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雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第三章 獣肉~Beast meat~
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昼飯タイム・後編

「いよ~っす。 メシ、持ってきたぞ」


 病室と化した大広間のど真ん中に、大なべが置かれると、ドスンという音が響いた。


 その音に、ルチルがビクリと肩を震わせる。


「おや、持ってきてくれたのかい。 ご苦労様」


 レラは薬を調合する手を止め、音の方を振り向いた。 その目前に、アマナが食器を積み上げていく。


「とりあえずの病人食だ。 消化の良さ最優先だから、動ける奴は食堂で肉貰っとけよー」


 そう言いながら、雷牙はシチューをよそってルチルへと手渡した。 ルチルは、薬瓶を置いて、食器を受け取る。


「ライガ、が、作った…の…?」


「まーな。 即席だから上等なモンじゃねぇけどな。 アマナにも手伝ってもらったし」


 雷牙の手が、アマナの細い肩を叩く。


「何だいアンタ、料理人だったのかい」


「レラ、それはさっきもやったんだ。 自力で読み返しといてくれ」


「雷牙さんはすごいんですよ! 肉と塩を加えただけなのに、味が全然違うんです!」


 アマナが絶賛!


「メタ発言だねぇ」


 レラは苦笑いを浮かべた。


「さて、寝たきりの連中にも配ってやんねーとな」


「て、手伝お…う…か?」


 ルチルの小さな手が、雷牙に触れた。


「おう。 んじゃ、よそう方頼んだ。 俺が運ぶから」


「う、うん……」


 雷牙は、ルチルから食器を受け取ると、両手と頭にのせてシチューを運んだ。


「器用な真似するねぇ。 大道芸かい?」


「ノロノロしてっと冷めるからな。 兵は迅速を尊ぶんだぜ?」


 雷牙は牙を見せて笑った。


「ハイお待ちどう!」

「お待ちどう!」

「ハイ次!」


 全身を包帯で巻かれた者、片腕を無くした者、皮膚が変色した者。


 反応も様々で、感謝されたり無反応だったりした。 それを雷牙は楽しんでいた。


「お待ちどう……って、お前はッ! ……。 ……。 誰だっけ?」


「アンタ、中々失礼ね。 私はアンタのせいで手足を粉砕されて、ここにいるのに」


 手足にギプスを付けたままで女は答えた。 その声は、強がっているのか、雷牙を恐れているのか、僅かに震えている。


「あぁ、思い出した。 この前の奴か。 ……名前出てこないけど」


「アンタ、中々失礼ね」


「ライガ。 こ、この人…確か、メアって言ったと…思う…」


「あー、そんな名前だっけ」


 ルチルの指摘に、雷牙は膝を打った。 それを見たメアは、驚いたように息をのんだ。


「アンタ、何普通に話してんのよ……。 その娘が何者か、知らないの?」


「……?」


 雷牙の視線がルチルを向くと、ルチルは気まずそうに視線を逸らした。


「コイツに、何かあんのか?」


「さあね。 『バケモノ』は『バケモノ同士』、乳繰り合ってればいいんじゃないの」


 ルチル本人に聞くのは、どこか(はばか)られた。 そう言えば、さっきまで隣にいたはずのアマナは、ルチルが来ると雲隠れしてしまっている。


 意識すると、ルチルに近づくのは雷牙とレラの二人だけだ。 それ以外は、不自然に距離を開けている。


「ふーむ? いや、考えても仕方ねぇ。 残り配るぞ。 手伝ってくれ」


「あ……う、うん」


 ルチルは弱弱しく頷いた。 その表情には、『恐れ』が浮かんでいた。

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