レラの昔ばなし
「そうさね。 じゃあ、昔ばなし、しようか 大地の守護竜が倒れてからの話。 まぁ、あたしには記憶を見せる魔法なんてないから、口で語ることになるけど、勘弁さね」
~~~ 再演 ~~~
「ギラルの野郎がどんな絡繰りを使ったのかわからないけど、とにかくあいつはルチルの意識を奪った。 どうもアイツは、生き物の心を操る『毒』を使えるみたいだね。
「ルチルの意思から離れたガイアドランは、山へと帰っていった。 この洞窟は昔、ガイアドランが掘った巣穴なのさ。 元々この山に住んでいたんだろうね。
「で、村の方はもう、大騒ぎさね。 こんな田舎村に、ギルドも騎士団もない。 精々、自警団がいる程度でね。 アタシゃ当時は自警団にいたんだけどさ。 あの日は救助活動に走り回ったのさ。
「おかげでルチルを助けられたけど。 代償に、アイツの企みに気付けなかった。 ───ギラルが火事に紛れて、村の重役やなんかを殺してたこととか、ね。
「災害を止めたことで、アイツは村の英雄になった。 反対する奴はすでに殺されてたし、そのまま村を牛耳るようになるまで、そう時間はかからなかったね。
「そして奴が村を支配すると、どこからか兵士や手下を連れてきた。 そしてその戦力で、周辺の村まで侵略した。
「侵略を終えると、憲兵団を組織して、逆らう人間を粛正するようになった。 察しのいい連中は、そうなる前に速やかに山へと逃げた。 アタシも含めてね。
「……ルチルを抱えて、竜のねぐらまで歩いたのさ。 懐かしいねぇ。
「その後、村から逃げてきた難民を集めて、レジスタンスを作った。 まぁ、大した戦果は出せてないけどさ」
「元々難民の集まりで、戦力の無かったアタシらは、三本槍の一人だって倒せなかった。
「ああ、三本槍ってのは、憲兵団の中で、一番強いやつのことさね。 ギラルが持ってきた、最高戦力だ。
「それぞれが、DL7以上の怪物で、アタシでも、一対一で勝てるかって言われると、キツイさね。
「それを、アンタは次々に倒した。 村の人口を考えれば、あのレベルの猛者は、そうそう補充できないはずさ。
「つまり、三本槍は、今や一本やりとなったってわけさ」
~~~
レラは話し終えると、ため息を吐いた。
「なるほど、な。 二人倒して、残り一人、か。 ……で、最後の一人ってことは、一番強いんだろ? 勝算はあるのかよ」
その問いに対し、レラは首を振った。
「残念だけど、最後の一人は謎でね。 詳しいことは分かっていない。 分かってることと言えば、『黒槍』って呼ばれてること、常に村から離れないこと、そして、恐ろしく強いこと、だけさ」
「具体的な情報は無し、か。 だけど、逆を言えば、その一人が倒れれば、主戦力が消えるわけだ」
「その通りさね」と、レラは深く頷いた。
「……ラ、ライガが、ご飯を…作ってくれた…から、皆の士気が…あがってる…んだよ」
「アンタの強さは、底が知れない。 勝算は十分にあると思ってるよ」