でも、袋とその量が合わない……?
「ろくなもんは入ってないけど、この巾着袋は三番目に連れていく店のタルボじいさんに、なんとかひと月頼み込んで毎日働かせてもらって、やっと安くわけてもらった大切な袋なんだ。オレの宝物だぜ、これをやるよ! この中にブロンさんへ渡すモノ以外は隠そう。無理に奪って交換はできないし、それがいい!」
「ダメだよ! テトリの大切なモノなんでしょう?」
「そうだけど、パールがもっといいモノくれるだろう? それで、これよりいい袋を買うよ!」
は、は、はっ、なっ!
「……うっ、うん、わかった。ありがとう」
まず注意されたのは、持っているわたしのモノは見せたら全部なくなると思ったほうが良いこと。
だから絶対とられたくないモノ。
自分の国に持って帰りたいモノは、この巾着袋に先に入れておくように言われる。
うーーん。
縦四十センチ、横三十センチ、採取用中袋ぐらいの巾着袋になにが入る?
アッ、ギルドカード!
「どうした? とられたくないモノは無いのか?」
「袋の中に入るモノだから、なにがあるか考えてるの。ギルドカードは決まっているけど、あとお金はたいして持ってきてないしね」
「なにいってんだよ! 一番素朴で時間も経過する劣化版のサラマンダーが一匹分だけど、れっきとした魔法袋マジックバックだぞ! パールが持っているもんぐらい、全部入るに決まってるだろー!」
「マ、マジックバックーー!! なにそれ!」
「えっ、知らないのか?」
教えてもらったマジックバック、魔法袋は口を開けて望むと物を入れたり出したりできるモノらしい。
テトリのくれた巾着袋のマジックバックは一番安い誰でも使える袋だから、マジックバックと呼ばれるよりは魔法袋とよばれる方が多いようだ。
「高価なモノになると登録した人しか使えない、サラマンダーが三匹分とか五匹分。もっとすごい無限もあるし、時間だって袋の中の物がゆっくり経過したり、止まったりするんだぞ! ホントはそういうのをマジックバックっていうんだ」
それはすごいなぁ……
しかしなぜテトリは容量をサラマンダーであらわすのかな?
サラマンダーがどれくらいの大きさなのか?
気になるところが多すぎてこまるよ。
まぁ、わたしからしたら、魔法袋と呼ばれてようがマジックバックだろうが驚きは変わらない、すごいモノをもらった。
試しに自分の背負っていた大きなカバンを、どうみても入りそうにない魔法袋の口に近づけて、入れっと願うと……
「消えた……すごい……」
「あたりまえだろ? マジックバックだぞ」
テトリは呆れていたけど、わたしは感動だよ!
魔法袋の中に入れると、なぜか頭の中にそれが入っていると認識できる……不思議?
しばらく背負っていたカバンを、出したり入れたりして楽しんだ。
「もう、いいか? 気持ちは、わかる……オレもはじめはソレをやったしな…… 」
気持ちがわかる優しいテトリは、わたしの気がすむまで待ってくれていたみたいだ……
気を取りなおして、大半は魔法袋に入れていく。
この魔法袋は誰でも使えて中身を見られるモノだから、出来るだけはやく上等なマジックバックをもらって自分を登録したら、この魔法袋はその中に入れて隠すようテトリにアドバイスしてもらう。
この魔法袋だと、他のマジックバックの中に入れられるそうだ。
便利だぞっと、テトリが自慢する。
ブロンさんは悪い人ではないけれど、お金がからむし、大きいから力も強い。
もし巾着袋を取り合いになったらぜったい負けると言っていた。
『もしも話』のときブロンさんは、お金ができたら故郷に帰って親のもとでのんびり田舎暮らしがしたいと話していたそうだ。
田舎なら、薬草が良いかも?
虫よけがあったら便利だもんね!
ブロンさんには、服と薬草で決まりかな?
その前に一番の当たり人、テトリになにが欲しいか聞く。
大切な魔法袋ももらったし、コレ大切!
「オレか? オレは迷い人を見つけたことで職にもつけるし、そうだな新しい魔法袋が買えるぐらいの、できるだけ目立たない安めのモノを数個欲しいかな」
「安め? 目立たないモノを数個?」
テトリが言うにはこれからいく先で、わたしはいろいろなモノをもらうことになるそうだ。
テトリからするとそれは全部すごく高価なモノで、その対価がわたしの持ち物になっている。
なにも渡すモノがないテトリがそんな人たちより高価なモノをもらってしまうと、いらない反感を買うかもしれない。
まだ子どもで孤児院の子だとわかると、なにかとめんどうだから、目立つモノは全部おとなに渡してしまって自分はいらないそうだ。
なるほど……
どこの世界も、子どもはたいへん……
「それなら、何枚もある採取用の布と革の一番小さいサイズの袋を全部で七枚あるけどどう?」
「そんなに、くれるのか? ホントに、いいのか?」
カバンから出して全部渡してあげる。
「こんな高価なモノが、七枚も……」
テトリが感動している横で、わたしも布の小袋に詰めた金を覗き込んでよろこんでいた。
「わっ……パール。その高価で貴重な袋に石なんか入れるなよ! かしてみろ!」
あっという間に奪われて、置いていた魔法袋の口の中に金だけじゃらじゃら入れてしまった。
「これで、もう一枚増えた!」
えーっ!
出すときどうするのか聞くと、袋の口を開けてあのかたまりを頭に浮かべたら全部だせるし、なんなら一粒でも願えば出せるそうだ。
だからテトリが持っていたとき魔法袋がゴミだらけだったのか……
なるほどね!
納得して、金が入っていた布の小袋も渡す。
小袋が一枚で、小さな家が買えるという。
テトリは孤児院の家を買って孤児院の家賃だけでもなくしたいと言っていた。
それ以上はやり過ぎになるから、そこまでだけどっと話してくれる。
わたしと同じ歳ぐらいの子どもなのに、しっかりしているよね。
もしわたしに『前世の記憶』がなかったら、こんなにしっかりはしていないと思う……
だから思わず……
「わたしと同じぐらいの子どもなのに、しっかりしているね!」
「オレか? そらぁまだ、おとなと比べたら小さいけど、 百十歳になったからな! パールはオレよりも下だよなぁ……んーっ、九十歳ぐらいか?」
「百十歳!? ナニーーッ!! 九十〜ぅ??」




