世界シミュレーション仮説2
「――っん」
目を覚ますとそこは知ってる天井。
自分が一人暮らしをしている部屋の寝室だった。
「いつの間にか寝ちまってたのか」
なんとなく頭がずんずん痛い。なんだか瞼がものすごく重くて、頭の中がもやもやする。
辺りを見渡すと、いつもの自室。お世辞にも片付いているとは言えない汚さ。
部屋中に計算用紙やペーパー、本、お弁当のごみが散乱している。
普通の人がこの部屋を見たら、ギョッとすること間違いないだろう。
「寝巻にすら着替えずに寝たとは、昨日の俺はよっぽど疲れていたと見える。」
ふと自分がいつも履いている古びたスリムジーパンに、白いワイシャツ、そんな外出用の服で寝ていたことに気づいた。
ん――
昨日、俺は何してたんだっけ?
こんな状況だから、おおよそ酒盛りでもして、大はしゃぎの大宴会でもしてしまったんだろうか
それにしてはなんだか長い夢を見ていたような気がする。
ベッドの横にある時計に目をやると、もう昼の十二時を過ぎて、午後一時だった。
「また午前中に起きられなかった……」
遅く起きて大学に行くのが大学院生の特権。
誰かが言っていた気がするが、まああんまり良いことではないのは事実だ。
今は九月で大学は夏季休業中。研究室は平常通り開いてはいるが、定期的なミーティングはない。
正直、研究室には何時に行っても良いのだが、お昼過ぎまでいい年した男が部屋に一人引きこもっているのは若干鬱なので、研究室に向かうことにした。
体を起こして、寝室をでる。
部屋で散らかったモノを踏まないように歩きながらバスルームに向かい、シャワーを浴びる。
多少さっぱりして、服を着替えて外に出る準備をした。
その前に少し腹が減ったので、冷蔵庫の中身を確認すると
「梅干ししかねぇ……」
だめだ、部屋の中に食い物はない。途中のコンビニにでも買っていこう。
そうしていつも持ち歩いている黒いリュックサックを持って部屋を出る。
「あれ?」
リュックサックの中身が軽い。不思議に思って中身を確認すると、いつも持ち歩いているノートパソコンや、研究ノートがなかった。
「うーん、ラボに置いて来ちゃったのかな――」
だとすると、研究室で酒盛りしてたのか?そのまま泥酔して帰ってきたとか?
俺も相当キテると見える。
今年で最後だもんな、博士の期限、五年目だし。
博士後期課程は闇だ。
研究がうまくいかず、成果が出ずに腐るという例も少なくない。
他の博士課程の知り合いには、いつのまにか鬱病で入院してましたって奴や、急に来なくなったと思ったらその後行方不明になる奴が何人かいる。
自分もその一員になるのは絶対に嫌だった。
なんとか、今の研究を完成させたい。理論はもう完成済みだ、あとは検証だけだ。
もうゴールは見えている。ここで発狂している場合ではない。
そんなことを考えていたら、時計はもう午後二時になろうとしていた。
まあ、遅く行った所で別に咎められることは何もないのだが、時間を無駄にしている気がして何となく嫌だった。
「うっし、頑張ろう」
そうやって研究室に向かって家を出た。