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雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第四章 屍龍~Dragon zombie~
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黒槍との闘い 決着

 まず、塔の半分が消し飛んだ。


 画面が白飛びするほどの光によって柱は溶け、大気は焼け、天まで届く炎が噴き出し、夜空が赤く照らされた。 その光は数秒間続き、そして嘘のように消えた。


 光が収まった時、塔は半壊していた。 猛烈な魔力の前に外壁は崩れ、中の構造がむき出しになっている。


「……俺の勝ちだ」


 雷牙は軽い火傷を負いながらも立っていた。 その反対側で、全ての力を使い果たした舞夜は膝から崩れ落ちた。


 雷牙はなぜ生きているのか? 答えは簡単だ。 雷牙は火球を食らう寸前、爪に魔力を流し、爆炎を切り裂いたのだ。 だから雷牙の周辺だけ、床が残っているのだ。


「もう動けねぇのか。 まあいい。 急がねぇとな。 手遅れになる前に!」


 雷牙はその場で振り向き、崩れた外壁から飛び降りようとした。 だが、


「───!?」


 パリィン。 何か、硝子状のものが割れる音がした。 反射的に後ろを振り向くと、───力尽きたはずの舞夜が起き上がろうとしていた。


「あぁ、最高の気分やわぁ。 最初っからこうしてればよかったんやねぇ」


 舞夜の首筋には血管が浮き出て、その瞳は血走っている。 狂気の姿だ。 足元には、割れた薬のアンプルが転がっている。 どうみても、トリップ状態だ。


”””コイツもドーピングをキメてやがったな? しかも、コイツはリックの奴よりも強力な薬を使ってるな”””


 爺座主(ジーザス)! これほどに生命倫理を無視した存在があろうか? ギラルは兵士に薬を飲ませることで、死の恐怖を消し、殺意を増幅しているのだ。


 薬によって書き換えられた人格は、最早もとの人格とは別人だ。 おそらく、舞夜も元々は人並みの心を持っていたのだろう。 だが今や、コイツはただの殺人鬼だ。


「───死ねぇ!」


 舞夜は薙刀を捨て、爪を振りかぶり、踊りかかる!


 ギン! ギギン! ガキンッ! 狂ったように攻撃を繰り返す舞夜に対し、最適な動きで攻撃をしのぐ雷牙。


 舞夜の攻撃は、強力だが精彩を欠いている。 魔力を薬で絞り出しているため、正常に躰を動かせていないのだ。


 ギギン!


「無駄だ。 心のこもらない、そんな拳で、俺の怒りを超えられるかぁ!」


 雷牙の爪が、舞夜の爪を弾いた。 動きを崩された舞夜の胴体ががら空きだ!


「アァアアア!」


 舞夜は出鱈目に爪を振り回し、雷牙を狙う。 だが、雷牙の方が迅い。


「───ハッ!」


 雷牙の心臓(ハートブレイク)撃ち(ショット)がクリーンヒット! その拳は甲冑を軽々と貫通し、胸骨を砕き、心臓を破裂させた。


「グハッ!」


 心臓破裂に伴う失血性ショックにより、舞夜は死亡した。


 力を失い、今度こそ動かなくなった舞夜を背に、雷牙は走り出した。


   ~~~   数時間前 レジスタンス拠点   ~~~


「今日はいやに森が静かだね……。 魔物の姿が見当たらない こりゃどうなってんだい?」


 レラは洞窟から外を眺めて呟いた。


 隣には副官のメア・ボルテージが立っている。 そして、その後ろには、レジスタンスの兵士たちが続く。


「レラ。 何もいないなら、チャンスよ。 今なら安全に移動できる」


「……そうさね。 ここにいてもしょうがない。 進軍を───ッ!?」


 言い終わる寸前、レラは何かに気付いたように目を細めた。


「総員伏せな! 砲撃が来るよ!」


 その言葉に兵士たちは動揺しつつも、従った。


 そして、レラの言葉からピッタリ一秒後、轟音と衝撃が洞窟を襲った。


 音が途切れ、視界が煙に包まれる。


「敵の魔術砲撃です!」


「被害状況知らせな!」


「軽微です! 緊急防護障壁が効いています!」


「よし! 前衛は下がりな。 魔法使いを前面に出して、反撃するよ!」


 レラの指示で、部隊は立て直し、反撃に移った。 咄嗟の事態にも冷静に対応できる、レラの判断力の高さがなせる技だ。


「砲兵部隊20名、準備よし!」


「よし、敵の座標が分かるまで待機してな!」

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