表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷名の牙R ~獣の拳と竜の巫女~  作者: ファイバード
第二章 百拳~Hundred knuckle~
10/43

その9 嫉妬とか敵対の物語

「普段は男には絶対近寄らないんだけどねぇ。 今のところ数少ない例外さね。 惚れられたかね?」


「れ、レラ……!」


 レラが茶化すと、ルチルはわずかに表情を変えた。 恐れと怯え以外の感情が乏しい少女だが、たまには表情筋が仕事をするらしい。


「……さて、と。 アンタはこの世界の住人じゃないってことだ」


「信じるのか?」


「まぁね。 ただ、今の今まで神話の中の世界だと思ってただけに、少し驚いちゃいるけども」


 レラが遠い眼をした。


「ガキの頃に聞いた昔ばなしさね

「今から300年も昔、どこか遠い世界からやってきた英勇(・・)が、世界を救った、なんて話さ。

「この国に住む人間なら、誰でも知ってる御伽噺(おとぎばなし)さ」


「なるほど。 前例がないわけじゃないのか。 真偽のほどはともかく」


「あぁ。 それに、魔術や七種族について、知らないのは今どき、よほどの原始的な田舎民くらいなもんでさ。 それに、竜殺し級の実力者が近くにいたら有名になってるだろうし、それ以上遠くから来るには、荷物無しはおかしい」


「俺は、ド田舎の喧嘩屋ってところか。 箱入りのお嬢様には需要があるだろうが、世間知らずの野郎なんざ、需要がねぇな」


 雷牙は自虐的に笑った。


「そ、そんなこと…ないよ…。 ライガは、強い、から……」


 ルチルがフォローを入れるが、雷牙は首を振った。


「いんや。 俺は強くはねぇよ。 前にも一度、女一人さえ助けられなかったことがあるしな」


「……?」


「あぁいや、昔の話だ。 ……まぁ、今回も助けられなかった難民が大勢いる。 今この瞬間にも増えてるんだろ?」


 雷牙は天井を仰いで、頭を抱えた。 その表情には、諦めが浮かんでいた。


「なぁに言ってんだい!

「若い男がそんなことでどうするよ!!」


 レラは身を乗り出すと、雷牙の眼前に爪を突き出した。


「いいかい? 強いだの弱いだのは大事なことじゃない。 やるかやらないかが大事なんさ」


「……」


「例えば、アンタは、ルチルを守るためにやった。 自ら動いた。 その結果、ルチルやアタシやレジスタンスの仲間の命を救った。 これは英勇と呼ばれるべき偉業さね」


「……あぁ、そう、だな。 すまん、ちょっと落ち込んでた」


「いいさ。 それに、アンタくらいの実力があれば、そうそう死なない。 だから戦いな。 自由ってのは、戦わないと手に入らないんだから」


   ~~~   メガネの汚れは気にする派なんだ   ~~~


「……で、いつまで隠れてんだ? 出てこんかいワレェ」


 レラの部屋を出て、少し歩いたところで雷牙は立ち止まり、柱の影を睨みつけた。


 そこには一見誰もいない。 否! 雷牙のニンジャ感知力を以てすれば、この程度の隠密を見破ることなど、アサメシオイシイだ!(←いや、どんな諺だよ)


「……よく見破ったわね。 その位置からは見えないはずなのに」


 そう言って、誰もいないはずの空間から人影が現れた。


 淡い赤毛の女だ。 細い(からだ)に、若い顔立ち。 そして、腰に差した細剣(レイピア)が、闘うものであると語っていた。


「で、何の用だ? その気配から察するに、お友達になりたいってわけじゃなさそうだが」


「愚問ね」


 その女は不敵に笑った。 何かを企んでいる笑みだ! スゴイアブナイだ!


「新人が入って来たって言うから、この私、メア・ボルテージが、レジスタンスの厳しさを教えてあげようと思って」


「あぁ、そういうのいらねぇよ。 ───正直に言わんかい。 気に入らねぇから、叩きのめしたいんじゃけぇの。 最初からそう言えばええに」


 雷牙の口調が、訛る。 怒りが、本性を表に出させているのだ。


 だが、この挑発はモーストデンジャラス(危険度大きい)だ! まさに一触即発☆禅ガ〇ルだ!


 あまり隠せていないが、気にしないでいただきたいッ!


「へぇ。 いい度胸じゃない。 アンタたち、出てきなさい」


「「「ハイ、ヨロコンデー!」」」


 周辺からいくつもの声! 気が付けば、雷牙は屈強な男たちに囲まれていた。


「もう逃げられない。 フフ、私についてきなさい? 後悔させてあげる!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ