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雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第四章 屍龍~Dragon zombie~
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黒槍との闘い2

「だが、押して参る!」


 四方から鎧武者が突っ込んでくる。 まずは一人目の刀を弾くと、貫き手で心臓を粉砕!


「グワーッ」


「ひとぉつ!」


   ~~~   赤駒   ~~~


 三分と経たずに、兵士は全滅した。


 最後の兵士が倒れると、雷牙は両手を合わせ、ザンシンした。


 火の玉の魔法を使い、連携で仕留めにかかってくる難敵だった。 確かに精鋭というのは嘘ではないようだ。 武術、剣術、魔法、どれもハイレベルな兵士だった。


 だが、雷牙の敵ではない。 それだけのことだ。


「おやまぁ。 自分で殺しといて、手は合わせはるんやねぇ」


「無論だ。 弔ってやらねば不憫だしな。 ───花くらい添えたいところだが、戦闘中だ。 これくらいしかしてやれん」


「そう。 それじゃ───」


 ヴン───ッ


 舞夜はいつの間にか目前に迫っていた。


 ガギャアン! 薙刀の打ち込みを弾くと、すさまじい衝撃が来た。


「───殺しあおか」


   ~~~   青駒   ~~~


 無数に並ぶ十字架に、日の光が降り注いでいた。 そこから数mの距離に、レジスタンスの兵士たちが並ぶ。


「雷牙が、そろそろ発ったころかねぇ。 アタシらもじき出発だ。 ……村を取り戻したら、故郷の土で眠れるかね」


 レラはそう言って十字架に触れた。 その顔には、固い決意が浮かんでいた。


「此処が正念場、決戦だ。 アンタらの無念、晴らしてやるさ。 ───ログ、アレックス、ジゲン、ダイヤ、ラピス、グリム、バル、ジャコブ、ルイス、ローリエ、グネバ。 待ってな、次にここに来る時には勝利を連れてくるさ」


 レラは後ろを振り向いた。 そこには、レラと同じ表情の兵士たちが並んでいた。


「全戦力が、アンタの号令を待ってる。 レラ、言ってちょうだい。 戦えって、アタシたちに、戦えって!」


 その場にいる全員の視線がレラに注がれる。 メアの視線、ルチルの視線、兵士たちの視線……。


「フーッ」


 レラは一度だけ深呼吸すると、ゆっくりとその眼を開けた。


「……総員、よく聞きな。 今ここで武器を取った者も、この洞窟で仲間を見送る者もいるだろう。

「それでも、我らは、我らの願いは一つだ ───我らの故郷を取り戻せ! この地に平和を取り戻せ!

「隣人に怯えることなく、宵の眠りを妨げられることなく、誰かを理不尽に失うことの無い、平和を!

「───自由、平和、安全、人権、どれも、生まれながらに持つべきで、しかし、戦わねば手に入らないものだ! 欲するなら、武器をとれ! アタシに続け!

「平和のために、戦え!!」


レラが拳を突き上げると、歓声が巻き起こった。 手に手に武器を持ち、振り上げ、彼らは進軍を開始した。


   ~~~   黒槍の女   ~~~


 ギィン!


 薙刀と爪が交錯し、幾度目かの金属音が響いた。


 これで何回目だ? 数えるのも馬鹿々々しい数だ。


「ハイヤ! ハイ!」


 流れるような薙刀の連撃! それを雷牙はタツジン級の動きで(さば)いていく!


「───夢幻、参式、()ノ型『焔虎』!」


 ボウッ。 薙刀の刃から炎が噴出し、橙色の輪を作り出す。 そして、舞夜はそれをファイアダンスの如く回転させ、撃ちこむ!


「クッ……!」


 残像が見えるほどの高速回転から繰り出される連撃。 それを前に、雷牙は防戦一方に持ち込まれていた。


 炎を弾いても、ダメージを受ける。 結果、雷牙は逃げ回るしかなくなったのだ。


 物理攻撃と魔法攻撃を同時に使う、雷牙にとっては未知の戦法だ。


 槍から火を噴くような大道芸とはレベルが違う。 刃と炎は完全に一体となって攻撃してくるのだ!


「チッ!」


 阪神だけ上体をずらして回避。 即座に距離を詰め、舞夜の腕を極める!


「く、ウゥウ!」


 舞夜が苦しそうな声を上げる。 見事に関節をクラッチしているため、動くことはできず、関節を責めるのを受けるしかないのだ!


「このまま、へし折ってやる!」


「グゥ……甘い、わなぁ」


「!?」


 突然、舞夜の躰が発火! 雷牙は思わず技を解き、炎を躱す!


 だが、これは舞夜の策だ! 舞夜はそのすきを逃さず、竜人特有の鉤爪を、雷牙の肩に叩き込む!


「グハッ!」


 鮮血が雷牙から舞った。 しかし雷牙は素早い動きで追撃をけん制。 そして速やかに距離を取った。


「チ、強ぇな」


 ヒュン─── 雷牙はジグザグな動きで接近。 フェイントを交えながら攻撃をかわし、一気に距離を詰める。 だが、


「夢幻弐式、(しち)の型『烈風陣』!」


 舞夜は全身から炎を吹き出し、雷牙の接近を阻止、同時に大振りな薙ぎ払いで追撃。 ワザマエ!


「この───!」


 雷牙は咄嗟にダッキング回避! 蹴りで刃を弾く!


 ガキィン! 薙刀が衝撃で手から離れる。 その瞬間にクナイが飛来!


「ハイヤッ!」


 舞夜はクナイを手刀でカット!


「忍の武器を使うとは、考えたもんやねぇ。 だけどそれは、素手じゃ勝てないと認めたようなもんやわぁ」


「……」


 雷牙は何も答えない。 これが挑発だと気づいているのだ 雷牙はこの程度で平静を乱したりはしない。


”””だが、奴の言うとおりだ。 やはり、出力を上げるしかないか?”””


 雷牙の体内魔力は、一定以上にならないように、意識してセーブしている。 だが、これを一気に放出すれば、戦闘力は大きく上がる。


 魔力のもとは精神だ。 当然、出力をあげれば、精神にかかる負荷も上がっていく。 最高出力ともなれば、途轍もない集中力が要求される。 失敗すれば、暴走状態だ。


 雷牙の迷いを見透かしたように、舞夜は畳みかける。


「山の主を狩った時の力は使わへんの? このままじゃあ、永久にウチには勝てへんよ?」


「……」


 雷牙は無言を貫くが、内心では、焦り始めていた。


”””そういえば、そろそろレジスタンスが到着してもいいころだ。 なのに、それらしい騒ぎが聞こえてこないのは、なぜだ?”””


「まさか……」


 舞夜はニタリと嗤った。


「憲兵の数、少なかったやろ? 本陣なのに、ほとんどおらへんもんなぁ。 じゃあ、残った戦力は何処に行ったんやろね?」


「……貴様!」


 雷牙は瞬時に、状況を察した。 同時に、自分がいま、絶望的な状況にあるという結論がでた。


「ほいじゃ、答え合わせ、しよか」

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