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【第44話:神獣さま】

 突然目の前に現れた魔人は、人ではない笑みを口元に浮かべ、鋭く伸びた爪でオレを引き裂いた。


「ぐふっ!?」


 やばい……息が、できない……。


 オレは咄嗟に身体を捻り、何とか首は回避したが、肩から胸にかけてかなり深く斬り裂かれてしまった。


 しかも、魔人の凄まじい膂力により、吹き飛ばされ、受け身も出来ずに無様に転がる事になってしまった。


「さよならだ。無謀な少年」


 そして、オレに止めを刺そうと振りかぶられた腕は……肘から先が消し飛んでいた。


 なんだ? 何が起こっている?


 オレの中に凄まじい力が流れ込んできている。

 傷口が非常識な速度で塞がっていく。

 あらゆる周りの情報が頭に流れ込んでくる。


「ばぅ~!!」


「パズ!!」


 これは……職業スキル『獣使い』の力か?


 パズと主従契約を交わした時から、今までもパズとの繋がりは感じていた。

 しかしこれは……今までが細い糸のようなもので繋がっていたイメージだとすると、今はまるで丸太のような太さのロープで繋がっているようだ。


 主人の命が……オレの命が危険にさらされて、パズとの繋がりが強化されて、その力が流れ込んできたのか?


「いや、今はそんな事はいい……このチャンスに畳み掛けるぞ!! パズ!」


「ばぅ!」


 オレの想いを感じ取ったパズがいつの間に拾ったのか、口に咥えていた霊槍カッバヌーイをこちらに放り投げてきた。


「おのれ!? ただの魔物の分際で、どこまで邪魔をするつもりだ!! 簡単に死ねると思うなよぉぉ!!」


 片手を失い、怨嗟の言葉を口にする魔人を横目に、オレは槍を受け取る。

 そして、そのまま体をくるりと回転させると、遠心力を点の力へと変化させて、ただ早くあれと突きを繰り出した。


「はぁぁぁぁ!!」


 槍が手に馴染む。

 まるで自分の手足のようだ。


「ぐっ!? ば、馬鹿な!? 人間ごときの力で我の身体を穿つだと!?」


 パズばかりを警戒して、オレへの注意がおろそかになっていたのもあり、オレの突き出した渾身の突きは、魔人の肩を貫いていた。


 武器適性Sランクだって事に頼り切りだった槍の扱いだったが、ここに来て、何か開眼したような感覚だ。


「ばぅぅ!!」


 そして、魔人の注意がオレに向けられた瞬間。

 辺り一面にキラキラと輝く淡い光が広がっていく。


 氷の結晶だ。


 これは……前にパズが迷宮で使って見せた技に似ているが……そこへ込められた魔力が、その規模が段違いだ……。


「ぐっ!? こ、これは……」


 魔人も事態が呑み込めず、思わず絶句している。


 尚も広がり続ける氷の結晶が、キラキラと幻想的な世界を創り上げていく。

 その光景は、まるで世界を書き換えていくような、そんな風に感じた。


 そして……その氷の結晶の拡大が止まった瞬間。


「ばぉぉぉぉぉん!!」


 パズの咆哮と共に世界が収束した。


 一粒一粒に馬鹿げた魔力が込められた無数の氷の結晶が、全周囲から魔人に向かって行く。


「く、こ、こんな所でぇぇぇ!!」


 魔人が何か防壁のようなものを展開したように見えたが、まるでそれこそ幻だったかのように、氷の結晶は防壁を粉砕し、魔人へと到達した。


 全周囲から氷の結晶が魔人を襲い……。


「き、消え去ったのか……?」


 跡形もなくというのは、こういうことを言うのだろうか。

 全周囲から魔人に殺到した氷の結晶は、魔人に触れた瞬間にその身体を凍てつかせ、そのまま通り抜けると、粉微塵に砕きさったのだった。


 ◆


「倒したのか……」


 オレたちが駆けつける前から、パズは魔人と互角に戦いながらも、倒れている街の人たちを庇い、治療を試みるといった格の違いを見せつけていた。


 だから、オレたちがその街の人たちを助け出したことで足かせが無くなり、一気に有利になるだろう事はある程度予測できた。それを狙ってもいた。


 だけど……最後のアレは、今までのパズと比べても次元の違う強さに感じた。


「ばぅわぅ!」


「え? 繋がりが太くなって強化されるのは、オレだけじゃないのか?」


 オレは、自分の命が危なくなった時、パズとの繋がりが強化されて、パズの力がオレに流れ込んできたのだと思った。


 だけど、パズが言うにはそれだけじゃないらしい。


 繋がりが強化されると、オレの『獣使い』としての力により、パズもまた大きな力を得る事ができるという事だった。


「なるほどな……しかし、なんとか倒せて良かっ……」


「ユウト!!」


「ユウトさん!!」


 オレがパズから説明を受けていると、ミヒメとヒナミがオレの名を呼びながら駆け寄ってきた。


「ユウト、大丈夫なの!?」


「ユウトさん、さっき凄い血が……」


「ちょ、ちょっと待って。そんなべたべた触るな!?」


 オレの事を心配してくれるのは嬉しいけど、いきなり人の身体をべたべた触るのはやめて欲しい。


「な、治ってる……あんたの身体、どうなってるの……?」


「パズちゃんが治した?」


 これはどうやって治ったのだろう?


「パズのお陰なのは間違いないが……」


 繋がりが強くなった時に、いきなり回復が始まった感じだったが?


「ばぅわぅ!」


「そうか。……どうやらパズが、オレとの繋がりを通じて回復魔法を使ってくれたらしい」


 そんな事も出来るのか。もう、何でもありだな。


「よ、良かった……私、ユウトが死んじゃったかと思った……」


「私もだよ~。ユウトさん無事でほんとに良かった……」


「あぁ、二人とも、ありがとうな……」


 仲間にこうやって心配して貰えるって、それだけでもありがたいものだな。

 なんだか暖かい空気に包まれたようで、心地よい。


 そんな風に感じていると……。


「か、勝ったのか……? あの凄まじい化物に?」


「この辺り一帯が凍り付いたように見えたけど……」


「あの化物は炎を使ってて、戦ってた小さな神獣さまが氷を使ってただろ? ってことはさ……」


「やっぱり勝ったのか……や、やったぁ~!」


「うわぁぁぁ!! す、凄い! やはり神獣さまが勝ったんだぁ!!」


 そこからはもう凄い騒ぎになってしまった。


 いや、それより、さっきから気になる言葉が含まれているのだが……。


「神獣って、どう考えてもパズの事を言ってるよな?」


 その後、オレたちは街の人たちに囲まれ、ねぎらいの言葉と質問攻めにあったのだった。


***********************************

もう少しで第一章完結というところで間が空いてしまい、すみません(汗)

残りはそこまでお待たせすることなくアップしたいと思っておりますので、

このまま最後までお読み頂けますと嬉しいです。


あと、先日このあとがきでもお伝えした新作、

【羊飼いに転生した私は酪農系スキル『牧羊』で最強もふもふ生活】

は、先に書き溜めていたのもあり、ちょうど第一章完結がしております。


まだの方は、今なら一気読みにもちょうど良いタイミングですので、

ぜひ、読んでみて下さい。


それでは、本作とあわせて、よろしくお願いしま~す!<(_ _)>

********************************


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