マルタ
ギラルは使用人の一人に鎖を手渡した。 そして、ヒスイは使用人に連れられ、扉の奥へと姿を消した。
「お、お姉ちゃん!」
手を伸ばしても、届かなくて、虚ろなヒスイの表情だけが、網膜に焼き付いていた。
三日経った。
その日、ルチルは手術室のベッドに拘束され、実験台として扱われていた。
使用人が、何かの薬を入れた注射器を持って近づいてくる。 そのたびに、ルチルの心を、恐怖が満たした。
逃れようとしても、頑強な拘束具はびくともしない。 そして、使用人は注射器の針をルチルに向けた。
金属がルチルの皮膚を突き破り、異物を注入していく。
───ドクン
「え……あ、ひ……が、ギャアアアアアアアアァアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアァアアアアアッ!」
数分で効果が表れ、激痛がルチルの全身を襲う。
「###########################!!!!!!」
痛い。 激痛い! 動かせない手足が、藻掻こうと暴れる。 だが、激痛は炎のように容赦なく、ルチルの精神を削っていった。
気絶することも叶わず、痛みはルチルを苛み続ける。
煩いと感じたのか、使用人の一人が、ルチルの口を拘束した。
「
!!」
くぐもった悲鳴に代わる。
「心拍数、上昇」
「魔力量───安定。 安定率3%上昇」
「竜素発生率、目標の5%に到達」
ルチルの悲鳴をよそに、使用人たちは淡々と、ルチルの躰につけられた計測器の数値を測っている。 当然、その間も激痛は続く。
「 !!」
悲鳴、悲鳴、悲鳴。 喉が裂けるほどの悲鳴は、拘束具に遮られて、誰にも届かなかった。
全身を針で刺されるような痛み。 炎が舐めるような痛み。 硫酸が血管を満たしたような痛み。 細胞が一つずつ潰されていくような痛み。
視界が赤く染まる。 眼球の血管のどれかが、切れたのだ。
「竜素精製率、6%で安定」
「よし、停止しろ」
「了解。 ジェネレータ停止。 システム、終了します」
ブゥン───
激痛の中で、何かが止まった音がした。 同時に、ルチルの意識も、途絶え始めた。
朦朧とする意識の中で、ギラルの不気味な笑みが、視界に映っていた。
「 」
くぐもった声。 それはきっと、カミサマ、と言っていた。
その言葉を紡いだ数秒後、ルチルの意識は完全に途絶えた




