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雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第二章 百拳~Hundred knuckle~
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その11 暴走する牙

「ハッ、誰が、ゼェ……、認める、かよ……!」


「そう」


 メアは無表情に頷き、次の瞬間、雷牙へと前蹴りを繰り出した!


 ボグッ!


「グハッ!」


 顎へと直撃! だが、雷牙に反撃する体力は残されていない!


 二発目、三発目! メアの身体能力も、常人を超えるレベルだ。 そして、何発目かの蹴りが左肩にヒット!


「グアァア!」


 激痛が襲う! もはや打つ手はないのか? このままでは傷口が開き、雷牙は失血死してしまうぞ!


「レラに気に入られてるからって、いい気になってるからよ。 さぁ、くたばりなさい!」


 メアが大振りな一撃の準備に入る。 見るものが見れば、それは古代暗黒格闘術ムエタイの膝蹴りの動きだと分かるだろう。


 踏み込み入りの蹴りが入れば、いくら雷牙といえど、無事では済むまい。 どうする、雷牙?


 ヒュン───無慈悲な蹴りが雷牙へと吸い込まれ、ピタリと停止した。


「!?」


 メアは反射的に足を引こうとするが、まるで万力で挟まれたかのように動かない。 それもそのはず、雷牙の左腕が、脚を捕らえているからだ。


 雷牙の体力が回復し、ガードしたのか? 否、雷牙は意識すら手放している。


 その証拠に、虚ろな目をしている。


 では、雷牙はいかにして動いているのか? 答えは簡単、『怒り』だ。


 怒りが、雷牙のうちに眠る本能を呼び覚ましたのだ。 読者諸君は思い返していただきたい。 雷牙は気合だけで山の主の突進を止めた。


 だがちょっと待て。 人間と竜では体格差がありすぎる。 竜の突進を止めるために必要な力は、およそ5トン。 いくら雷牙と言えど、無茶な数値だ。


 だが、雷牙はやってのけた。 自らの内に眠る力を呼び起こし、竜を狩り取った。 そして、今の雷牙は、その時の力を発揮しているのだ!


 メキメキ。 雷牙の握力が、メアの脚を攻め立てる。


「は、話しなさい!」


 メアは足を動かそうとするが、まったく意味がない。 そして、雷牙が立ち上がったことで足を引っ張られ、無様に転倒した。


「キャッ」


 足を掴まれているせいで、受け身も取れずにダウン。 突然のことに、周囲の兵士たちも動けずにいる!


「あ、アンタたち、助けな───」


 ボキン


「GYAAAAA!」


 まるで小枝のように、メアの脚が骨から折れ、悲鳴が上がる。 激痛にのたうち回るメアを嘲るかのように見下す雷牙の姿!


 その(かお)には、邪悪な笑みが浮かんでいた。 コワイ!


 ニタリ。 雷牙の異様な雰囲気に気圧され、兵士たちは距離を取る。


 そして、そのことを、兵士たちは後悔した。 なぜか? 雷牙は兵士にも容赦しなかったからだ。


 雷牙の右腕が振られ、兵士の一人が場外まで吹き飛んだ。 ALASH! 辛うじて生きているが、あと数ミリの差で兵士は死んでいた!


 雷牙はそのままの勢いで、残る兵士を瞬殺! もはや描写が馬鹿々々しいほどの動きで、兵士を全滅させたのだ。


 そして、雷牙はゆっくりとメアに向き直り、その首を掴んで、片手で持ち上げた───ッ!


「カッ……ハ……」


 片手でのネックハンギングツリーに、苦しそうにメアが喘ぐ。 だが、雷牙は動かない。 ミシミシと指が食い込み、危険な状態!


 メアの視界が、だんだんと暗くなっていく。 その中で、邪悪な笑みを浮かべる雷牙の姿だけが、網膜に焼き付いて───


「そこまで!」


 遠くから声が響いて、メアの躰が落ちた。


 声の主は、レラだった。 騒ぎを聞き、駆けつけてきたのだ。


「……」


 その姿を見た途端、雷牙の瞳から殺意と邪悪さが消えていく。 まるで、何もなかったかのようにだ。


「バケ……モノ……」


 その言葉を最後に、メアの意識は奈落へと落ちた。


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