その7 レジスタンスの真実
「あぁ、その実力を見込んでのことさ。 ───アンタは自分を弱く見積もってるみたいだけど、実際強い」
「ふむ」
「だから、その力を貸して欲しいのさ。 アタシたち、レジスタンスの為に」
「レジスタンス……?」
雷牙は首を傾げた。
「そういえば、何処かの軍隊に追われてたな。 一体、レジスタンスって、なんなんだ?」
その言葉に、レラは少し考えこんだ。
「んー。 一度見た方が、話が早いさね。 ついてきな」
「……いいだろう」
レラが手招きをする。 雷牙は、レラに言われるままに部屋を移動することにした。
~~~ 青駒 ~~~
「ここらの村が変わったのは、数年前……まだ5年も経ってない昔さね。
「あの日から、ここら一帯はヤツの支配下になった」
「……ヤツ? クーデタでも起きたってのか?」
その言葉に、レラが信じられない、とでも言いたげな顔をした。
「アンタまさか、あの日の事件を知らないのかい? アンタ、一体どんだけ遠いところから来たんだい?
「まぁいいさね。 その話は後だ。 今は、コイツを見るのが先決さね」
話しているうちに、廊下を渡り切っていた。 廊下の先には、木製の扉がある。
レラは扉に手をかけた。
ギギィイイ……。 掠れるような音を立てて扉が開く。 その先にあったのは───
『人』だ。 何十人もの、負傷した人間がいた。
天井のない、吹き抜けの大広間。
そのあちこちにベッドが置かれ、負傷した人間が横たわっている。 誰も彼もが、躰のどこかが欠けていた。
手がない者、脚のない者、片目のない者、包帯を巻かれた者───それが、何十人といた。
「消毒が足りない!」「軽傷の奴は自力で手当てしてろ!」「ダメだ。 コイツはもう助からねぇ。 殺してやれ」「───」「……」「 」「」
その光景を前に、雷牙は、息をするのも忘れた。
「凄まじいだろう? おや、声も出ないかね。
「まぁ、これを見て平然としてる方が異常なんだけど」
「……いや」
雷牙の視線がせわしなく動く。 持ち前の観察眼をフルに発揮して、状況を観察しているのだ。
「予想よりも、しっかりしてると思ってな」
「……お、驚かない、んだ」
ルチルの表情が、ミリ単位で動く。 この少女の感情は、顔からは読み取りにくい。
「あぁ。 少なくとも、こういう景色は初めてじゃないからな」
雷牙は天井を見上げた。
「……前の抗争ん時も、こんなだった。 やられた若い衆の手当てに走り回ってたんだ。
「ただ、こっちは本物の野戦病院だ。
「 資材も何もかも足りてなくて、助けられないやつが多い それに───」
雷牙の眼が、スゥ、と細まる。
「戦ってできた傷だけじゃない。 顔やなんかに火傷跡のある女がいる。
「 こういうのは、野蛮な風習とか、男尊女卑とか、その辺が元だろ。
「その跡みたいに、な」
雷牙はルチルの火傷跡を指さした。 その動きに驚いたのか、ルチルはまた、レラの後ろに隠れてしまった。
「他にも、戦闘に関係ない部位の負傷が多い。 こういうのは虐待や拷問でつくやつだ」
「鋭いね」
レラが頷く。
「まるで、そう言うことに慣れてるみたいだ。 本当、そこの出身だい?」
「実際、そういうのを見てきたのは事実だぜ。 ここまで非道いのは初めてだけどな」
「……。 そうさね。 一旦、場所を変えようか。 アタシらがここにいても邪魔になるし、───話が、長くなりそうだしね」