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32. ルート様八歳になる

 あっという間に時が過ぎ、ルート様が八歳になった。

 これから六年間、王都の学校で次期当主としての知識を身につけ知見を広げていく。

 王都のお屋敷にまずは移転し、学校の準備を整えてから寮に入る。

 そのためひと月後、旅立つことが決定した。


 アース様も護衛で付き添って王都へ行くので、次はいつお二人に会えるのか、もう会えないかもしれない……

 なにかお礼をと考えたけど、なんでも持っているルート様とアース様には、どんなものをあげたらよいのか?


 そう考えると……


 あと一年と少しで、わたしも王都に旅立つ。

 その時マークたちに何を残してあげよう?

 そろそろ本格的に冒険者に向けての準備をしていかなければ……


 わたしはまだ五歳になってないから、レベルも29。

 アース様にヒールをかけたところで、まだ大した違いはないだろう。


 予定では七歳ぐらいで目標のレベル50になる。


 レベル50になったらこっそりここに戻って、マークにヒールをかけ、足の怪我を治そうと思っているけどできればその時、一緒にアース様も治してあげたい。

 でもルート様とまだ王都の学校にいるだろうし、無理かな?

 マークのヒールがうまくいってから、一度学校の寮かお屋敷に連絡して……ダメだ、大袈裟になる。

 ウーン……また 、そのとき考えようか。

 なんとかなるでしょう。


「チェリー 、レベル50ならマークとアース様の怪我をヒールで治せる?」


「はい。レベル50になれば、大抵の怪我は治せます。頑張って早くなりましょう」


「やっぱり七歳にならないと、レベル50になれないの?」


「……。」


「この質問には答えてくれないか……残念」


 何度かこの質問をしているが、いつもチェリーは答えてくれない。


「レベル29で、今できる贈り物……コップでも、木を削って作るか? いや、いや、お貴族様は木のコップなんて使わない?」


「はい。木を使いたいのですか?」


「そういうわけではないけど、木はここにいっぱいあるから……倒せるし……タダだしねっ」


「……はい。 では木のしおりなど、どうでしょうか?」


「あっ 、それいい! さすがチェリー! 勉強しにいくわけだし、いくつあっても邪魔になりにくいし、いいよー それっ!」



 そうと決まれば庭師のカイルさんのところへ、しおりにするのに最適な木を教えてもらいに庭師小屋まで話を聞きに行く。


 庭師小屋は馬小屋からお屋敷を挟んだ反対側にある。

 今の時間は、いるかなぁ?


 小屋の前で作業をしているカイルさんを発見!


「おーい! カイルさーん、聞きたいことがあるんだよー!」


 手を振りながら走って、カイルさんの元まで行く。


「そんなに走らなくってもなんでも教えてやるから、ほらっ、慌てるな。また転けるぞ!」


 カイルさんには一度、裏庭で倒れていたところを助けてもらっている。

 それからは走っているところを見られると、いつも慌てるな、走るな、っと注意されるようになった。

 気のいい優しいおじちゃんだよ。


「あのね、ルート様が八歳になったから王都の学校にいかれるでしょ。それでお世話になったお礼に、木のしおりをルート様とアース様に贈りたいと思っているの。なにかしおり作りに適した木を知らない?」


「ほー 、しおりねぇ。薄く削って作るのかい?」


「そう。手合わせとかのお礼にね、だからお二人にはナイショだよ」


「それはすごい大役だな、は、はっ!」


 日焼けした顔がしわくちゃになり、横線だらけの笑顔が急に少し考えるそぶりを見せる。


「んっ 、どうかした?」


 ハッと 、なにか思いついたのか、小屋を睨みつけるようにみると、大股の早歩きで小屋に向かって歩きだした。


「カイルさん……?」


 なにかあったのか?

 自分も一緒についていくべきなのか?


 カイルさんはそのまま庭師小屋の中に、すごい勢いで入っていった。

 

 えーっと 、んーっと?

 

 あの慌てぶりから、わたしが小屋の中に一緒に入ってもいいのか、見られたくない大切なモノがあったらどうしようと、迷って立ちすくんでしまう。



「パール! こっちにおいで!」


 入っていいんだ!


「はーい! 今、行きまーす!」


 なんだか知らないけど……

 なにかありそうな、たのしい予感。


 しおりにピッタリの木が見つかったらいいな。



 ルート様とアース様のために……

 

 ステキな『しおり』を作くるんだっ!













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