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雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第一章 紅炎~Crimson flame~
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その3 雷牙VS山の主

「くそぉ! 総員、この場から退避せよ! 食われ───え?」



 バクン



 三本槍が一本目、蒼槍のジードは、山の主に食われて死んだ。


上半身が口の中へと消え、残された下半身は、ぼたぼたと血液を零していた。 だが、山の主が、二口目を所望したことで、なくなった。


「う、うわぁあああ!」

「逃げろぉ~!」

「何だよ、あの怪物はァ!」


 兵士たちは散りじりになって逃げていく。 だが、山の主が首を伸ばすと、一人ずつ食われていった。


 そんな中、レラは速やかに次の指示を下した。


「アンタたち! 一度散らばりな! 木の陰に隠れて、やり過ごすんだよ!」


”””なんて冷静で的確な判断なんだ! アタ……いや、違うけど”””


 雷牙は、難民に紛れる形で、テントの陰に隠れた。 その隣へとレラが滑り込んでくる。


「うまいな。 この状況下で、判断力が落ちないとは、大したもんだ」

「どうも。 えーと、アタシはレラ! レジスタンスのリーダさね。 アンタは?」


 レラは斧を構えつつ、雷牙を横目で見た。


「俺はライガ。 六道、雷牙だ。 偶然迷い込んでここに出くわした。 で、とっさの判断で貴様らの側につくことにした。 とりあえずそんなところだ!」


「GRRRRRR!!」


 山の主の咆哮! 雷牙が、簡潔に自己紹介をしている間に、ジードの部下が二人ほど食われた。


「……そうかい。 !?」


 KABOON! 爆音が響く。 山の主が火の玉を放ったのだ。 炎が直撃した兵士は、一瞬で黒焦げになって即死! ナムサン!


「アイツ、火も吐くのかよ! レラ! あの竜の情報を教えろ、今すぐ!」


 雷牙の2メートル横に火の玉が着弾! 爆炎があがる!


DL(ディザスターレベル)8───災害級の怪物、名前はファイアドラン! 突進と噛みつき、後、火炎ブレスを使う! それから、鱗は堅いから、関節か急所を狙わないとダメージにならないよ!」


「了解!」


 聞き終えると同時に、雷牙は走り出した。


「なにバカなことを! 死にたいのかい!?」


 だが、意味もなく走り出したのではない。 雷牙の視線の先には、先ほど助けた少女、ルチルの姿が映っていたのだ!


 奇跡的な幸運(・・)にも、褐色肌の少女は狙われてはいない。 その場から動かなかったことが、プラスに働いているのだ。


 ───だが、兵士を狙った後、山の主は少女を狙うことは間違いない!


 KABOON! 雷牙を見つけた山の主が、火の玉を放つ! だが、雷牙はイダテン級の機動力で回避!


「こなくそーッ!」


 雷牙の1メートル横で爆発! 炎が雷牙を赤く照らす!


「まにあ……えぇええッ!」

「え、きゃあ!?」


 スライディングで火の玉を掻い潜ると同時に、雷牙は少女を抱きかかえる。 少女は突然のことに躰を震わせた。


「えぇい。 ぼさっと座ってんじゃねぇよ!!」


「……ご、ゴメン、ナサイ」


 少女は怯えた声で謝罪する。 その声は雷牙を怖がっているようだったが、そんなことは気にしていられないのだ!


 KABOON! 雷牙のすぐ後ろに火の玉が着弾! だが───


「───Moenia terrae!」


 少女の声が響く。 同時に、雷牙のすぐ後ろに『土壁』が生まれ、二人を爆炎から守った。


”””なんだ今の? いや、考えるのは後だ!”””


 雷牙は少女を近くの木陰に隠すと、山の主と向き合った。


「GRRRRRR……」


「さぁて、此の躰なら、竜にも勝てる、のかねぇ」


「無茶だよアンタ! 人間が勝てる相手じゃない!」


 テントの陰から、レラが叫ぶが、雷牙の耳には届いていない。 雷牙の視界には、自分の拳と、山の主(ファイアドラン)の姿以外は映っていなかった。


「GUOOOO!!」


 山の主は、方向と同時に突進してきた。 ズラリと並んだ無数の牙が、雷牙を喰おうと迫る! コワイ!


 雷牙は左へと跳転回避! 雷牙の後ろで、テントが一つ爆散した!


「───今だ!」


 山の主が動きを止めた、その一瞬を狙って、雷牙は鉤爪を叩き込む。 竜の膝を裂き、鮮血が舞う!


 だが、傷が浅い! 相手が大きすぎて、有効打にならないのだ!


 KABOON! 山の主が火炎球を発射! 雷牙は素早くこれを回避!


”””デカすぎて攻撃が効かねぇ、か。 なら───ッ!?”””


 弱点を探ろうとして、気付いた。 雷牙の後ろには、ルチルを隠した木がある。 雷牙が次の攻撃を躱せば、ルチルはミンチか消し炭だ。


「───仕方ねぇ、かかってこんかいワレェ!」


「GYAOOOO!!」


 雷牙が腕を振って山の主を挑発すると、竜は火炎球を放ち、突進を仕掛けてくる!


「───こなくそぉおおお!」


 SLAAAASH! 雷牙の手刀が、火炎球を一刀両断! だが、竜の突進は止まらない。 その牙が雷牙を襲う!


 雷牙の左肩を、竜の牙が直撃! 鮮血が舞う!


 ああ~っと! 雷牙は竜の頭をガシッと掴んでいる───ッ! 竜の突進を受け止める気だ~~~!


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」


 ギャギャギャギャギャ!! 地面を抉りながら、渾身の力で竜を押しとどめる。 ルチルとの距離、残り5メートル!


 ダメだ、止められない! 残り3メートル!


 2メートル! 1メートル……0!


 ガツゥウン! 雷牙は、背後の木に激突した、が、突進を、止めていた。

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