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18. 樽風呂に入る

 樽風呂の設置とお披露目をかねて、なにも知らない三人に入り方を教える。


 簡単だけどね。


 まずは、お風呂のお湯の溜め方から。


「ではまず、樽に魔法で水を入れます」


 樽に近づき右手をかざして無詠唱で水を溜める。


「次はちょいと、この水をお湯にしてっと……」


 右手をかざしたまま樽の水を、これも無詠唱でお湯にする。

 樽の中から湯気がでてきた。


 気持ちよさそう!


 行水で毎日お湯を作っていたから温度調節はバッチリのはずだけど、初めての樽風呂で水量も多い。

 ちょっとだけお湯に手を入れて、温度の確認をするのも忘れない。


「あとは服をこの床板で脱いで…… あれっ? 脱いだら服を置いておく台がいるね…… あと樽風呂に入るステップ台もいる…… 背が、足が…… とどかない……」


 マークが目を閉じて軽く頭を左右にふり、小さく息を吐いて小屋に向かう。

 呆れながら服を置く台と樽風呂に入るためのステップ台を持ってきてくれた。


「これでいいか?」


「ありがと…… イメージするって、やっぱり大切よね。 てへっ」


 みんながお風呂に入りやすいようにいろいろ整えてくれる。

 シーナはカゴも必要ねっとか、椅子はっとか、ブツブツなにか言っていた。


「まあ、なんだ。 わしじゃ魔法でこの樽に水を溜めるのは厳しいな。 井戸の水を汲んで入れなきゃダメだ。 それに火の魔法は得意でも、この水量をお湯にはできないな」


 トムさんがあごを擦りながら言うと、シーナが続けて頬に手を置き困ったように……


「そうよね。 わたしもなんとか魔法で水を樽に溜めれても、お湯にするためには火の魔石が必要になるわねぇ」


 頷きながらマークまで……


「おれもそうさ、水は魔法で樽に溜めれるがお湯にはできない。 まあ、 頑張ってぬるま湯が限界かな。 それにそんなムチャをしたら魔力不足で風呂どころじゃなくなって、フラフラになっちまうさっ」


「えっ! そうなの?」


「そうよ、だから人にはお風呂に入っているっていっちゃダメよ。 まぁ、行水してるってことぐらいにしときなさい。 樽の水をお湯にするなんて、コップの水じゃないんだから普通無理よ」


「高位のお貴族様なら魔法でいろいろできるのかもしれんが、ここらへんじゃ辺境伯様でもギリギリか、無理なんじゃないか?」


「たぶん無理だな。 たしかリエール辺境伯家は火魔法を得意とする当主が多いが、当代はしれてると思う…… レベル20ないだろうな。 こんな足を怪我したおれでも雇ってもらえたのは、火魔法のレベルが21あったからだ。 助かったけどな」


「だからパール、本当に気をつけてね。 ここは長閑で田舎だからへんな人は少ないけど、王都にはパールの魔法に目をつける人が絶対いるからね! それでなくてもかわいい女の子なんだから!」


「そうなんだよ『前世の記憶』が戻って大人の思考があるというわりにはどこか抜けているし、おっとりしているのかと思うと…… この樽風呂もそうだろう?」


「うーっ 、気をつけます」


 わたしはどうやら世間知らずなようだ。



  ♢



「気持ちいいーー!!」


「そんなに気持ちいいか?」


「次マークも入ってみなよ、わたしの気持ちがわかるから」


 馬にブラッシングしながら、わたしのお風呂の様子を伺っていたマークに樽風呂を勧めてみた。


 トムさんが予備にと、もう一つ樽を風呂場に置いてくれたので樽は二つある。

 一緒に入ってもいいんだけど(まだ四歳だし)でも、この感覚は前世の感覚らしい。

 シーナの顔の表情が、一瞬で変わったからね!


 今は一人で二つの樽にお湯を溜めて、一つはかけ湯専用にしている。


 手桶や洋服を入れておくカゴ、それにちょっと腰かける椅子までシーナが用意してくれた。

 辺境伯家の侍女さんだからか、気が利くシーナだ!


 馬小屋に馬を戻してもマークが興味ありそうにしていたので、一度わたしの浸かっていた樽のお湯はとりかえて、かけ湯用のお湯はたし、マークにも樽風呂に入ってもらう。


 マークは気に入ってくれるかな?

 この気持ちよさがわかるだろうか?


 そうだ!


「マーク! 椅子を小屋から持ってきて!」 


「椅子なんかどうするんだ?」


「そんなの決まってるでしょう! ここでお風呂上がりに草原を見ながら涼むんだよ!」


 マークは苦笑いぎみに小屋から、椅子とコップを二つずつ持ってきた。



 わかっていますよ…… 椅子が二つ……


 マークもお風呂上がり…… 涼むのね。






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