黒槍との闘い 決着
まず、塔の半分が消し飛んだ。
画面が白飛びするほどの光によって柱は溶け、大気は焼け、天まで届く炎が噴き出し、夜空が赤く照らされた。 その光は数秒間続き、そして嘘のように消えた。
光が収まった時、塔は半壊していた。 猛烈な魔力の前に外壁は崩れ、中の構造がむき出しになっている。
「……俺の勝ちだ」
雷牙は軽い火傷を負いながらも立っていた。 その反対側で、全ての力を使い果たした舞夜は膝から崩れ落ちた。
雷牙はなぜ生きているのか? 答えは簡単だ。 雷牙は火球を食らう寸前、爪に魔力を流し、爆炎を切り裂いたのだ。 だから雷牙の周辺だけ、床が残っているのだ。
「もう動けねぇのか。 まあいい。 急がねぇとな。 手遅れになる前に!」
雷牙はその場で振り向き、崩れた外壁から飛び降りようとした。 だが、
「───!?」
パリィン。 何か、硝子状のものが割れる音がした。 反射的に後ろを振り向くと、───力尽きたはずの舞夜が起き上がろうとしていた。
「あぁ、最高の気分やわぁ。 最初っからこうしてればよかったんやねぇ」
舞夜の首筋には血管が浮き出て、その瞳は血走っている。 狂気の姿だ。 足元には、割れた薬のアンプルが転がっている。 どうみても、トリップ状態だ。
”””コイツもドーピングをキメてやがったな? しかも、コイツはリックの奴よりも強力な薬を使ってるな”””
爺座主! これほどに生命倫理を無視した存在があろうか? ギラルは兵士に薬を飲ませることで、死の恐怖を消し、殺意を増幅しているのだ。
薬によって書き換えられた人格は、最早もとの人格とは別人だ。 おそらく、舞夜も元々は人並みの心を持っていたのだろう。 だが今や、コイツはただの殺人鬼だ。
「───死ねぇ!」
舞夜は薙刀を捨て、爪を振りかぶり、踊りかかる!
ギン! ギギン! ガキンッ! 狂ったように攻撃を繰り返す舞夜に対し、最適な動きで攻撃をしのぐ雷牙。
舞夜の攻撃は、強力だが精彩を欠いている。 魔力を薬で絞り出しているため、正常に躰を動かせていないのだ。
ギギン!
「無駄だ。 心のこもらない、そんな拳で、俺の怒りを超えられるかぁ!」
雷牙の爪が、舞夜の爪を弾いた。 動きを崩された舞夜の胴体ががら空きだ!
「アァアアア!」
舞夜は出鱈目に爪を振り回し、雷牙を狙う。 だが、雷牙の方が迅い。
「───ハッ!」
雷牙の心臓撃ちがクリーンヒット! その拳は甲冑を軽々と貫通し、胸骨を砕き、心臓を破裂させた。
「グハッ!」
心臓破裂に伴う失血性ショックにより、舞夜は死亡した。
力を失い、今度こそ動かなくなった舞夜を背に、雷牙は走り出した。
~~~ 数時間前 レジスタンス拠点 ~~~
「今日はいやに森が静かだね……。 魔物の姿が見当たらない こりゃどうなってんだい?」
レラは洞窟から外を眺めて呟いた。
隣には副官のメア・ボルテージが立っている。 そして、その後ろには、レジスタンスの兵士たちが続く。
「レラ。 何もいないなら、チャンスよ。 今なら安全に移動できる」
「……そうさね。 ここにいてもしょうがない。 進軍を───ッ!?」
言い終わる寸前、レラは何かに気付いたように目を細めた。
「総員伏せな! 砲撃が来るよ!」
その言葉に兵士たちは動揺しつつも、従った。
そして、レラの言葉からピッタリ一秒後、轟音と衝撃が洞窟を襲った。
音が途切れ、視界が煙に包まれる。
「敵の魔術砲撃です!」
「被害状況知らせな!」
「軽微です! 緊急防護障壁が効いています!」
「よし! 前衛は下がりな。 魔法使いを前面に出して、反撃するよ!」
レラの指示で、部隊は立て直し、反撃に移った。 咄嗟の事態にも冷静に対応できる、レラの判断力の高さがなせる技だ。
「砲兵部隊20名、準備よし!」
「よし、敵の座標が分かるまで待機してな!」




