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48 深夜の待ち合わせ





()との面談終了後は、約束通り北園のおばさまとのティータイムを過ごした。

衝撃でもあった有栖川さんの情報を踏まえて、すぐにでも今後の計略を練りたいところだったが、今フラットAに戻ると京極さんに呼ばれるかもしれない。

彼は私が神村さんと話した内容を知りたいだろうから。

その場合は、栗栖君にも説明したように、当たり障りのない事だけを報告すればいいのだが、有栖川さんの意識が戻っていると知った後では、事情も違ってくるのだ。

その情報を得る前と同じ対応で良いのか、否か。

それを考える時間稼ぎは必要だと感じた。

その為に、北園のおばさまとのティータイムはうってつけだったのである。



おばさまは()にも同席を勧めてくださったが、当の本人が頑なに辞退した。

そんな()にはもう一仕事してもらうことにして、私はおばさまと水入らずの時間を楽しむことにした。


しかしながら、やはり頭の中では有栖川 唯人の件が幅を占めており、北園のおばさまからは「舞依ちゃんのクライアント(・・・・・・)は、一筋縄ではいかないのね」と心配されてしまった。


「だけど、舞依ちゃんがいくら優秀でも、難しいと判断したならきちんとそうおっしゃいな。年寄りの我儘(・・・・・・)ばかりを聞く必要はないわ。あなたはまだ15歳の子供なんだから」


おばさまから贈られた深い親愛の助言に、勿論私は心からの感謝を伝えた。


「ありがとうございます。おばさまにそう言っていただいて、とても嬉しいです」


笑顔で返しながらも、父と学院長をまとめて年寄り呼ばわりできるのはこの人くらいだろうなと、内心では苦笑いを浮かべていたのだった。






※※※※※






夜、消灯をとっくに越した深夜、私は音楽棟に一人で来ていた。

新月ではないが、闇夜はまだまだ濃い。

今夜は探索ではないので動きやすいデニムを着る必要もなく、きちんと制服を選んだのだけれど、やはり山の夜は8月でも冷え込む。

私はどこかピリッと肌を刺す夜中の空気に、カーディガンの上から両腕をさすっていた。


フラットAを出て歩く道すがら、北園邸から戻って来てからの事を思い返した。

何か粗相はなかっただろうかと、確認の意味も含めて。



吹月学院に戻った私がまず行った仕事は、図書室(ライブラリー)の新聞に印を付ける事だった。

幸いにもまだ夕刊が届く前で、室内には私以外は誰もいなかった。

なので人目を気にする必要もなく、堂々とテレビ番組表を広げられた。



私が〇を付けた文字は



(う)(と)(音)(時)(今)




そして一旦部屋に戻り、夕食を一緒にと誘いに来てくれた円城寺君に、申し訳ないが今日は部屋で食べたいのだと伝えると、彼が食堂から食事を運んできてくれた。

心配そうにしながらも多くを尋ねてこない円城寺君に、私は、はっきりした事がわかれば後で必ず知らせると約束した。


その後部屋で一人食事をとっていると、()から連絡が入った。

そんなに難しい調べ物でもなかったが、それにしても仕事が早いと感心する。

()からの情報は私をさらに真実に近付けてくれたけれど、私にはまだやるべき事が残っていた。


食事を終えた私は、フラットAの外、食堂棟付近から漂ってくる夕食時の賑わいを背後に感じながら、誰にも見られぬよう神経を鋭利にさせて、管理棟のライブラリーに再度足を運んだ。



夕刊に暗号を残す為だ。


先ほど同様、ライブラリーは無人だった。

ここに来てから奇妙に感じていた鋭い視線も、今日は刺さってこない。

私は朝刊から夕刊に差し替えられた新聞のテレビ番組表に、黒いペンで〇印を付けていった。



(く)(が)(0)(夜)



法則に則り浮かび上がってくる朝刊とあわせてのメッセージは――――今夜0時音がくとう



今夜0時、音楽棟



果たしてメッセージを受け取った人物は、誘いに応じてくれるのだろうか。

いや、もし応じないというのなら、それはそれでその人物の意志表示と見なせばいい。

期待に混ざる不安さえも、今の私には大いなる手がかりになると直感していた。



そうして、消灯を過ぎた真夜中に、私は待ち合わせ場所にやって来たのだった。











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