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28. お貴族様のコース

 次の日、乗馬の訓練の帰りにルート様とアース様が馬小屋まで馬を連れてやってきた。


 今までは馬乗馬場に馬を繋いで帰っていたのに、なにしにきたのか?


 ちょうどマークと外のテーブルで休憩をしていたから簡単に挨拶をする。

 マークとアース様は馬小屋の馬房に向かい、話しをするようだ。

 ルート様は馬小屋の外で待つみたいなので、わたしも外にいることになる。


「おい。おまえは毎日何回、素振りをしているんだ?」


「わたしですか。マークに朝と夕方、千回ずつするようにいわれていますけど。 あっ 、でももうすぐ倍に増やすっていってたし、どうなるんでしょうね?」


「二千の倍……四千……」


「魔法は使えるのか? 昨日は身体強化を使っていたよな」


「身体強化を使わないとわたしは小さいから、なにもできないので頑張っています」


 あえて他の魔法には触れず、身体強化だけ取りあげておいた。


「六歳で冒険者だったか、おまえも大変だな……」


 なんだ? 今日は気持ち悪い。

 

 昨日のあの鬼のような顔はどうした?

 ここは無難に答えておこう。


「六歳までここに置いてもらえて、とても感謝しています」


「そうか、感謝しているのか……」


 ちょっと、なに考えてるのか? わからない……


 どうしたんだっと思っていると、マークとアース様がやってきた。


「パール、昨日はご苦労様。また来週も楽しみにしていますよ。ルート様も素振りの回数を少し増やしましょうね。それでは、ルート様まいりましょう。マークもまた」


「んっ、……わかった。じゃあな 」


 二人はお屋敷に帰っていった。


 本当になにしにきたのか?

 マークに聞いても、たいした話はしていないという?



 週に一回の剣の手合わせは、アース様の教えで基本に忠実におこなう。


 剣の基本を身につけると、自分の無駄な動きに気がつく。

 正確な技術が身についてきたようだ。

 

 アース様も基本は上達への効率的な近道になるんだよっと、わたしに向けて話しながらルート様に聞かせている。

 

 なんとなくだけど、わたしの役割も理解してきた。

 やっぱりお貴族様はめんどくさい。


 意外にもあれからルート様は真面目に稽古を重ねていて、あの性格にもだんだん慣れてくる。

 そうすると剣についてや、それ以外の話もできるようになってきた。

 その中でもルート様とアース様から貴族の常識を少し教えてもらえたことが、貴重でわかりやすく勉強になったかな。


 驚くことに、ルート様はもうすぐ王都の名門学校で六年間を過ごすことになる。

 アース様も、もちろん護衛でついていく。


 八歳から十二歳までの四年間が、基本コース。

 十二歳からニ年間は、専門的なコースを学ぶらしい。


 この学校はお貴族様とお金持ちの商人などが寮生活を送りながら学ぶ名門校だそうで、貧しいが賢い平民も学校の奨学制度で少数だが入ることはできる。

 しかしそれは簡単ではない。

 基本お貴族様のための学校だ。

 でもこの名門校を平民が卒業すれば、就職先のグレードがぐんと上がり、王宮に就職も夢ではないらしい。


 頭もそう飛び抜けておらず、ギリギリの財力で入った商人の子どもは基本コースの四年間で卒業してしまう。

 四年だけのコースでも、この学校の卒業生だと聞こえがいい。

 お貴族様との商売もしやすくなり、子どもの縁談も格上が狙える。

 なので少し無理をしてでも、平民の親はこの学校に入れたがるそうだ。

 

 十二歳から後のニ年間は専門的なコースで、いろいろとわかれていく。

 ここからは寮生活と通いが選べるようになる。

 金持ちの商人か王都にお屋敷を持っている子息子女たちばかりになるから配慮されている。


 文系や騎士のコース、お嬢様コースいわゆる花嫁コースもある。

 上級侍女のコースや執事のコースなど貴族様の爵位を継げない子どもたちのためのコースと多種多様。


 ルート様は当主様など後継者を育成するコース、いわゆる帝王学のようなものを学ぶコースだ。


 十四歳で卒業し、一年間は領地で実践して十五歳で成人。

 そして社交界デビューをする。


 もうお貴族様のコースはだいたい決まっているらしい。


 特に貴族のお嬢様たちは、この成人するまでの最後の一年間。

 十四歳から十五歳の間に婚約者を見つけ、婚約する人が大半なようで、将来がみえてくるこの一年が、男女ともに忙しい年になるそうだ。


 いつまで続くのかと思っていた剣の手合わせも、今七歳のルート様が八歳で王都の名門学校に入学することで終わりを告げるとわかった。


 終わりがもうすぐやってくると思うと、やる気も増してくるというもの。


 今のあいだに、いろいろ教えてもらおう。


 ためになる話しもしてくれた。

 手合わせも、わたしのお小遣いになった。

 そんな諸々に終わりが見えてきた。


 いろんな感謝の気持ちを込めながら、話しの最後に伝える。


「……そうなんですか、寂しくなりますね」


「えっ 、 ホントか……さ、さびしいのか?」


「はい。手合わせもできなくなるし、ためになる話しも聞けません。特に剣の手合わせはちょっと、なにか、つかみかけてる気がするんですよね。アース様も一緒に行かれるんでしょ? 残念で寂しいです」


「なにが、寂しいと……。うっ 、アースか……あ、 あたりまえだ! 一緒に行くに決まってるだろ!!」


 急に怒り出したルート様に目を丸くする。


 マークとアース様が残念な子を見るような目で、わたしをみてきた。



 えっ 、 まちがった?


 わたし なにか、 やっちゃった?










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