48. 優しい目
「マークのからだが、正常に機能しますように…… なおれっ! ヒール!!」
願いを込めてヒールをかける。
マークのからだ全体を、まぶしくはない優しい光がキラキラ輝いて光を放ち、マークを包み込む。
しばらくすると最後にまばゆい光がキラっと輝いて、スッと消えていく。
わたしは体の中から何かがごっそり持っていかれる感じがして、置いてあった椅子に座り込む。
あーぁ、しんどい……からだがだるい……
マークのことが気になって、椅子に座ったまま声をかける。
「マーク大丈夫? からだは、なんともない?」
マークもしばらく、ボーッとしていたようだけど……
ハッとした顔をして、滑り落ちるようにベッドから降りると、その場で足踏みをしてしゃがんだりジャンプしたりしている。
足は大丈夫なのか?
無理はしてないか?
心配でマークを見つめていると、急にマークが笑いだし椅子に座っているわたしに抱きついてきた。
「痛くない、痛くないんだ!! これはすごいよ! ありがとう、ありがとう……」
そのあとはすぐにでも外に出て走り出したいようで、ソワソワしだして急いで服を着だす。
「パールすまないが、ちょっと外で確認してくる!」
それだけいうと、あっという間に外へ飛んでいってしまった。
わたしはマークの部屋で少しゆっくりさせてもらうことにして、そのあいだチェリーにマークの怪我について尋ねてみる。
「チェリー、マークの足の怪我は治ったの?」
「はい。ほぼ完治ですが、やはり完全ではありません。レベルが49になったらもう一度、ヒールをかけることを推奨します」
「うん、わかった」
チェリーに確認をしたあとは、マークのよろこびようがすごかったと笑いながら話したり、裸で抱きついてきたときにはビックリしたといったり、あとはレベル43でもこんなに治せるのか? 疑問に思ってこれもチェリーに尋ねてみたら、マークの受けた治療師の自称レベル39がどうも怪しく、多分レベル30もなかったのではないかと教えてくれる。
だからレベル20台からだと30台そして40台と二段階わたしのレベルが上になり、レベル43でもここまで治療ができたと分析していた。
そんな話をしていると、顔いっぱいに汗をかいたマークが帰ってくる。
「おれはもう、走れるんだ!」
どれくらい走ってきたのか、目をキラキラさせて。
「パール、ホントにありがとう!」
「うん、よかったよ。足がよくなって」
「うれしすぎてうっかりしていたが、パールからだは大丈夫か?」
「少しふらついたけど、もう平気だよ。それよりマークの足はまだ完全に治ってないから気をつけてね。レベルが49になったらもう一度ヒールをかけるから、それまであまり無茶しないでよ」
「わかった。また、ヒールをかけてくれるのか? もう大丈夫だぞ」
「ホントはレベル50でかけたいけど……それは無理だから。でも必ずその足を完治させるからね」
「ありがたいことだ。あの自称レベル39のアイツはなんだったんだ! 騙されたのか? アイツのときと足の治りが全然違う」
「この治り方からして、たぶんその人はレベル30もなかったと思うよ」
「アイツーっ! 高い金を取っておいてー!!」
チェリーのことは伏せて、マークに教えてあげる。
それからは今後の方針。
ヘデラの森で薬草のマッピングや採取方法の実践。
狩もちょっとは、イヤだけど経験しておきたいことを伝える。
マークは辺境伯様に少しのあいだ、カイルさんと三人で森を探索できる許可を得るといってくれた。
足がよくなったことはシーナとトムさんそれから森に一緒に入るカイルさんの3人にしかいわないことに決める。
あとの人たちには、いまから少しずつ完治していったようにみせるらしい。
このヒールの能力が王家や貴族に知られれば、囲われて大変なことになるとマークが心配しだしたからだ。
自分の怪我の治療でわたしのヒールのことが知られるのは耐えられないらしい。
王都に行っても気をつけてくれと念を押された。
「これから少しのあいだ、おれは役者になる!」
足を怪我しているふりは、いままでホントに経験しているのだからプロ級だという。
足がよくなってホッとしたけど、マークに演技がうまくできるのか?
とても、とても心配だ。
あの愛の告白から夕食後には、トムさんとシーナがいつも二人で馬番小屋までマークの特製ハーブティーを飲みにやってくるようになっていた。
今日も二人、仲良くリンゴを持ってやってくる。
マークがごきげんで二人を迎え入れていた。
「マーク。ごきげんだなぁ、なにかいいことでもあったのか?」
「えっと……わ、わかるのか?」
「わかりすぎるわね!」
マークに演技ができるのだろうか?
しょうがないので、わたしがヒールをかけてマークの足が完治とまではいかないけど、よくなったことを伝える。
えっ、どうしたの? 突然シーナが泣き出した!
「マーク、ホントにもう足は痛くないの? 大丈夫なの?」
「あぁ、もう痛みはほとんどない。思いっきり走って少し違和感がある程度だよ」
「ホントに? ホントなのね? よかった……」
「よかったなー マーク! よかったな、シーナ!」
マークはシーナの頭を撫でて、なだめているようだ。
「シーナはホントに、心配していたからなー」
トムさんもシーナのそばで、背中をさすって泣き止ませている。
シーナは、よかった、よかったといって、突然トムさんに抱きついた。
あれっ、ここはマークじゃないの?
マークをみるとちょっとだけ苦笑い?
トムさんはすごい満面の笑顔で、シーナではなくマークをみているぞ。
ふっ、ふ。
これは、ちょっとおもしろいな……
わたしがみていることに気づいたトムさんは、二人には見えない角度で親指を立ててウインクしてきた。
ニターッと、鼻とあごが分離したのかと思うほどのすごい笑顔でわたしを笑わせてくれる。
ぷふっ!
トムさんはあれからわたしのことを、すごく気にかけてくれているようで……
なにかを思う、その瞬間に気づくと……
いつも優しい目がわたしをみていてくれる。
あのとき、キュッとつかんだトムさんの手と……
わたしの心がちょっとだけ……
繋がったのかな?
あったかいや……




