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復讐の果て  作者: 雲母稔
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第5話「集う英雄」

 これは良い小手調べにもなる。

勇者と呼ばれるからには、それぐらいの実力は誇ってもらわないと困るのだ。国の英雄と呼ばれるに相応しい実力を。


だがもし、今までのように失望するような有り様だった場合は、この国を破滅にまで追い込むのも良い。勇者がその程度なら、他の人物の実力もたかが知れているからだ。ちっぽけな国になど、興味はない。


クルミは心の中で邪悪な想いを抱く。


自分勝手な発想。それは重々承知していたことだ。そもそも、魔物とはそういう生き物。


そう生きることしかできない。それが魔物の哀れさだろうか。


そんな考えを抱いていた頃、クルミの視界にある建物が目に差さる。ビルのような構造をしており、他の建物と比べてとても目立ちやすい。


「あれ何だろうね。中で何かしてるのかな?」


「あの大きい建物か? なんだか人が多く集まってそうな場所だな」


 レイの言う通り、中からは複数のガヤガヤとした話し声が聞こえている。人の気配も多い。


「……入るの?」


 ショートがいつもより低いテンションで問いかける。笑顔もない。入りたくなさそうにしているが、もっと情報を集めるためには必要だ。


「嫌ならここで待っていてもいいよ」


「え!? それはもっと嫌だ!」


「じゃあおいで」


 少しではあるがテンションが戻ったようだ。それを見たクルミは、どこか安心していくのを感じ取り、建物の中に入っていく。


そこは思ってた通り、人がたくさん集まっていた場所だ。みんなそれぞれ、剣や弓などを所持しており、何らかの戦闘能力を有しているのは一目で分かる。

向こう側にはカウンターがあり、そこには一人の女性が立っている。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご要件でしょうか?」


 カウンターの方に近付くと、人当たりの良く愛想も良い女性が話しかけてくる。本日と言っても初めてである。


これもいろいろと聞ける良いチャンスかもしれない。


「あの、私たちここに来るのは初めてなんですけど」


 クルミは慣れない敬語を使う。

これは人間社会では常識となっていることだ。初対面の人や目上の人に対してタメ口は失礼に値する。久しぶりに敬語を使ったため微妙に違和感も感じるが。


「そうでしたか、失礼致しました。では、こちりの施設の説明をさせていただきます。ここは冒険者組合、いわゆるギルドでございます。こちらではC級からS級までの冒険者が加入しており、それぞれの階級に見合った依頼を請け負ってもらっています」


 ギルド……。聞き慣れない言葉だが、要するに我こそはと名乗り出た実力者たちが加入する場というわけだ。クルミはふと辺りを見渡すと、張り紙が張らさっているのを発見する。あれが依頼なのだろう。紙の右上には、それぞれのアルファベットが記されている。


その中に、他よりも目立ち、一つ気になる張り紙があった。


「……あれは」


「それはどの階級よりも難易度の高い、Z級になります。最近になって、絶大な力を持った怪物がこの街に襲撃してきたのはご存知でしょうか? その初日に、何人もの冒険者がやられてしまったのです」


それは間違いなく、クルミたちのことを指して言っていた。クルミは、我々も有名になったものだなと、国の悲劇を楽観的に見る。


「そうですか。未だ野放しにされているということですね。……他に、Z級はないんですか?」


「現在はこちらだけになります。Z級と判定されるほどの事件ですので、数年間に一回発生するかどうかの難易度となっております」


「……この事件の解決はどうなりそうですか」


「何しろ、S級もやられてしまっているレベルですので。ですが、この依頼を勇者様が引き受けてくださるという話が出ております」


 少くとも勇者はS級かそれ以上の実力ということが、その発言から読み取れる。信頼度もかなり高いように見えた。


「……強いんですか?」


 それとなく探りを入れる。


「それはもう、とびきりの強さでございます。まさに国の大英雄、今の今まで勇者様が倒された経歴は一度もありません」


 何とも期待させるような言いようだ。ますます興味がわいてきたが、これまでの経験上、期待をしすぎるのはよくないとクルミは自分を戒める。ガッカリするのが嫌だからだ。


「その勇者様というのは、いつごろ……?」


「ただいまヴァリキリー王国からこちらに向かってきているとの情報が出ています。もうじき到着するのではないでしょうか。他に何か聞きたいことはございますか?」


 怪しむこともなく素直に聞かれたことを答えてくれる。またも聞くチャンスをくれるみたいだ。だが、現時点ではそれぐらいで十分だ。


「いえ、特には。ありがとうございました」


 そう言ってクルミたちはその建物の中を出ると、大きく溜め息をする。


「……なんか疲れた」


「クルミちゃん、意外と敬語話せるんだね」


「人間に敬語を使うのは違和感あったけど、これも情報収集のためだよ。実際、面白そうな情報を聞けたからね。とりあえず、今日は帰ってもいいかな」


「ギランたちはどうするの?」


「そのうち私たちがいないとなれば勝手に帰ってくるよ」


 クルミたちはアジトの方向にのんびりと会話を交えながら進む。転移の魔法ならすぐに帰れるが、急ぐことはない。


そして今回、最も有力だと思われた情報は、やはり勇者の存在である。


倒されたことがない。


つまり、もし勇者を倒してしまえば、少くとも四ヶ国にクルミを倒せる者はいないということだ。


そうなればやはり、クルミを倒せる可能性を秘めているのはギランたち四人となる。他にも王国はあるが、大した期待も抱けない。


「勇者……がっかりさせないでほしいよね」


 その言葉を最後に、ブレーブタウンを去る。クルミはわずかな期待に胸を膨らませ、同時に感じ取る。


私はすっかり、悪に染まっていると。


もはや引き返しはしない。このまま突き進む。

心の中でそう誓うのだった。



その日の夜、とある場所で英雄たちが帰還していた。


ーーエッジタウン

そこは国王自らが住まう最大級の都市。城と多くの建物、教会、そして軍隊学校と呼ばれている施設が存在している。


軍隊学校とは、国王を守護しようとする志を持つ者が多く集まっている場所だ。国王が住んでるだけあって、面積はアーネスト王国の中でも一番である。


そして今宵、五人の人物が城に向かっていた。


「ここに来たのも、久しぶりって感じだなー」


 爽やかな男の声が響く。他の人物が何らかの武器と思わしき物を所持しているのに対し、こちらの男は何も持っている様子がない。その表情から読み取れる情報は、活発な青年だということ。


加えて動きやすそうな服装で統一されていた。


「あれから1ヶ月ぐらいだっけ? ずいぶん経ったものよね」


 こちらは背中に弓をたずさえた女性だ。肌の露出がほとんどなく、かなりの重装備。

運動したりするのには不向きな格好だ。


「だが、まだそこでの任務が終わっていないというのに。

くそ、あいつらめ……」


 次に飛び込んできた声は、他の者よりも固めの口調をしたやや強面の男だ。身体を鋼鉄の鎧で纏い、防御面を重視とした格好だ。


背中に何らかの物体を携えているが、剣など相手を傷付けられそうな武器には見えない。


「そう言っても仕方ないじゃない。こっちも緊急事態みたいなんだし」


 今度は再び女性の声だ。こちらの服装はとても分かりやすいもので統一されていた。帽子を被っており、杖を身に付けている。さらにミニスカートがその者の可憐なイメージを思わせる。


何から何まで、一般人が連想するような魔法使いの服装で統一されていた。


「国を守るのが俺たちの仕事だ。国王陛下自ら召集をかけるとは、余程のことなのだろうな」


 最後に、背中に剣を携え、凛々しい表情をした人物が口を開く。他の人物よりも一歩前に立ち、リーダー的ポジションに位置している。


この男をリーダーとして移動しているその先には、城門らしきものが見えてくる。


そこには二人の兵士が立っていた。


「シャルド様、それに皆様方、ようこそおいでくださいました」


 丁寧な口調で、二人の兵士は頭を下げる。


「ああ。緊急事態らしいからな」


「はい。国王様が、三階の会議室にてお待ちになっておられます」








 



 



 

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