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【第13話:寂しい奴】

 手の空いていたギルド職員総出で魔晶石の鑑定を済ませてくれたので、なんとか三〇分ほどで作業は終わっていた。


 そう、作業は終わったのだが、オレみたいな新人冒険者がこのように多くの魔晶石を持ち込むなど怪しい以外のなにものでもなく、結局事情説明を求められ、この街の冒険者ギルドのギルドマスターと会う事になってしまっていた。


「しまったな……小出しに渡せば良かった……」


「ばぅわぅ」


 まぁそう落ち込むなと、頭を前足でペチペチと叩いてくるパズ。


「なぁパズ……これからギルドの偉い人と会うんだ。一旦降りてくれないか?」


「ばぅぅぅ~!!」


 魔晶石を出す時はあっさり降りてくれたのに、今はダメらしい……。


 パズとそんなやり取りをしていると、


「失礼する」


 という声と共に扉が開き、一人の壮年の男性と、先ほどの受付嬢が入ってきた。


「待たせたな。あの大量の魔晶石を持ってきたのは君か」


「は、はい! Fランク冒険者のユウトです!」


 屈強な歴戦の冒険者といった風貌に、自然に備わったのだろう存在感が凄い。

 そもそも前世も含めてこんな偉い人と会うのは初めてで、思った以上に緊張してしまっていた。


「私はこのセルムスの街の冒険者ギルドマスターを任されているガッツイだ」


「はい! お、オレなんかに時間をとらせてしまって、すみません!」


 威圧が凄くて、思わずヘコヘコしてしまう……。

 結構強くなったつもりだったけど、今のオレではとても敵いそうもない気がする。


 先ほどの受付嬢も、飲み物を置いたらさっさと出ていってしまったので、この部屋にはオレとギルドマスターと二人きりで、余計に緊張する。


「うむ……なぜFランク冒険者があれほどの魔晶石をと思ったが……」


 そこで言葉を切ると、オレをじっと見た後、今度はオレの頭の上に視線をずらした。


 なんか静寂が痛い……。

 それほど長い時間ではないと思うのだが、黙って睨ま……見つめられると、悪い事などしていないのに、なんだか冷や汗がでてくる。


「ユウトと言ったな。君もFランクとはとても思えない強さを持っていそうだが、その頭の上の……それは犬の魔物か?」


「ばぅわぅ!」


「えっと……自称『ただの犬、チワワ』だそうです」


「ん? 君はその犬? チワワ? の言葉がわかるのか?」


「えっと……はい。だいたいわかります」


 一瞬隠した方が良いかと思ったが、何だかこの人なら信じてくれそうな気がしたので、正直に話す事にした。

 それに嘘ついても一発で見抜かれそうな気もする……。


「そうか。君は『魔物使い』の職業クラス(・・・・・)なのか」


「えっ!?」


 ガッツイの口から、職業クラスという言葉が出た事に思わず反応してしまった。


「うむ。やはり職業クラスの存在を知っていたか」


 しまった……何か、鎌をかけられたようだ。


「……」


「そう慌てて誤魔化す必要もない。貴族やある程度の身分の者、高ランク冒険者なら知っている事だ」


 ある程度の人には知られているのか。

 まぁこの国は、職業クラスの存在を知っていたからこそ『勇者』ってクラスをつける勇者召喚の儀式魔法を編み出したのだろうし、ある程度知られていても不思議ではないのか。


「職業クラスについては、ある理由から知っていました。ただ、オレの職業クラスは『魔物使い』ではなく『獣使い』です」


「ほう。聞いた事のないクラスだな。レアクラスか」


 へぇ~、『獣使い』ってレアクラス扱いなのか。

 なんだかレアってつくだけでちょっと嬉しいのは、前世のゲームの影響かな。


「それで、そのクラスの能力は把握しているのか?」


「えっと……そうですね。ある程度は把握しているつもりです」


「じゃぁその頭の上のチワワとやらも、しっかり従えているのだな?」


「はい。あ、でも、従えているというより、仲間と言うか、相棒と言うか……そう! パーティーメンバーみたいな感じに思っています!」


 今まであまり深く考えていなかったが、口に出してみると、『パーティーメンバー』という言葉がしっくりとくる気がした。


 だから、パズとの関係性について感じた事をそのまま伝えてみた。


「もちろん、獣使いとしての主従契約は結んでいますが、なんかパーティーメンバーって感じがしっくりくるんですよね。おかしいですね。ははは……」


「中々面白い考え方だが、別に良いのではないか。私には『魔物使い』の知り合いがいるが、そいつが言う下僕とかいう言葉や関係性より遥かに良い」


 職業クラスの話をパズに聞く前から、魔物を従える者の話は聞いた事があるが、あまり評判は良くなかった。


 それに、人類の敵である魔物という存在は、やはり憎むべき存在なのかもしれない。

 それが自身が従えるものたちであったとしても……。


 だけど、オレとパズは少なくとも絶対にそんな関係じゃない。


「まぁその方の考えを否定するつもりはないですが、オレとパズは最高のパーティーメンバーのつもりですよ」


「ばぅ!」


 良く言った! って、なんでそこで上から目線なんだよ……。


「良し。じゃぁ、特別にパーティーメンバーとして許可してやろう」


 え? 別にそういうつもりの話じゃないんだけど……。


「こう見えても、私は結構ギルドでは力を持っていてね。ユウトくんの考え方、気に入ったよ。これからはそのチワワとパーティーを組むと良い」


 あれ? それって、なんかオレ、傍から見ると凄く寂しい奴に見えない?


「はっはっは! 気にするな! そのチワワと言う存在がどういったものかはわからないが、私より強いという事はわかる。便宜をはかるのは当然だ!」


「あ、あの、いや、そういう……」


「とりあえず不正で魔晶石を提出したわけでは無さそうだという事はわかったし、私は失礼させて貰うよ」


 そして、こう見えても忙しい身でねと、そこで強引に話を終わらせてしまった。


「えっと、あ、はい……」


「さっそく部下には、パーティーメンバーとしての手続きをさせておこう。はっはっはっは」


 あれ? どうしてこうなった……?


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