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雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第一章 紅炎~Crimson flame~
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その2 雷牙VS蒼槍のジード

「ちょっと掴まってろ!」

「え、ひゃあ!?」


 雷牙は、ルチルを軽々と抱き上げた。 雷牙の筋力なら、少女の体重など、ないも同然だ。


「俺、っつーか男が怖いんだろうが、我慢してくれよ!」


 怯えたように目を閉じて動かない少女を抱えたまま、雷牙は走り出した。 少女は見捨てない。 願い事も無下にしない。 そのためには、これが最善の手だ!!


   ~~~   赤駒な   ~~~


「ハァ、ハァ……こっちで合ってんのか!?」


 ルチルは身を震わせたまま、何も話さない。 おそらく、内心はパニック状態なのだ。


「……! あれか!!」


 雷牙のスゴイ級の視力が、戦いの現場を発見した。 同時に、血の匂いがすることにも気付いた。


 視線の先では、難民キャンプのような場所で、略奪が行われていた。


「非国民どもが。 逃げられると思ったか? ───殺せ」

「た、助けてくれぇ!」

「ハハハハハハ! 護衛もろくにいねぇし、殺し放題だなこりゃ!」

「だ、誰か! きゃあ!」

「女は残しておけよ。 後でお楽しみがあるからなぁ!」

「アイエェエエ~~!」


 雷牙は瞬時に状況を把握した。


”””襲撃してる側は、装備が整ってる。 どこかの正規兵だな。 殺されてるのは、難民、か? キャンプが簡易的だ。 おそらく、どこかから逃げようとして、軍に見つかった、ってところか……”””


「……巫山戯(ふざけ)やがって」


 雷牙は、牙をむいて唸った。 その視線の先で、一人の女騎士が戦っていた。




「ゼェ、ゼェ……くそぉ! 数が多すぎる!」


 捻じれ角の竜人の戦士だ。 難民を襲う兵士たちを食い止めようとしているが、多勢に無勢の状態だ。 すでに体力を消耗し、肩で息をしている。


「諦めろ。 レラ、いや、元隊長」


「誰が諦めるもんかい!」


「無駄だ。 この戦力差ではな! そして、お前も俺の首級(てがら)になれ。 この三本槍が一本目、蒼槍のジードのな!」


 ジードと名乗った男が、レラと呼ばれた女騎士に槍を向ける。 レラは大斧を構えるが、消耗が激しく、その動きは精彩を欠く。


「消えろ、非国民め!」


 ジードが槍を振るうと、蒼炎が放たれた。 炎属性の魔術だ! 戦闘中に隙を見せず魔術を起動させるのは、実際スゴイ級の高等技術! 


「このぉお!」


 レラは斧で炎を掃う。 だが、そこへ兵士が二人突撃してくる!


 ギィイン! レラは咄嗟の動きで兵士の剣を弾き、斧を叩き込む、 だが、二人目の攻撃が肩を抉る!


「グゥ! ここで、負けるわけには……!」


 レラは気力を振り絞って斧を持ち上げるが、このままでは勝ち目はない! ナムサン! 救いはないのか?


 いや、上を見よ! 高々と跳躍し、戦場のど真ん中に着地しようとする雷牙の姿を!


「ウォオオオオオ!」


 雷牙は咆哮と同時に着地した。 着地の瞬間に、足元の兵士を一人踏みつぶした。


 その音に、戦場の誰もが動きを止め、雷牙の方を向いた。


手前(てめえ)ら……女子供に手を出したな? ───ざっけんなオラァ!」


 それは、地獄の底のから響くような(スラング)だった。 あまりの殺気に兵士の数人が気圧されて失神! SUGOIKOWAI!


「お前も、こいつらの仲間か? 一人増えたくらいで、何ができる~!」

「───死にさらせコラァ!」


 切りかかってきた兵士を二人、目にもとまらぬ蹴りで瞬殺する。 ワザマエ!


「───フッ!」


 そのまま雷牙は重心を落とすと、走り出した。 まずは手近な兵士のもとへ。


「な、なんだぁ!?」


 難民に剣を向けていた兵士は、突然のことに動きを止め、そして、雷牙の手で頸椎を粉砕された。 ナムサン! 一撃で即死だ!


「グハァ!」

 雷牙はさらに加速! すれ違いざまに跳躍し、飛燕一文字蹴りで兵士を瞬殺!


「「「ギャア!」」」

 雷牙はさらに加速! ワンインチパンチを繰り出し、兵士を3人瞬殺!


 GYARIGYARIGYARI! 雷牙の飛び蹴りが、ジードの槍で防がれた。 凄まじい轟音と衝撃がジードを襲う!


「貴様、邪魔立てするかぁ!」


 ジードの攻撃! 目にもとまらぬ速さで槍を突き出す! この動きは、並の人間では到達できないほどの槍捌きだ! だが、


「───フッ!」


 雷牙は、その全てを、重心移動により紙一重で回避! その速度はイダテン級だ! スゴイ!


「貴様もレジスタンスだな? よくも私の部下を!」


 ジードの槍から蒼炎が放たれる! アブナイ! 雷牙は咄嗟に横方向へ回避!


「私の魔術を躱すとは、貴様、一体……?」

「いきなり炎とか出しとんじゃねぇコラァー!」


 雷牙は一気に距離を詰め、ストレートパンチを放つ! だがジードは寸前で回避! それを見た雷牙の眼が、一瞬細まる。


”””素人じゃねぇな。 隊長格か? とにかく、一筋縄じゃいかなさそうだな”””


 コワイ893スラングを言いながらも、雷牙の脳内はいたって冷静なのだ! 炎のような怒りと氷のような冷血さが共存する、不思議な精神状態だ!


 BAGOON! 雷牙の後ろで、兵士が数名吹き飛ぶ! 雷牙の乱入で、指揮が乱れたところを、レラが突いているのだ。


 肝心の隊長は雷牙の相手に精一杯で、指示など出せない状況。 これは部隊の連携を完璧に崩す妙手なのだ!


「た、隊長、指示を……グワア!」


「ど、どうすんだ? 援護した方がいいのか?」


「俺に聞くなよ。 グハッ!」


 指揮が崩れたことで、兵士たちは次々に反撃に遭い、倒れていく。


 対照的に、難民たちはレラの指示で、武器を使えるものが集まり、連携し、兵士たちを各個撃破している!! 難民たち改め、レジスタンスの反撃だ!


「クッ……作戦を滅茶苦茶にしおって! 一度退くぞ! 総員、後退しろ!」


 ジードは雷牙から離れ、撤退指示を出す。 だが、その時、轟音と暴風が難民キャンプを襲った。


 ゴウゴウという羽ばたきの音が広がり、誰もが頭上に目を奪われた。 そこには、



 ゴウランガ! 視界を覆うほどに巨大な竜の姿!



「バカな! 山の主だと!?」


「なんてデカさだい! 血の匂いを嗅ぎつけてきたのかい!」


「に、逃げろ、逃げろぉ!」


 この竜の名は、ファイアドラン。 ここいらの森の主であり、空の王者だ。 全長15メートルの巨体に、全身を包む真紅の鱗、そして、息をするたびに口元から炎があふれ出す! コワイ!


「くそぉ! 総員、この場から退避せよ! 食われ───え?」



 バクン



 三本槍が一本目、蒼槍のジードは、山の主に食われて死んだ。

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