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photographer  作者: 津辻真咲
8/8

個展


カシャ、カシャ。カメラのシャッターをきる音がする。

――よし、完璧。

彼女は微笑む。

「コーヒーいれましたよ」

 そんな彼女に弓弦は話しかける。

「ありがとうございます」

コトン。弓弦はコーヒーカップをテーブルに置く。

「どうですか? 今日の撮影は」

 そして、そう尋ねた。

「思ったより、順調です」

「それは良かった」

 弓弦は笑顔になる。

「それで、今日は何を撮影したのですか?」

「散光星雲です」

「ということは」

「宇宙の星間ガスです」

 雪華はそう説明する。

「そうですよね」

「はい」

 雪華は微笑む。

「光を通さない程、濃い星間ガスが暗黒星雲ですよね?」

 弓弦は聞く。

「はい。その通りです」

雪華は笑顔で答えた。

「そう言えば、もうすぐ白井さんの個展の日が近いですね?」

「えぇ、3日後です」

「とても楽しみです」

 弓弦は微笑んでみせた。

「はい。私にとっては初めての個展なので」

「そうでしたか」

「はい」

 雪華も微笑む。

「テーマは色でしたよね?」

「はい」

「七色、そろいましたか?」

 弓弦は聞く。

「えぇ。ばっちりです」

 雪華は笑顔で答える。

「ちなみに?」

「赤色がブラックホールの降着円盤。オレンジと黄色が恒星。緑色と青色が散光星雲。白色が銀河。黒色がボイドです」

「そうだったんですね。とても興味深い」

「ありがとうございます」

ピピピ。携帯端末の着信音が響く。

「!」

「招集ですね?」

「はい」

 雪華はメールの内容を確認する。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 雪華は撮影機材を片付けると、急いで支社へと向かった。



アンドロメダ支社

「今回は、ペガスス支部のカーブラックホールだ。特異リングの撮影に挑む!」

「はい」

 比賀登は堂々と宣言する。

「特殊な機材が必要だ。準備開始」

「はい」

 彼の掛け声に、雪華と解の二人は返事をする。

「特異リングの撮影なんて、楽しみですね」

 解は嬉しそうに雪華に話しかける。

「そうね。カーブラックホールは移動しているから、気を付けないとね」

「はい」

解は笑顔で返事をした。



ペガスス支部 カーブラックホール付近

「さぁ、撮影開始だ」

「はい」

雪華は比賀登の合図でカメラを回す。

「どうだ?」

「映ってます」

 雪華はそう答える。

「そうか。分かった。そのまま、撮影だ」

「はい」

 三人は撮影を続けた。すると、シャトル内に警報音が鳴った。

「どうした!?」

「カーブラックホールの進行方向が変わりました! こちらへ向かって来てます」

 解がそう伝える。

「分かった。撤退するぞ」

「はい」

雪華は操縦席に座る。

ドゴォォォ。と、轟音が聞こえて来た。

「何だ!?」

ゴォォォ。再び、轟音。

「わっ!」

「一体どうした!?」

 比賀登は状況を尋ねる。

「もしかして……」

 解は心当たりがあるようだった。

「佐木、言ってみろ」

「多分、このカーブラックホールのエルゴの領域に侵入してしまったかもしれません」

 解はそう言う。

「エルゴの領域というと、どんなものもその場で静止することもできない危険な領域じゃ……」

 雪華は語尾が小さくなる。すると、再び、警告音が鳴る。

「今度は何だ!?」

「光の事象面に近づいてきています! このままだと吸い込まれてしまいます!」

 解が説明する。

「分かった。光速型ワープは無理だろうから、ワームホール型ワープだ」

「はい!」

雪華は操縦桿を握った。

《ワープまで、5.4.3.2.1.0…》

ドゴォォォ。と、轟音が響く。シャトルはワームホールへと突入する。ゴォォォ。轟音は続く。

「あ!」

「アンドロメダ支社が見えた!」

 次の瞬間、シャトルはワームホールから出て来た。カーブラックホールから、逃れたのだった。

「良かったぁ。戻って来れたぁ!」

雪華は安堵する。

「よし。撮影も一応できたし。このまま、戻って編集作業だ」

「はい」

 雪華たちはアンドロメダ支社へ戻っていった。



アンドロメダ支部 宇宙観測展望台

カシャ、カシャ。雪華はカメラのシャッターを切る。

「せいが出ますね?」

 弓弦は宇宙を撮影している雪華に話しかける。

「コーヒーですか?」

 雪華は尋ねる。

「ええ。淹れて来ました」

「ありがとうございます」

 雪華はいつも通り、お礼を言う。

「では、こちらへ」

「はい」

コトン。弓弦はテーブルにコーヒーカップを置く。

「今回は、何の写真ですか?」

「?」

 雪華は首を傾ける。

「明日には、個展が始まるのでしょう? なのに、まだ作品の撮影をしているので」

「これはコンテスト用です。来月末が締め切りなんです」

 雪華は笑顔で答える。

「そうだったんですね。気付きませんでした」

「いいえ」

 雪華は微笑んだ。

「ちなみに明日の個展は何時からですか?」

 弓弦は尋ねる。

「午前十時からです」

 雪華は答えた。

「では、一番に行こうかな?」

「いいのですか?」

「はい。ファン第一号ですから」

弓弦は笑顔で言う。

「ありがとうございます」

雪華は笑顔になった。



アンドロメダ支部 個展会場

「白井さん」

「あ! 管理人さん。来て下さってありがとうございます」

 雪華は嬉しそうに弓弦を出迎える。

「これ、どうぞ」

弓弦は雪華に花束を渡した。

「これ、いいのですか?」

「えぇ。もちろんです」

 弓弦は笑顔で答える。

「ありがとうございます」

 雪華も笑顔になった。

「お、ここかぁ」

「みたいですね」

「?」

雪華は出口付近からの声に振り向いた。

「よぉ! 白井」

「僕たち、白井さんの個展が気になって、来ちゃいました」

 解と比賀登だった。

「白井さん、おめでとう」

「ありがとうございます」

 雪華はとても嬉しそうだった。


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