決着、そして帰還または絶叫
返す手で突きを放つ! これもガード! だが地形が悪い! 雷牙はすでに懐に飛び込んでいた。
拳を固く握り───斜め上方向へと拳を放つ! これは古代ボクシング、ヘビー級チャンプの必殺技、ガゼルパンチだ!
顎から首、頭へと強烈な衝撃が突き抜け、リックは膝から崩れ落ちた。
「勝負あったな……ッ!?」
ゾワリとした感覚が、雷牙の背筋を伝った。 嫌な感覚だ。 何かおかしい。
「!」
ピクリと、リックの指が動いた。
「まだ、だ……! まだ、終わらんよ……!!」
ふらつきながらリックが起き上がってくる。 まるでゾンビーのようだ!
しかも、おお、見よ! リックの顔には血管がいくつも浮き上がっている。 明らかにまともな状態ではない。 一体何が起きているのか?
「テメェ……ドーピングしてやがんな?」
雷牙の脳内で、ピースがつながっていく。
「ようやく違和感に気付けたぜ。 お前らは、仲間の死に無頓着すぎる。 兵士が死んで、顔色一つ変えないってのは異常だ。 お前ら、クスリで凶暴性を上げてんだな……!」
「ヒ! ヒヒヒ! ヒヒヒヒヒヒヒ! よぉーくわかったわねぇ」
リックは口元を歪めて嗤った。 薬のせいか、傷の痛みがないようだ。
「そうよ。 アタイらは、より強靭に! より凶悪に! なるように! 『強化』されてるのよぉ!」
「……下種が」
「だから、痛みなんて感じな───ゲポッ───?」
「五月蠅い。 死人が囀るな!」
雷牙の抜き手が、リックの心臓を正確に貫いていた。
「俺の前でヤクに頼るたぁ、良い度胸じゃねぇか? 待ってやがれ、一匹残らず殲滅してやる」
雲間から月光が差し込み、雷牙の顔を照らした。 その姿は、返り血で赤く染まっていた
~~~ なんか書いとけ ~~~
「チ、中々に不愉快な気分だ。 もう、寝るか」
すっかり夜が更けたころ、雷牙は拠点の洞窟に戻ってきていた。 右手にはリックの死体を引きずっている。 後で装備を奪うのと、もう一つ。 使っていたクスリを調べるためだ。
レラの方も、迎撃に成功したらしい。 逃げようとしていた忍は鏖したから、情報も漏れていないはずだ。
洞窟の入り口付近に死体を置き、奥へ進もうとしたとき、人の気配に気づいた。
”””誰だ!? まさか、誰か討ち漏らして突破されたのか!?”””
だとしたら危険だ。 速やかに仕留めなくては!
気配は岩の陰にいる。 この間合いなら、一気に殺すべし!
雷牙は一直線に距離を詰め、気配に向かってその鉤爪を───打ち込もうとして、動きを止めた。
相手の首まで、あと皮一枚分の距離だ。
「ヒッ───」
人影が小さく悲鳴を上げる。 そして一歩後ずさると、月光がその姿を照らした。
「なんだ。 起きてたのか……」
人影はルチルだった。 突然のことに、ルチルは呆然として、口をパクパクとさせている。
「あ……ら……ライ、ガ……」
「すまん。 驚かせた。 ───待ってたのか?」
「う、うん。 その、心配…で……。 そ、それと…おかえり…なさい」
いつもより更に辿々しい口調だ。
「あぁ、ただいま」
ルチルを安心させるために、雷牙は爪を引き、膝をついた。 身長差のため、これでようやく視線が合う。
見上げるような圧迫感が消え、ルチルは雷牙と視線を交わした。 相変わらずの無表情だが、おびえた様子はなくなっていた。
「ずっと、待ってたのか? 今までずっと?」
「う、うん。 ライガ、部屋に…いなかった…から」
ルチルは寂しそうに俯き、雷牙の胸に手を触れた。
「それで、さ、探した…けど…いなくって……」
「……そうか」
「……」
「……」
雷牙は無言でルチルの背に手をまわした。
「あ……」
ルチルも手をまわして、応えてくる。 そうして、体重を雷牙に預け───
「邯コ鮗励〒縺吶?───!!」