表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/45

【第11話:(人)】

 ボスのいなくなったボス部屋で一晩を明かしたオレ達は、迷宮脱出に向けて森型ダンジョンの出口に向かって歩いていた。


 寝る前にパズが、ボス部屋の周りを氷の結界で囲ったので少し寒かったが、おかげで安心してぐっすりと眠る事が出来た。


「しっかり寝て体力も回復したし、今日こそこのダンジョンからおさらばしよう」


 今回はウォリアードッグの四匹が案内役を買って出てくれているので大丈夫だろう。

 仮にも迷宮の主の元眷属だ。さすがに迷う事はないだろう。


 迷わないよな……?


「ばぅぅ~……」


 なんかジト目で見られている気がする。

 パズは今、オレの頭の上で「ぐだ~」ってなってるので、その姿は見えないけど……。


「ばぅ?」


「ん? これからどうするのかって?」


 パズに質問されて、あらためて考えてみた。


 まず、パズが迷宮の主である『カイザーウルフ』を倒してしまった件だが、これはすぐにどうこうなるものではない。


 ダンジョンは迷宮の主が倒されても、数年は魔物の沸きはあまり変わらず、一〇年ほど経ってから徐々に普通の森へと戻っていく。

 だから、今回オレ達が迷宮の主を倒したからと言って、すぐさまダンジョン化が解けるわけではない。


 そしてボス部屋には迷宮の主ではないが、通常のボスがわくようになる。

 だから、そのうちどこかのパーティーが通常のボスを倒して、迷宮の主を倒したと報告してくれるだろう。


 変な注目を浴びるのも嫌だし、迷宮の主の魔晶石も手に入れられなかったので、迷宮制覇の件は報告しないでおくか。

 絶対に話を信じない奴が証拠を出せとか言ってきて、揉めるのが目に見えている。


 うん。鵺の討伐と道中の魔物の戦果だけを報告する事にしよう。


 あと、もう今さら恨んだりギルドに訴えたりするつもりはないが、パーティーは正式に抜ける手続きをする。

 さすがにパーティーに戻って、あいつらと上手くやっていけるはずがないしな。


 暫くはパズとのんびりとダンジョンに通ったり、依頼をこなして、少しずつ冒険者ランクでも上げていこう。


 オレはこのあたりの考えをパズに話していった。


「そうだ。ちょっと気になっていたんだけど、パズは勇者召喚に巻き込まれたって言ってたが、この国で勇者召喚が行われたのか?」


 もしこの国が勇者召喚の儀式魔法を執り行っていたとすれば、この国に何らかの危機が迫っている事になる。

 そう考えると心配になってきたので、詳しく聞いてみる事にした。


 今はウォリアードッグたちが、道案内だけでなく、露払いもしてくれているので、暇だしな。

 魔晶石まで取り出してくれて、至れり尽くせりだ。


「ばぅぅ? ばぅわぅ!」


 しかし、パズから返ってきた答えは、思っていたのと少し違う答えだった。


「え? 勇者召喚って、この国が代々受け継いでいる異世界から勇者を召喚するって儀式魔法以外にもあるのか?」


 詳しく聞いてみると、パズはこの世界の名前を聞き忘れた(とある)神様の手によって行われた『勇者召喚』に巻き込まれたのだそうだ。召喚魔法ではないらしい。


 だけど勇者召喚と言えば、この世界では、この『パタ王国』で執り行う儀式魔法しか聞いた事が無かったので、まさか神様が執り行うものがあるとは思わなかった。


「ばぅ!!」


「えっ……国の勇者召喚って、神様が執り行う勇者召喚を真似た偽物なのかよ……」


 ここにきて、また驚きの事実。

 オレがこの世界で子供の頃から憧れていた、英雄譚の中の勇者は、儀式魔法によって呼び出された偽物の勇者だったらしい……。


「ばぅぅー!」


「職業クラスを無理やり『勇者』にして力を得ているって……」


 なんでも本当の勇者は、召喚された際に、様々な能力を付与された上で、職業クラスを『勇者』にして、この世界に送り出されるらしい。


 パズの場合は氷に関するある権能と呼ばれる能力を授かっているそうだ。


「え……という事は、パズ。お前の職業クラスも『勇者』なのか!?」


「ばぅわぅ!!」


「え……『勇者(犬)』って、無理やりだな……」


 初めてチワワを見た神様が、パズを大層気に入り、特別な職業クラスを創ってくれたそうだ。


 何やってるんだ神様……。


 まぁそれはともかく、職業クラス『勇者』には、前世の創作物でお馴染みの「異世界言語」「アイテムボックス」「ステータスアップ」などの基本能力詰め合わせが、ついているらしい。


 つまり、人の手によって召喚された勇者は、この勇者の基本能力詰め合わせだけで、パズの言う『権能』とかの神様に直接付与された力はないのだそうだ。


 ただ、それでも普通の職業クラスと比べれば、かなり凄い能力なのだろうけど。


「でも、それってこっちの世界の人間じゃぁダメなのか? 無理やり職業クラスを変えるとか?」


 わざわざ異世界から召喚した人間にそのような事をしなくてもと思ったのだが、神様でもない限り、一度ついた職業クラスは変えられないらしい。

 この世界で生まれた人間には必ず職業クラスが付与されているそうだし、だからわざわざ異世界人を召喚する事にしたようだ。


「ん? ちょっと待てよ……。パズの話の通りだとすると、神様が勇者召喚する時は、国ではなく、世界に危機が迫っている時って事にならないか?」


 この国が執り行う勇者召喚は、この国の上に立つ人間が、国が危機に陥ると判断した時に行うものだ。

 これはこれで大問題なのだが、神様が勇者召喚を行ったとなると、パズの話の通りだとすれば、世界に危機が迫っているという事になる。


「ばぅ~?」


「えぇぇ……まぁパズは確かに巻き込まれただけだし、責任はないんだろうけど……」


 それは一緒に呼び出された本物の『勇者(人)』がいるから、それに任せておけば良いと言うのはその通りかもしれないが、世界に迫っている危機と言うのが気になる。


 あっ、「(人)」はいらないのか……。

 思考が完全にパズに侵されているな……気をつけよう。


 しかし、本物の勇者か……いったいどんな奴なのだろう?


 前世では、ゲームやアニメ、小説を人並みに嗜んでいたし、この世界に生まれ変わってからの勇者への憧れもある。

 もし機会があるのなら、会ってみたいものだな。


「パズがこれだけ強いんだ。きっと人の勇者も凄いんだろうな」


「ばぅ~?」


 前世の記憶を得たからか、何かこう勇者という響きに憧れ以外にも強い興味がわき、思わずその姿を想像してしまう。


「「「「おん!」」」」


 そんな会話を続けていると、案内を務めてくれていた筋肉マッチョ犬……もといウォリアードッグの四匹が、森型ダンジョンの終わりを告げたのだった。


**************************

次の更新は明日の予定です。

これからは当面の間、毎日更新を目標に頑張りますので、

どうか応援よろしくお願いします!<(_ _")>

**************************

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作品の評価は、上の『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』から★★★★★と表示されている所をクリックする事で簡単に出来ます!
応援にもなりますので、この作品を読んで妥当と思われる★を選び、評価頂けると嬉しいです!

また、面白いと思って頂けましたら、ぜひブックマークもお願いします!


新連載!
『オレだけクォータービューで戦場を支配する
~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~』


異世界にふりかかる理不尽をチートで蹴散らす本格バトルファンタジー! 今ここに始動する!


New!【羊飼いに転生した私は酪農系スキル『牧羊』で最強もふもふ生活】
Et6j2SyVkA4u2xS?format=png&name=small
※画像クリックでなろう内の目次ページが開きます
「この世界にはカワイイが不足しているわ!」
羊飼いとして転生した女の子が仲間とモノづくりをしながら様々な騒動を巻き起こしていく、そんなお話です♪


MFブックス様より、書籍版 第一巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第二巻 2021/1/25(月)発売!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第一巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

『呪いの魔剣で高負荷トレーニング!? ~知られちゃいけない仮面の冒険者~』
8o9b581i4b7hm42ph5wph6qohlqu_xql_tg_15o_
※画像クリックでなろう内の目次ページが開きます
『突然、カバディカバディと言いながら近づいてくる彼女が、いつも僕の平穏な高校生活を脅かしてくる』
平穏を求める高校生と、とある事情を持つ美少女クラスメイトの恋物語(ラブコメ)

『魔王を以て魔王を制す ~ギフト『魔王』を持つ勇者~』
多くの魔王が現れた世界でギフト『魔王』を以て魔王を蹂躙する勇者の物語!

『槍使いのドラゴンテイマー シリーズ』
少年漫画のようなバトルファンタジー!


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー  cont_access.php?citi_cont_id=583294420&s
― 新着の感想 ―
[気になる点] おかがで安心してぐっすりと眠る事が出来た。 おかがー!(おかげで)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ