55. 宿屋の生活
第二章 開始いたします。
これからもよろしくお願いします!
んーっ、いい天気! 気持ちいいー!
「チェリー、おはよう! 今日も頑張ろうね!」
「はい。おはようございます」
宿屋に来て、わたしはすぐ七歳になった。
それからあっという間に、二年と十ヶ月。
なんとか宿屋での生活にもなれた。
あと二ヶ月で十歳になり、正式な冒険者の登録ができるようになる。
今まで大変だったけど、もう少しで十歳だと思うと、やり残したことをやっておかないと……
マークたちがあと二ヶ月ほどで王都アストへやってくる。
アストに保護者が三人もきたら、絶対一人で自由に森の中を冒険させてはもらえない。
とくに野宿は無理だろう。
今までも日帰りでしか宿屋のオヤジさんとおかみさんが許してくれなかった。
半分あきらめていたけど、森でいい感じの木のウロを発見する。
だいぶ上の方にウロがあるから、ある程度の獣からも守られて、これなら安全だ。
おかみさんたちにも納得してもらうため、説明も頑張ったし、この前はそのウロを自分だけの隠れ家にしようと考え、ドア? フタ? を似たような木で簡単に作って設置し、虫のキライな薬草もウロの中に入れ燻しておいたから、準備万端! あとは実行するだけ。
今日は朝食を食べたあと、おかみさんたちへ宣言すると決めている。
「おはようございます!」
「あっ、パールおはよう! 空いている席で食べちゃって! お昼のパンも用意してあるからね」
「ありがとうございます!」
辺境伯様が十歳までにかかる三年間の部屋代と朝食と夕食の二食分。
まとめて宿屋にお金を払ってくれている。
宿屋のオヤジさんはキッチリ全額代金をいただいたそうだ。
あるところからは遠慮なくもらうと満面の笑顔で言っていた。
だから他の人たちと同じように食事をわたしにも出してくれたんだけど、まだ七歳やそこらではぜんぜん食べきれない。
オヤジさんはお金をもらっているからと、食べる量の少ないわたしに簡単なお昼のお弁当を特別に用意してくれる。
これで宿屋もお金を辺境伯様から心おきなくもらえるとオヤジさんは右手の親指を立て笑って話してくれた。
わたしはこれがとてもありがたい。
このお弁当を毎日持って、アストの森へ入っている。
これでわたしは三食、何の心配もなく食べられるようになった。
薬草を森で採ってギルドに持っていったら、お金は大半ギルドに預け、貯まるいっぽうだ。
薬草もわたしの採ってくるものは、高値満額で買い取ってもらっている。
目利きもだけど、保存方法がバッチリだからね。
これはマークとカイルさんに感謝だな。
ギルドのお姉さんにも始めのうちは、すごく感心されほめられた。
もう今では薬草専門のハンターだと認識されている。
今までは日帰りだからあまり遠くへは行ってないことになっているけど、ホントは自分だけの穴場をいくつか見つけ、身体強化であんがい森の奥まで入って採取していた。
このアストの森は森の奥からダンジョンへとつながっていて、いまはまだほんの少し浅いところ、入り口ぐらいまでしかダンジョンには入れていない。
でもこれからは泊まりで、もう少しダンジョンの奥まで薬草を探しに行ってみたいと思っている。
よし、宣言するぞ!
「おかみさん、今日は帰ってこれません。この前話していた安全な木のウロに泊まります。三日以内に帰ってくるので、留守よろしくお願いします」
「はぁーっ、やっぱり行くのかい? もうどうしようもないね。じゃあ、契約の内容を少し変えるよ。まず今までは、パールに野宿をさせない。止めるように決められていたから、三日帰ってこなければ、リエール領の方に連絡する契約だったけど。パールにこういう、わたしたちではもうどうしようもないときがきたら、三日を十日に変更して、もしものときはリエール領に知らせることになっているんだよ。本当は一ヶ月なんだけど、まだ仮冒険者の年齢だからね。これも特別だよ。それでも一ヶ月、音沙汰がない場合はここの部屋を片付けるよ。厳しいようだけど、いいね。気をつけるんだよ」
「……はい、わかりました。ありがとうございます」
「どうして、こう、冒険をする人たちは無茶をしたがるのかね?」
「おい、もうそのへんにしておけ。パールも冒険者なんだよ! もうすぐ十歳だ。安全な木のウロも見つけてきたし、この前フタもこしらえていただろ? オレたちは、ここまでだ。わきまえろよ」
オヤジさんが厨房から顔を出して、おかみさんをたしなめてくれた。
「わかっているよ!」
んっ、いまなんて? なんて、言ったのかな?
おかみさんサラッと、とんでもないこと言いませんでしたか?
契約? 野宿をさせない? 止める、決まり?!
くーーっ、マーク!!
なんてこったー!!
そんなもんのせいで、おかみさんたちはわたしの野宿を止めていたのか〜。
マークにしてやられた……
いやっ、ちがう!?
こんな細かいことに気がつくのは……
きっと……
シーナだっ!!
あーーっ、シーナの首を少し横にして、笑っている顔が……目に浮かぶーーっ!!
まいった!! さすがだよ! シーナ!!




