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06. ベッドで考える

 侯爵令嬢の鶴の一声でわたしは冒険者になることが決定した。


 リエール領でも女の子が六歳で冒険者になるのは珍しく、まわりの人たちからも心配される。


 せめて体が大きく成長するようにと料理長のトムさんが一歳の子どもでも食べられる料理をたくさん作ってくれた。

 なんせ辺境伯様と侯爵令嬢の後押しがある。

 誰も文句は言わない。



 三歳頃になると子どもでもできるお手伝いをさせてもらい、軽く役に立つアピールをお屋敷の人たちにしながら雇われ続けていくのが通常なのだが……


 辺境伯様としては、わたしが冒険者になるための後押しを侯爵家と辺境伯家の二家で約束したことになる。

 約束してしまった以上わたしに冒険者の助けになることはさせれても、お屋敷のお手伝いなどは侯爵家の手前させてもらえなかった。

 なのでちょっと変わった扱いの子どものまま辺境伯家で暮らすことになったようだ。


『前世の記憶』が戻るまでは、お屋敷の中をあちこち回ってわたしの事情を知っている侍女さんや料理長たちにかまってもらい時間を潰していたのだけれど……今なら邪魔だったと分かる。


 辺境伯の奥様だけは事情を知っていても、お屋敷に小さな子どもの平民がうろちょろしているのを嫌っていたので会わないように注意していた。


 お屋敷の中で一番小さな子どもがわたしになるから嫌がられてもしょうがない。


 次に小さな子どもが辺境伯様の一人息子。

 五歳のルート様だ。


 その次から九歳、十歳、十二歳とルート様の付き人や調理見習いなど、女の子は侍女見習いかな?

 案外いて、次のルート様の世代に備えていた。


 あとは、もう少ししたら家令セバスチャンさんの孫、十五歳のカルロスさんが他家での修行を終えて帰って来る。

 セバスチャンさんが顔にクシャリとシワを作って目尻を下げ話していたのを思い出す。


 ウーン……

 わたしはこれから何をするべきか?

 ベッドで短い腕を組んで考えこむ。


 『前世の記憶』により、ある程度大人の思考が加わったことで、今までのようなことはもう無理がある。


 魔法…… 魔法もぜひ使ってみたい。


 それには先に字を完璧に覚えて、文字を書けるようにしないと…… 魔法書?

 あるのかな?

 字が読めるようになったらお屋敷の図書室にでもこもって、この世界のことを調べようか。


 六歳にも備えないと。

 冒険者見習いになるまで、あと三年しかない。


『前世の記憶』大人の思考? が加わったら、こんなに何もできない状態で冒険者になるなんて死にに行くようなものだと焦ってしまう。


 とりあえずは字だな。

 どうにかしないと。

 前世とは文字が違う…… でも数字は同じ?

 伯父さんに確認して文字を教えてもらおう。


 その次に魔法。

 魔法はどうやって覚えるのか、これも伯父さんに聞いてみよう。

 今までの生活をすべて無視した、これからの新しいスケジュール。


 まずはベッドから出て伯父さんと相談しなくてはいけない。


 急いた気持ちを整える。

 伯父さんが来てくれるまでの時間、頭を働かせ考えをまとめていく。



「やっと起きたのか」


 ドアをそっと開け伯父さんが顔をのぞかせた。


「何があったんだ? 裏庭で倒れていたと庭師のカイルがおまえを抱いて連れて帰って来たときは驚いたぞ。それから丸一日起きないし…… どこにも怪我はなさそうだったが、寝かせることしかできないから…… 心配で……からだは、大丈夫か?」


「伯父しゃん」


 しまった! かんだ、こんな大切な時に!


「うん、どうした? マークと呼べばいいだろう?」


 わたしが幼く、まだ言葉もはっきり伝えられないことがあったので、伯父さんは自分のことを簡単に名前のマークで呼ぶように言ってくれていた。


「フゥー。 マークあのね、話したいことがあるの聞いてくれるかな」


 これからのことも考えて伯父さんには『前世の記憶』も含め、すべてを話すことにした。


 あぁ 緊張する……

 

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