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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

こんな僕に与えられる結末はどんなものなのだろう。

作者: 若宮広

僕にとって自由は、幻想の内の一つでしかなかった。


「おい、カイン、今日も色々お前のために用意してやったんだ。素直に受けとれよ。がはははは。」


「や、やめて、やめて、お願いだからもう、しないで、ぁぁぁぁああああああああ!」


「がははは、お前の反応はいつも新鮮で面白いよ。ほら、ほらほら。」


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!、あ、あ、ぁぁ、」


「おいおい、もう失神したのか?たく、しょうがねえなあ。また一時間後にくるからおとなしく待ってろよ。」


薄暗い部屋の中、木製の十字架に手のひらを釘で打ち付けられた少年の頭は前向きに倒れ、そのお腹のあたりからはピンク色をした内臓が、はみでていた。



「う、うーん」


「よお、起きたか、今回はちょっと面白いものを持ってきた。これなんだかわかるか?正解は、電動ノコギリ!」


「や、やめて、お願い、だから、嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁぁ!」


「そんなこと言われたらやってみたくなるじゃねえか。」


ぶおーん、ぶおーん、ぶるんぶんぶんぶんぶん……


「がはははは、まずは足から開いてみるか」


「やめ、やめて、お願いぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」


「がはははは、続きまして、お腹を縦に切り開いていきまーす。」


「痛い痛い痛い痛い、ぁぁぁぁああああああああ!」


「がはははは、んじゃ、次は舌をきりおとします。」


「嫌だ、離せ、離して、ぁぁぁぁああああああああ!あ、あ、ぁぁ、」


「がはははは、次は頭をーあれ、また気絶かよ、たく、しょうがねえなあ、じゃまた一時間後に来るわ。」



「なんで?どうして僕ばかりこんな目に会わないといけないんだ。」


「お、もう起きてたのか。」


「もう、くるな。」


「がはははは、今日はこれで最後にしてやるよ。次はちょっと趣向を凝らしてみたんだ。ほら、これ、なんだかわかるか?」


「む、虫?」


「そう、名付けて、虫風呂ってな。がはははは」


「いやだ、やめて、離して、嫌だ、嫌だぁぁぁぁああああああああ!」


「そんなに暴れんなよ。もし、明日床に虫が一匹でもいたら、お仕置きだからな。わかったか?」


「わ、わ、分かり、ました。」


「んじゃ、俺はもう寝るから、絶対にこぼすなよ。がはははは」


そう言って男は檻の扉を開けて、階段を上がっていく。薄暗い石造りの壁に囲まれた地下室にある檻の中に一人、少年は取り残された。



「ねえ、そんなところで何してるの?」


「ん?なんだ?また俺を痛め付けにきたのか?」


「痛いの?痛いの痛いのとんでけーする?」


「そんなことしても、また痛め付けられるだけだよ。」


「じゃあ、逃げる?」


「にげる?そんなこと君にできるの?」


「うーん、よくわかんない、でも、なんかかわいそうだなーって。」


「ありがとう、心配してくれて。だけど僕、今つかまってるんだ。だから、」


「わかった、まかせて!」


少女は十字架に打ち付けられた釘を精一杯引き抜こうとする。


「うーん、うーん、やった!抜けたよ!」


「はは、ありがとう。もう片方もお願い、力入らなくって。」


「ううん、全然いいよ。まかせて。」


二人はその後檻を脱出し、階段を上がっていく。その際繋がれた手はとても力強く握られていた。



二人は、階段を脱出する。その時月明かりに照らされ、現れた姿は、乱れた銀の長髪をもったかわいらしい少女で、ボロボロの白い服を着ていた。対して、少年は乱れた長めの黒髪で何も着ていなかった。


「ごめん、僕服がなくて。」


「ううん、全然いいよ、私一杯服もってるから。はい、これ。」


そう言って少女は自分のポケットから白色のシャツを一枚取り出す。少年はそれを受けとり、着る。


「ありがとう、たすかるよ。えーと、君はなんで、あんなところにいたの?」


「えーとね、私いっつもあそこにいたんだ。おじさんが食べ物をくれて、それを食べて寝て食べて寝ての繰り返し。」


「そっか、名前は?」


「名前?うーん?アイネ?」


「そうか、アイネちゃんか、僕はカインっていうんだ。じゃあアイネ、そろそろいこう。」


「うん!出発!」


二人は村の出口へとまっすぐ向かい、その先の森へと消えていった。



二人が逃げ出してしばらくし後、村では、


「おい、あいつらがいなくなったぞ、どういうことだ。」


「わからん、ただ、二人はまだ子供だ。だからそう遠くには行ってないはずだ。」


「そうかもしれんな、おい、皆しっかり探せ。絶対にあの化け物を村の外にだすな。」


「おお!」


そう言って、村中の人々による二人の捜索活動が、始まった。



「おい、いたぞ!捕まえろ。」


松明を片手に大勢の村人が、二人に迫ってくる。


「はあはあ、なんで、かなり、遠くまで、来てたはずなのに。こんなに早く、みつかるんだよ。」


「わかんない、でも、逃げなきゃ、捕まったらもう、終わりだよ。」


「わかってる。」


「おーい、こっちだ、こっちににげたぞ。」


「か、壁?こんなところで行き止まりだなんて」


「がはははは、ほーら追い込んでやったぞ」


「よっしゃ、捕まえた。」


二人の必死の逃走劇は惜しくも、あと一歩というところで終わりを告げたのだった。しかし、二人を捕まえた村人の片手に持たれていたはずの松明はいつのまにか消えていた。



捕まった二人は再び檻の中にいれられ、その手を強く縛られた。


「くそ、あともう少しのところだったのに。」


「うーん、あとちょっとだったのにね。」


「もう、こんな毎日、終わって欲しかった。()()()()()()()もうこんなことされずにすむのに。」


「カイン、また痛いことされるの?痛いのとんでけーする?」


「ありがとう、アイネ、だけどもういいよ。」


薄暗い地下室の檻の中で、少年少女は二人寄り添いながら一夜を過ごした。



「おい、火事だ、火事だ、皆はやく避難しろ。」


「火事だと?何が原因だ。」


「それが、全くわからん。」


「はやく原因を突き止めろ、はやくしないと村中が炎につつまれるぞ。」


村中が慌ただしく動いている。村の噴水の水をバケツリレーする男たちや、子供たちを勇気づける母親たち、必死に逃げようとする村人たち、燃え上がる火の粉が、その夜彼らを容赦なく襲った。



翌朝、二人は同じタイミングで目を覚ます。


「あれ、今日はおじさん、来ないのかな?」


「そうだね、いつもだったら水をかけられるのに。」


「えー、私はそんなことされたことないよ、朝はおじさんがおはようっていってくれるだけだよ。」


「そうなんだ、君は何もされないんだね。」


「うん、ご飯をくれるんだー。いっつもあーんってしてくれるの。」


「そっか、あのおじさん、優しいところもあるんだ。」


「それよりー、縄、外れてるよ。」


「あれ、本当だ。なんでだろ。」


「多分おじさんがとってくれたんだよ。寝る時はぐっすり寝ないとねーって。」


「そうかもね」


「うーん、困ったなー。」


「なに?どうかしたの?」


「あのね、私、いつも朝起きると壁に線を入れるの。今日は何日目かなーって。」


「そっか、それは忘れないうちにやっとかないとね。描くものはあるの?」


「私の部屋にあるんだけどね、取りにいきたいなー。」


「取りにいきなよ。僕は無理だけど、アイネの体なら檻の隙間なら通れるかもよ。」


「でも、おじさんに怒られないかな?」


「大丈夫、もし、アイネがいない間におじさんが来たら僕が言っておくから。」


「ありがとう、じゃいってくる。」


そう言ってアイネは一人檻の隙間の手を伸ばし体を隙間に押し込む。その時アイネの体の一部が檻の一本にあたって……。


ギシッ!


「あれ?これ、なんかグラグラしてる。あ、抜けちゃった。」


「え、ちょっと見せて。」


カインは立ち上がり、床に転がった鉄の棒を拾う。


「あれ、錆びてる、しかもこんなにボロボロに。もしかして、これ全部?」


カインは檻の格子の一本一本を触って確かめる。するとそのどれもが根元からぐらついていて、少し力を加えれば抜けそうになっていた。


「もしかして、逃げられる?でも、今は朝だし、村の皆も外に出てるはず。」


「あれ?逃げられるの?だったらはやく逃げよう?」


「うーん、とりあえずまだ分かんないから、アイネは印を描きにいけばいいよ。」


「わかった。じゃあいってくる。」


少女はそういって、地下室の奥へとすすんでいく。それを少年は何かを考えるようにして見ていた。



「うーん、おそいな、もう一時間ぐらい経ってるはずなんだけど。おじさんも全然こないし。ちょっと様子を見に行こう。」


そういって、カインは先ほど格子を抜いて余裕の大きさに広がった隙間を抜ける。


しばらく歩いていくとそこには大きな檻があり、中には少女が一人、床で何かをしていた。


「ねえ、アイネ、何をしてるの?」


「ん?さっきいったでしょ。線をひいてるの。今日はどこに一本、線を引こうかなーって。」


「え?これってこの村の絵じゃないの?」


「うーん、そうだけどそうじゃないっていうか。私ね、1日一本、朝になったら線を引いてるっていったでしょ。それがこれ。」


「え、え?もしかしてこれがその一本ってことなの?」


その檻の床一面に描かれていた村の絵は、よく見てみると一本の線が折り重なってできた大作だった。その線の数は1万本をゆうに越えていた。


「ねえ、アイネ、君はどのくらいこの檻の中にいたの?」


「うーん、わかんない、でも食べ物をくれるおじさんは色んな人がきてたよ。毛むくじゃらのおじさんでしょ、頭がツルツルしたおじさんでしょ、なんか白い棒を加えたおじさんもいたよ。」


「それ、全然知らない。タバコをすう人なんて一度も見たことないよ。……そっか、君はとても長い間、ここに入れられてたんだね。よし、逃げよう、はやくここからでるんだ。僕と一緒に逃げよう。」


「いいよー。また逃げよう。」


「(これ以上はこの子を、アイネを閉じ込めたままにはしておけない。)」


少年は少女の手をとると、地上へ向かう階段へ急いで向かう、その足取りには一切、自分のことなど考えているような様子はなかった。



「これ、どうなってるんだ。」


「あれ?村は?皆はどこに行っちゃったの?」


そこに広がっていたのは、村があった形跡など一切ない。ただ、木片があたりを飛び交う荒野と化していた。


「皆いなくなっちゃった。いや、これは俺が望んだことじゃないか。やった。やったぞ。やっと地獄から解放されたんだ。」


「あれ?おじさんもいないの?ここどこなの?」


「もう、皆いなくなったんだ。これで思う存分逃げられるよ。さあ、一緒に逃げよう。」


「うーん、わかった。逃げる。」


「そうだ。そうしよう。さあ僕の手を掴んで。」


カインとアイネは二人手を繋ぎ、村だったはずの荒野を真っ直ぐ進む。その影は夕焼け空に照らされて長く、長く伸びていた。


中途半端な終わり方で申し訳ありません。これで、「こんな僕に与えられる結末はどんなものなのだろう。」を終わります。

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