71. 金だっ!! わたしは迷い人?
うーーっ、まぶしい!!
手を自分の顔の前に持っていって、思わず目をつぶってしまう。
ダメだ! 目を開けなきゃ!
あわててなんとか目を開けると、もう地面の上に立っていてまぶしくもなかった……
あれっ?
あたりはまだ霧に包まれているし、あのトケイソウも見当たらない。
誰もいない……チェリーも返事がないよ。
そんな中、一ヶ所だけフワッと見通しのよさそうな場所を見つけた。
思わず霧が薄れているその場所へ走っていく。
走りながらも、チェリー! チェリー! と呼んでみたけど返事は戻ってこない。
チェリーと繋がらないよ……どうしよう……
身体強化はできるみたいだから、はじめから倍にしておいて、バリアも薄くしかまだかけられないけど自分の中で一番強いバリアを意識してかけておく。
霧が晴れているところまで、あと少しだ!
がんばれ、いける!
この先は明るい!!
一歩の違いで、視野が変わった?
助かったぞ!
あれ? でも、なんで……
こんなに違うの?
身体強化で走っていたからなのか? すぐ止まったつもりでも二十メートルは進んでいた。
後ろを振り向くと、林の手前に三、四メートル四方の霧状のモヤのようなモノが地面から少し浮いて白く光って見えている。
わたしは、あの白いモヤのような中にいたの!?
みるみるうちに小さくなって、消えていった……
うわーっ、危なかったなあ!
これは、ギリギリセーフ?
「チェリー、危なかったねー! 大丈夫?」
ダメだ。
やっぱり返事がない、ハァーッ……
いまはあきらめて安全確保のため、林の霧状のモノがあった場所から走ってもう少し離れておく。
しばらく走ると、人の手が入っているような整備された道に出てきた。
ここら辺で大丈夫かな?
振り向くと林も向こうの方に見えるし……
今日はもう、このまま帰ろう。
いつの間にかダンジョンを出てしまったのか?
来たときとは違う、別の出入り口があったのかな?
見たことのない周りの景色に、なんだか誰か人がいるところまで戻らないと安心できないよ。
まだ早朝だからか、人が見当たらない……
林と反対の整備されていそうな道を選んで進んでいく。
しばらく歩いていると、なんだか違和感があることに気がついた。
なにか、へん? なんだろう?
周りには、木と道だけなんだけど……
木じゃないし……
道だ……道の色だ!
道の色がいつもより黄色?
いや、ちょっと違う……光っている?!
陽のかげんでキラキラとまではいかないけど、ところどころで、キラッ、キラッと黄色く光っていた。
んっ?
よく見ると、自分の足もとでも光っている。
これは……
しゃがんで光った小石を拾ってみると……
なんだかちょっと重たい?
うわーっ!? コレ金だーーっ!!
これは、ぜったい、ぜったい金だよ!
じゃ、なにっ!? っと、いうことは……
うそ……まさかの……わたしは……
迷い人になったのか……
えーーっ!?
どうしよう……そうだ! 拾わなきゃ!
金、金だよ!
あわてて肩かけのカバンから布の袋小を出して、金の小石をできるだけ粒の大きいものを選んで入れていく。
知らず知らずのうちに、声が漏れるぐらい笑ってしまう。
ふ、ふ、ふっ……
あ、は、はぁ、はぁっ!
すごい、すごい、全部……金だ!!
布の袋小がすぐいっぱいになってしまう。
つぎっ! 中の袋!
よかったよ! 今日は袋が、いっぱいある。
みんなにあげる分も取らないと……そうだ!
もっと大きいのを、キノコの女王のタマゴぐらいの大きさがいい!
人にお土産で、あげやすいよね!
もう、しゃがんで今の状況もどうでもよくなり、キョロキョロ拾い集めていた。
たのしーい!!
「おい。なあ、おい! おまえさぁ、もしかして〜ぇ、迷い人か?」
んっ、誰かが声をかけていたようで……
金を拾うのに夢中で気づかなかった。
「おい、聞こえないのか?!」
声のする方に顔をむける……
うっ……うそだろ?!
顔が少し人と違う……
ひゃー?!
これは、爬虫類系の顔?
わたしと同じぐらいの背格好の男の子だけど、少し鼻と口らへんが膨れている……
子どもだから、かわいいし怖くはないけど……
あーっ!?
やっぱり、金は勝手に取ってはいけなかった?
「なに? この金取っちゃダメなの?」
「いや、いや、ぜんぜん大丈夫だけど……おまえ、やっぱり迷い人だろ?」
よかった、でもちょっと怖い……どうしよう……子どもだし、強気でいってみる?
それとも素直に迷い人みたいですって言うか……
聞いてみる……に一票。
「迷い人なら、どうなるの……捕まえる?」
「ちがう! 話を聞いて優しく保護するだけだ!」
「保護? 保護と捕まえるは、一緒でしょ!」
怖くなって、一歩下がる。
身体強化で逃げようか……追いつかれるかな?
「おまえ、いま逃げようかと思っていたんじゃないか? オレは怖くないぞ! オレから逃げて他のヤツに捕まったほうが大変な目にあうと思うぞ。まずは、安全なオレの話を聞け!」
たしかに……捕まるにしても、子どものほうがましだよね。
安全なって、言ってるし……安全なのか?
なら、話くらいは聞いてみようかな。
うなずいてみた。
「オレの名前はテトリだ! まず、おまえは迷い人で間違いないよな?」
そこ、一番に確認するんだ……
言葉も通じているし、迷い人には親切にするってたしかみんな言ってたよね。
この国でもそうなのかな?
悪い子でもなさそうだし……
信じてみる?
なら、もう少し金を拾わないと……
その場でしゃがんで、拾いながら聞くことにした。
お土産大事!
「たぶん? そうだと思うけど?」
「おい、なにしゃがんで小石を拾ってんだよ! そんなちっこい小石拾ってないでオレの話をちゃんと聞けよ!」
「大丈夫! 話は聞いてるから、いまはこの金を拾わないといけないのよ!」
「そんなところで小石を拾ってたら目立つだろう! あっちへ行こう。ほら、立って行くぞ!」
急に腕をつかまれて、一瞬パチッとなる。
やばい! バリアだ!
あわてて、男の子を確認する。
よかった! 男の子は平気そうだ……
いま、バリアが弾けた?
そのまま道の端というか、木の木陰まで引っ張られて連れていかれる。
ちょっと痛い……身体強化をかけてなかったら腕を痛めていたかも……
「痛い、痛いよ! 腕を離して!」
「えっ、ごめん! そんなに力は入れてないつもりだったけど、ウワサ通り迷い人はホントにモロいんだな……腕、大丈夫か?」
「うん、なんとか。身体強化をかけてたからギリギリ大丈夫」
「あれでっ!? ごめん! これからは気をつけるよ。でもあそこでしゃがんでたら、自分は迷い人だと言ってるようなもんだぞ!」
そうなの?
じゃあ、ここならいいのか?
アッ!?
木の横にキノコの女王のタマゴほどの金を発見!
しゃがんで拾っておく。
「……その、小石拾うの止めないか? これ、やるからさぁ〜」
男の子が自分の腰にぶら下げている巾着袋から、なにかを取りだす。
よこしてきたのは、わたしのこぶしほどの大きさでピカピカ光っている……
おっきーい! 金ーだあ!! ピッカピカー!!




