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復讐の果て  作者: 雲母稔
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第24話「魔女の怒り」

 カナタの傷が癒えていく。

激痛を我慢していた顔から一変、少しずつ安らぎを取り戻す。


「ありがとう……ございます」


「すみませんでした」


「え……?」


 カナタに謝罪をするマリア。カナタはその言葉の意味がよく分かっていないようであった。


「人間だからと言って、敵の力量を見誤っていました。あなたにあれほどの傷を負わせたのは全て私の責任です。あれより上位の強化魔法を持っていたのに、それを使わなかったのですから」


「ち、違います!」


 しかし、カナタはマリアの言葉を力強く否定する。


「僕も……この力に溺れて油断していたんです! 相手を苦しませることを前提に、殺せる相手も殺そうとはしなかった……! それが結果として、追い詰められる結果に!」


 カナタは自らの過ちを指摘する。それは間違ってはいない。

それでもやはり、フェガーという男が存在していた時点で勝率も変わってくる。


人間に対して舐めてかかるのはよくないと実感させられる結果となったのだ。


「あなたが気に病む必要はありません。あとは私個人としてこの者たちを調べます。あなたはしばらく休んで、敵の出方を見ていてください」


 最後にはカナタに復讐を果たさせる。

それは変わらないが、一つだけ、ここにきて更なる可能性を見出だした。


フェガーたちが何者なのか、問いただす必要もある。


「話は終わったか? で、お前はいったい何なんだ?」


「それは是非とも私も聞きたいですね。あなた方が何者なのか」


 両者の間に沈黙が訪れる。

数秒の無言を貫き、フェガーが口を開く。


「俺たちはあるお方の使者だよ。今よりも強力な力を得るためによ、いろんな奴らのエネルギーを吸収して回ってるってわけだ。説明はこれで十分か?」


「あるお方とは?」


「グローリー王国の王様だよ。知らねぇのか? すっげぇつええ王だって評判なんだぜ」


 戦える上、強い王というのは珍しい。どれぐらい強いのかも気になるところだが、フェガーよりは最低限強いということになる。


これはクルミに対しての良い土産話になるだろうが、あまり乗り気にはなれない。クルミの興味が別の者に行くのが嫌なのだ。障害は取り除きたい。


「なるほど。ずいぶん素直に答えてくれましたね」


「そりゃあ、今からお前も死ぬんだからな。もし使えそうだったらお前もあの方の前に献上してやるよ」


「それは無理ですね。あなた方に未来は訪れないからです」


 マリアは心の中で嗤う。

最強の魔女である自分を殺そうと言うのだから。


この世の中、魔法の数は数えきれない。

ほとんどの人物は魔法がどれぐらいの数あるのかを把握していないのだが、マリアには分かっている。


全部で約37兆2000億個の魔法が存在し、マリアはその内ほぼ全ての魔法を会得していると言っていい。会得していないのは、極限魔法と呼ばれている最強魔法のたった数個のみ。


いくら人智を超えた人間であろうが、勝てるビジョンは一つもない。

今度はそちらが恐怖を感じる番だ。


マリアは手始めに上位魔法を発動させる。

重力にも似た風を吹かせる〈超風圧ハイパーグラビテーションブリーズ

風が重力の如く一直線状に吹き荒れ、相手の身動きを封じる束縛系の魔法だ。


それによって、フェガー、ジネル、ガドス、未だ意識を失っているモイドを地面に捩じ伏せる。その圧倒的圧力に対して、フェガーの指輪が光を放つ。


ただ一人だけ、マリアからの上位魔法を無効化する。

それを目の当たりにしても、マリアは焦らない。

焦る必要がない。


「なるほど、かなり高位の魔法アイテムのようですね。いったいそれをどこから入手し、誰からもらったのか……。謎は深まるばかりです」


 普段なら純粋に、興味を持つだけだったが、今は違う。

カナタの件がある限り、向ける感情は怒りしかない。


フェガーの身に付けている指輪は高位の力を秘めてはいるが、限度がある。上位魔法の上、超級魔法には防げるだけの性能がないとマリアは見る。


「くそ! なめた真似しやがって!」


「フェガー……! 早く……あいつを!」


 フェガー以外の人物は身動きを封じられ、うめき声にも似た苦しそうな声を漏らす。ジネルは声すら出すことのできない状態らしい。


「いいえ、あなた方の相手はカナタです」


 そう言って、マリアは風を超能力として扱い、フェガーを除いた三人をカナタの元に吹き飛ばす。カナタは少々戸惑っている様子だ。


「カナタ、やれますか?」


「は、はい!」


 困惑はしていても、迷うことなく返事をする。

カナタならやれるだろう。あの三人であれば問題はない。


「では、始めましょうか。一方的な蹂躙じゅうりん劇を」


「なめるなよ……。お前の魔法は俺には効かねぇよ」


「なら見せてあげましょう。人間が決して到達することのできない超級魔法をね」


 攻撃系の魔法を使ってもいいが、それだと呆気なさすぎる。それに加え、超級魔法は範囲が広いものが多いため、カナタにまで危害が行ってしまう。極限魔法などもってのほか。世界全てに影響を与えるものが多いからだ。


範囲指定のできる魔法が調度良い。


さっき使ったのは風を重力代わりにする束縛魔法だったが、次は本当の重力を起こす。


裁きの鉄槌、〈神圧エクスパルション〉だ。


「がっ……!?」


 この魔法から生まれる重力に抗う術はない。

あるとすれば肉体能力でそれをカバーするのみ。もちろん、人間にそんな力はない。


フェガーは想像を絶する重力をその身に受け、目を見開き、大地を貫き、削れる音と共に遥か下まで押し潰されていく。このままではこの惑星から追い出されることになるだろう。


宇宙にまで重力を発生させることはできないため、そこで魔法の効力は切れる。


その様を見て、ジネルたちもありえないとでも言いたげに唖然としている。


「すごい……」


 思わずカナタも軽く言葉を漏らす。


「な、なんなのよ……あんた……。なんであんたみたいな奴が出てくるのよ!」


「さぁ、何ででしょう。大人しくカナタにやられていなかったからじゃないですか?」


 ジネルは強く舌打ちをしてから、まだ倒れているモイドの方を鋭く睨み付ける。


「おいモイド! いつまで寝てんのよさっさと起きろ!」


 やっとモイドに回復魔法をかけるジネル。あくまで戦力増強のためだろうが、そのまま眠っていた方が苦しむこともなく、楽に死ねただろう。モイドが復帰したところで無意味だというのに、本当に哀れな連中だとマリアは嗤う。


「くっ……ジネル?」


「全員であいつを叩くわよ!」


 モイドは状況を把握しきれない。そんなことなどお構い無しに、ジネルとガドスはマリアに突撃する。


その前に、カナタが道を遮る。


「行かせない。君たちの相手は僕でしょ」


「このガキ……!」


 彼らに最初の頃の余裕は完全になくなった。このままいけば勝利は確実だと思われる。


「調子に乗るんじゃないよ!」


 ジネルは再び〈操糸オペレート〉を発動。魔力のかけられた糸をカナタに発射する。

だが、二度も同じ手に引っ掛かるほどカナタの学習能力は低くはない。


その技を待っていたとばかりに中位魔法、〈超能力スーパーパワー〉を使用する。読んで字の如く、あらゆるものを自由自在に操ることのできる力だ。


ジネルは自分で作り出した糸の所有権を失う。


「なっ……!」


「もう終わりだよ。じゃあね」


 操り人形となったジネルに防ぐ手段はない。

仲間割れをさせることもできるが、あえてカナタはそうしない。

そんなつまらないことをさせるつもりはない。


最後にそれぞれの終止符を打つのは他でもないカナタ自身だ。

故に、フェガーもマリアの手では殺さない。


最初の一人目となる復讐対象を、カナタは左足に力を込め、ジネルの顔面を一蹴する。頭部を失ったジネルに身体を動作させる司令塔がなくなり、大地まで落下した。敵が複数人いる場合、回復系の魔法を使える者から倒すのは鉄則と言える。


カナタハゆっくりと地面に着地し、次はお前たちだと示しているように、ガドスたちを睨む。


「この野郎!」


「よくもやってくれたな!」


 驚きを隠しつつ、ジネルが殺されても怯むことはない。

カナタの前後から挟み撃ちをする形で攻撃を仕掛ける。だが、二人の息は合わず、モイドの方が早くカナタに接近し、逆にそれを利用される。


背後から迫るモイドの勢い余る打撃を、カナタは空中を舞う後転で華麗に避ける。

避けるだけではない。


カナタの視界にモイドの後ろ姿が映ると、カナタは両足で押し出し突き飛ばす。体勢を崩されるだけでなく、身体ごとガドスと衝突する。


さらに、ガドスとモイドの身体が重なったこの瞬間、カナタは追い討ちをかけるべく魔法を発動する。


前方の魔方陣から大量の針が放出される。〈針千本ポインター・ヘル〉だ。


ただし、一つ一つがとても小さな針でできている。

しかしそれが千本もあり、全ての針を一人の身体に命中させ貫くには十分であった。


「ぐはっ……!!」


 ガドスとモイドの胸元から腹部全体に鋭く尖った針が何本も刺さり、止めどない血が流れ出る。心臓のある部分まで貫通しているため、もう生きてはいない。


これで二人目、三人目の復讐対象も息絶えた。

残るは、フェガーのみ。


正直、フェガーはカナタにとっては厳しい相手となる。

国の英雄と呼ばれた者たちよりも格段に強いのだ。


「あとは……あの男だけですね」


「は、はい。あの……本当にここまで僕なんかの復讐に付き合ってくれて、ありがとうございます。マリアさんがいなかったら……僕は……」


「いえ、私はただ手助けをしただけです。実際に復讐を果たしてるのはあなたですよ」


 複雑な感情が巡る中、マリアはそれだけカナタに話す。

あとは、フェガーが上がってくるのを待つだけだが、そんなに時間はかからなさそうだ。


今も、現在進行形で猛スピードで近付いてきているのが分かる。


その勢いを感じ取った数秒後、大地ごと激しくめくれあがった。


「てめぇ……!」


 怒りを露にした面相。

激怒しているのがはっきりと分かる。


「やってくれるじゃねぇか! おかげで宇宙の果てまで行っちまったじゃねぇかよ! 許さねぇ……!!」


 恐ろしい面相を維持したまま、フェガーは手の平に丸いものを出現させる。

飴玉のような何かだ。

しかし、それからは邪悪な魔力が漂っていた。


「後悔しろよくそ野郎共! 後悔したあとで苦しみながらくたばりやがれ!」


 フェガーは魔力が漂う謎の物体を口に含む。

人間離れした妖気オーラが、辺りを包み込む。


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