その4 決着の時
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
ギャギャギャギャギャ!! 地面を抉りながら、渾身の力で竜を押しとどめる。 ルチルとの距離、残り5メートル!
ダメだ、止められない! 残り3メートル!
2メートル! 1メートル……0!
ガツゥウン! 雷牙は、背後の木に激突した、が、突進を、止めていた。
「……コノ」
雷牙は、山の主を睨みつける。 すると竜は怯えたように、牙を離した。 竜の本能が、危険を感じ取ったのだ。
だが、雷牙も無事ではない。 食いつかれた左腕は、繋がってはいるが、ダラリとぶら下がり動かない。 そして、ボタボタと血が流れている。
即死ではないが、ダメージは大きい。 放置すれば、失血で死にかねない状態だ。
「GRRRRRR……」
山の主は、地面を爪で削りながら、雷牙を睨めつける。 警戒しているのだ。
「時間がねぇ……死ね!」
雷牙は、先手必勝とばかりに跳躍する。 脚力を活かして、近くの木の幹に移動。 即座に幹を蹴り、山の主へと飛び掛かる!
「どらぁああ!!」
山の主は、空中の雷牙に向けて火炎球を発射!
BOMB! 直撃か? 否! 雷牙は鋭い斬撃で爆炎を切り裂き、一気に突っ込む!
「Break it!!」
SLASH!! 雷牙の拳が、山の主の後頭部を直撃! 鱗の隙間を正確に捉えた一撃で、鮮血が舞う!
「GYAOOOOOU!!」
山の主は、急速な失血によりダウン! 頭が地面に着くと同時に、地響きが広がった。 ズズゥウン。 そのまま山の主は動きを止めた。
「や、山の主を、一撃で……?」
レラは驚きに目を見開く。 その視線の先には、地に付した竜と、雷牙の姿。 その右手から、ポタポタと竜血が滴り落ちる。
「いや、まだだ! 致命傷じゃねぇ!」
そう言った直後、山の主の躰が、ビクリと震えた。
「───GUOOOO!!」
山の主は、ダメージなどなかったかのように起き上がってきた。 最早勝ち目はないのか? 否、雷牙はまだ諦めていない。
「───もう一撃、だね。 あと一発で決着がつくよ」
レラが冷静に分析する。 その通り。 互いに、後一撃で死ぬほど追い詰められているのだ。
「……」
「……」
「……」
雷牙は一ミリも動かずに、竜の首を狙う。
対する山の主は、雷牙の隙を狙っている。
雷牙の肩から、血液が零れ続ける。 このままでは失血死、と思われたその時、山の主が仕掛けた。
「GUOOOO!」
山の主は頭を下げ、突進!
同時に雷牙は矢の如く駆け出した!
雷牙と竜のシルエットが交錯する。
そして、決着がついた。
着地した雷牙の後ろで、山の主は首から血を吹きながら倒れたのだ。
ズズゥウン! 今度こそ動かなくなった竜を背に、雷牙は拳を高々と突き上げた。
そして、力を使い果たした雷牙は、膝から崩れ落ち、意識を手放した。