黒槍との闘い2
「だが、押して参る!」
四方から鎧武者が突っ込んでくる。 まずは一人目の刀を弾くと、貫き手で心臓を粉砕!
「グワーッ」
「ひとぉつ!」
~~~ 赤駒 ~~~
三分と経たずに、兵士は全滅した。
最後の兵士が倒れると、雷牙は両手を合わせ、ザンシンした。
火の玉の魔法を使い、連携で仕留めにかかってくる難敵だった。 確かに精鋭というのは嘘ではないようだ。 武術、剣術、魔法、どれもハイレベルな兵士だった。
だが、雷牙の敵ではない。 それだけのことだ。
「おやまぁ。 自分で殺しといて、手は合わせはるんやねぇ」
「無論だ。 弔ってやらねば不憫だしな。 ───花くらい添えたいところだが、戦闘中だ。 これくらいしかしてやれん」
「そう。 それじゃ───」
ヴン───ッ
舞夜はいつの間にか目前に迫っていた。
ガギャアン! 薙刀の打ち込みを弾くと、すさまじい衝撃が来た。
「───殺しあおか」
~~~ 青駒 ~~~
無数に並ぶ十字架に、日の光が降り注いでいた。 そこから数mの距離に、レジスタンスの兵士たちが並ぶ。
「雷牙が、そろそろ発ったころかねぇ。 アタシらもじき出発だ。 ……村を取り戻したら、故郷の土で眠れるかね」
レラはそう言って十字架に触れた。 その顔には、固い決意が浮かんでいた。
「此処が正念場、決戦だ。 アンタらの無念、晴らしてやるさ。 ───ログ、アレックス、ジゲン、ダイヤ、ラピス、グリム、バル、ジャコブ、ルイス、ローリエ、グネバ。 待ってな、次にここに来る時には勝利を連れてくるさ」
レラは後ろを振り向いた。 そこには、レラと同じ表情の兵士たちが並んでいた。
「全戦力が、アンタの号令を待ってる。 レラ、言ってちょうだい。 戦えって、アタシたちに、戦えって!」
その場にいる全員の視線がレラに注がれる。 メアの視線、ルチルの視線、兵士たちの視線……。
「フーッ」
レラは一度だけ深呼吸すると、ゆっくりとその眼を開けた。
「……総員、よく聞きな。 今ここで武器を取った者も、この洞窟で仲間を見送る者もいるだろう。
「それでも、我らは、我らの願いは一つだ ───我らの故郷を取り戻せ! この地に平和を取り戻せ!
「隣人に怯えることなく、宵の眠りを妨げられることなく、誰かを理不尽に失うことの無い、平和を!
「───自由、平和、安全、人権、どれも、生まれながらに持つべきで、しかし、戦わねば手に入らないものだ! 欲するなら、武器をとれ! アタシに続け!
「平和のために、戦え!!」
レラが拳を突き上げると、歓声が巻き起こった。 手に手に武器を持ち、振り上げ、彼らは進軍を開始した。
~~~ 黒槍の女 ~~~
ギィン!
薙刀と爪が交錯し、幾度目かの金属音が響いた。
これで何回目だ? 数えるのも馬鹿々々しい数だ。
「ハイヤ! ハイ!」
流れるような薙刀の連撃! それを雷牙はタツジン級の動きで捌いていく!
「───夢幻、参式、肆ノ型『焔虎』!」
ボウッ。 薙刀の刃から炎が噴出し、橙色の輪を作り出す。 そして、舞夜はそれをファイアダンスの如く回転させ、撃ちこむ!
「クッ……!」
残像が見えるほどの高速回転から繰り出される連撃。 それを前に、雷牙は防戦一方に持ち込まれていた。
炎を弾いても、ダメージを受ける。 結果、雷牙は逃げ回るしかなくなったのだ。
物理攻撃と魔法攻撃を同時に使う、雷牙にとっては未知の戦法だ。
槍から火を噴くような大道芸とはレベルが違う。 刃と炎は完全に一体となって攻撃してくるのだ!
「チッ!」
阪神だけ上体をずらして回避。 即座に距離を詰め、舞夜の腕を極める!
「く、ウゥウ!」
舞夜が苦しそうな声を上げる。 見事に関節をクラッチしているため、動くことはできず、関節を責めるのを受けるしかないのだ!
「このまま、へし折ってやる!」
「グゥ……甘い、わなぁ」
「!?」
突然、舞夜の躰が発火! 雷牙は思わず技を解き、炎を躱す!
だが、これは舞夜の策だ! 舞夜はそのすきを逃さず、竜人特有の鉤爪を、雷牙の肩に叩き込む!
「グハッ!」
鮮血が雷牙から舞った。 しかし雷牙は素早い動きで追撃をけん制。 そして速やかに距離を取った。
「チ、強ぇな」
ヒュン─── 雷牙はジグザグな動きで接近。 フェイントを交えながら攻撃をかわし、一気に距離を詰める。 だが、
「夢幻弐式、漆の型『烈風陣』!」
舞夜は全身から炎を吹き出し、雷牙の接近を阻止、同時に大振りな薙ぎ払いで追撃。 ワザマエ!
「この───!」
雷牙は咄嗟にダッキング回避! 蹴りで刃を弾く!
ガキィン! 薙刀が衝撃で手から離れる。 その瞬間にクナイが飛来!
「ハイヤッ!」
舞夜はクナイを手刀でカット!
「忍の武器を使うとは、考えたもんやねぇ。 だけどそれは、素手じゃ勝てないと認めたようなもんやわぁ」
「……」
雷牙は何も答えない。 これが挑発だと気づいているのだ 雷牙はこの程度で平静を乱したりはしない。
”””だが、奴の言うとおりだ。 やはり、出力を上げるしかないか?”””
雷牙の体内魔力は、一定以上にならないように、意識してセーブしている。 だが、これを一気に放出すれば、戦闘力は大きく上がる。
魔力のもとは精神だ。 当然、出力をあげれば、精神にかかる負荷も上がっていく。 最高出力ともなれば、途轍もない集中力が要求される。 失敗すれば、暴走状態だ。
雷牙の迷いを見透かしたように、舞夜は畳みかける。
「山の主を狩った時の力は使わへんの? このままじゃあ、永久にウチには勝てへんよ?」
「……」
雷牙は無言を貫くが、内心では、焦り始めていた。
”””そういえば、そろそろレジスタンスが到着してもいいころだ。 なのに、それらしい騒ぎが聞こえてこないのは、なぜだ?”””
「まさか……」
舞夜はニタリと嗤った。
「憲兵の数、少なかったやろ? 本陣なのに、ほとんどおらへんもんなぁ。 じゃあ、残った戦力は何処に行ったんやろね?」
「……貴様!」
雷牙は瞬時に、状況を察した。 同時に、自分がいま、絶望的な状況にあるという結論がでた。
「ほいじゃ、答え合わせ、しよか」




