54. いってきます!
シーナの白いワンピースに白ユリの花冠がすごく似合っている。
横のマークも白いシャツに黒のズボン。
白ユリのブートニアと、お似合いの二人だった。
おまけなのが、わたしとトムさん。
新郎新婦と同じ装いで、ちょっと恥ずかしい……
トムさんはノリノリで、これはいい! っとよろこんでいたけど……
シーナがサプライズプレゼント、衣装を頑張って四人分作ってくれていた。
それにわたしたちが作った花冠とブートニアが加わり、四人のペア度がアップしたというか……なんというか……
それさえ目をつぶれば、今日はよいパーティーだ!
厨房の人たちからも、おめでとう! をたくさん言ってもらって、マークとシーナもニコニコ喜んで挨拶している。
トムさんはちょっと涙目で、うれしそうだけどやっぱりさみしいのかな?
わたしは一先ずこれでマークのことは安心だ。
みんなはわたしにも、気をつけて王都に行くんだぞっ! と声をかけてくれる。
「「「冒険者頑張れよ! 」」」
「頑張って、冒険者やります! 」
何度もそう言っておいた。
トムさんはわたしのために、貴族様たちのことを少し愚痴って泣いてくれている……
トムさんの涙でみんなもなんだかしんみりして、困ったなと思ったらシーナが声をかけてきた。
「パール! 冒険者になって、迷い人になるのよ! そしてわたしにすぐ教えて! 一番にパールのところへ行くから!」
ぐっふ、ふ、ふっ
「そしてわたしは、当たり人になる!」
「「「おー、おれも、当たり人になるぞ!」」」
なに、それ? みんな当たり人になると言ったあと、片手を開いて見せてくる?
なに、なんなの? 迷い人に、当たり人?
わたしの様子に涙目のトムさんが、ふっと笑って眉を八の字にして、こんなことも知らない子どもが……っと嘆きながら教えてくれた。
「迷い人はな、昔から伝わっている話でな。王都にいるやつなら誰でも知っているし、冒険者が王都の森のダンジョンにいくとき、挨拶代わりに気軽にかける言葉と合図なんだ『迷い人になって、自分を当たり人にしてくれよ』ってな」
「あれ、パールに話してなかったかー?」
マークが頭を掻きながら、そうだったかなぁ?
は、は、は…… と笑ってごまかしている。
「も〜 しょうがないわね。この言葉には、気をつけて良いものをたくさん持って無事に冒険から帰ってきてね、って意味とホントに迷い人になったらその幸せを自分にも分けてね、って意味が含まれているのよ」
なぜかシーナが得意げに教えてくれた。
「うーん……その迷い人っていうのは、迷子になった人のこと?」
あーっ、そこからか……って顔をトムさんがする。
そんなトムさんとわたしのやりとりを、お弟子さんのトーマスさんが見かねて答えてくれた。
トーマスさんはわたしと同じように両親が冒険者で亡くなり、宿屋との契約によっておばあちゃんのいるこの領に送られてきた人だ。
そのあと、おばあちゃんがもう孫が冒険者にならないよう、知り合いのトムさんにトーマスさんを預けて料理人にしてもらったんだって。
おばあちゃんの気持ち、わかるなぁ〜。
わたしと似ている境遇だったのと、十歳上なのもあって可愛いがってもらっていた。
「パール。 迷い人というのは王都の森のダンジョンの中で言葉のとおり迷ってしまい、今いた場所から急に別の場所に行ってしまう人のことだよ」
「どこかに飛ばされるってこと?」
「そうなるね。ただそこは宝の山の国らしくて、あっちこっちに金銀宝石が石ころのように転がっているようなんだよ。そんな財宝や見たことのない素晴らしい魔道具などを、向こうの国の人と今自分が持っている物すべてのものと交換して、宝を手に入れて帰ってきた人が百年か二百年毎か知らないけどホントにいるみたいでね」
「それって、すごいことなんじゃないの?」
「そうだね。でもそのあとが大変で、王家に知られて王宮に囲われすべての宝を取り上げられて、自由まで奪われ不幸になった人がいるんだよ。それ以来迷い人は隣の国に逃げたとか、捕まったとかいろいろ王家と攻防戦があるらしい」
「えーっ! それは、なんだか……すごいね……」
「今でも迷い人をいち早く見つけるために監視員がいるとか……それを平民は言い伝えで知っているから、迷い人になって戻ってきたら急いでこの国から逃げるんだ。そのときに助けてもらったはじめの五人には、感謝して持って帰ってきた魔道具や宝でその人たちを逆に助けて幸せにしてくれるらしいと伝えられているんだよ。だから、迷い人を見つけたら一番に親切にすること! 今ある全財産使って助けても、それ以上の良いことがあるって言われているんだ。五人までだけどな!」
トーマスさんが手を開いて、五本の指を見せて合図する。
なるほどね。
トムさんも王都に伝わっている詞でこんなのがあると語りだした。
「霞む森迷う子羊光追う 優しさに未練たちきり財をなす 当たり人片手の中に入り込め 親切心が幸を生む」
「あっ それ、聞いたことある! あやかりてー!」
「「おれもー!」」
一発逆転、みんな好きね〜。
「迷い人になれよ!」
そう言って送られたみんなから、少しずつ集めたお金を餞別にいただいた。
優しい人たち……
わたしは頑張って作った、平べったい円の中心より少し上が、また円でくり抜かれた形の香木のネックレスをみんなに配った。
「おっ、よい香りがするぞ!」
「クローゼットの中に入れておこうかしら? 服がいい匂いになるかも?」
みんなに喜んでもらえたようでホッとした。
マークとシーナは結婚パーティーはしたけれど、わたしが王都に行くまでは今のままで暮らすようで、しばらくは別居婚?
そうマークに伝えたら、思いっきり笑っていた。
なぜだ?
それからは時間の許す限りマークと昼間もできるだけ一緒にいて、夜はトムさんとシーナが加わり四人で楽しく過ごしている。
その頃には新しい馬番さんもやってきて、それがなんとカイルさんの推薦で親族の人らしい。
香木の事業も手伝ってもらえるので、辺境伯様のお許しがでたみたいだ。
そんな、なんでもない日々を過ごしていると、王都から商会の馬車がきたと連絡が入った。
とうとう、わたしの王都に行くときがやってきた!
この商会の帰りの馬車に乗せてもらってわたしは王都に旅立つ。
夜、馬番小屋にはトムさんにシーナそれからカイルさんも来てくれて最後のお別れをする。
丸く削った一粒の香木のネックレスをみんなに渡した。
「丸くて、パールみたいでしょ!」
カバンにでも付けてねっと言っておいた。
カイルさんからは香木と貴重な乾燥キノコを。
トムさんからは保存のきく干し肉を。
シーナからはすぐに脱ぎ着ができる大きめのゆったりしたワンピースを、もらった。
「なにかの急なときには、寝間着の上からでもこれを着て外に出るのよ!」
急いでいても、寝間着で外に出るのはだめみたいだ……
マークにはみんなと別のときに、お金と大量の保存袋をもらっている。
まぶたが潤んでくるのをごまかすように、一人ずつわたしの向かいの椅子に座ってもらい、わたしも椅子に座ったままみんなにヒールをかけていった。
「みんな、いつまでも元気でいてね!」
マークは屈伸をして、もう違和感がないと言っていた。
カイルさんはオレまでかけてくれるのか? っと呟いてから。
「腰が楽になった!」
トムさんはからだに不調があったようで、素直に喜んでいる。
「腕のけんしょう炎が治ったぞ! 腰も痛くない! パール、すごいな。助かった、ありがとう!!」
「お父さん、やっぱり痛かったんじゃない! あんなに何度聞いても大丈夫だ、痛くないって言ってたのに……もう……パール、お父さんを治してくれてありがとう。わたしのからだは大丈夫なのよ、あら……目がよくなった? うれしい! ありがとう」
よかった、みんなと笑顔でお別れできた。
わたしは明日、王都に旅立ちます!
いままでホントに、いろいろありがとう……
いってきます!!
第一章完了にて一度、完結とさせていただきます。
少しお休みをいただき、第二章に進みたいと思っています。
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