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サイキックダンジョン探索  作者: サンバルカン
2/12

 科学の発展は未知を既知へと変え、その歩みは止まらない。神や妖の仕業と思われていた自然界の現象は原理が解明され、事象は必然のものとなった。神は死んだ。幻想や神秘はフィクションとなり、科学はそれを糧にして増大しているようだった。


 そんな1980年代。世界中で巨大な建造物が出現した。初めは各国に一つずつ出現したその建造物は現代の科学では解明不可能であり、建造も不可能であることのみが分かった。さらに、地上と塔との接点には入口がある。


 入った先は土でできた迷路であったり、生命の息づく森林であったり、太陽の熱が降り注ぐ砂漠であったりする。場所によって様々な環境であるそれはゲームブックに登場する建造物に例えてダンジョンと呼ばれるようになった。


 果たしてこの建造物をだれが作ったのか。世の論調では神であるだとかエイリアンだとか天狗の仕業だとか騒がれたが結論が出ずに何年も経つと研究者以外は誰も気にしないようになっていった。


 そんなダンジョンにはモンスターがいる。そしてモンスターを倒すことでエネルギーをゲットすることができる。エネルギーによって各国の資源事情は激変した。石油より何よりクリーンで高効率な資源ができたのだ。そうなるとエネルギー確保に各国取り組むようになるのは当然のことである。中でも特に力を入れたのはソビエトであった。


 人間は畑で採れるというお国柄から人海戦術でダンジョンの攻略に力を入れた。結果、ダンジョンに関するいくつものことが明らかになった。

ダンジョンで死亡した人は十分後にダンジョンの入り口付近の壁から蘇生される。

蘇生された人物は日付が変わるまでダンジョンに入ることができない。

モンスターを倒すことでエネルギーを発する石を手に入れることができる。

モンスターを倒すと稀にエネルギー以外の物を手に入れることができる。それはおよそ現代では作成不可能なものである。これは一般にドロップアイテムと呼ばれる。

一定階層ごとにボスと呼ばれる強力なモンスターがいる。

ボスを倒すと入口とのポータルが開き、それを利用することができるようになる。

他にも明らかになったことはあるが重要なのはこの辺だろうか。ダンジョンを攻略するために人が集まり、集まった人からエネルギーを買い付けるために国の機関が塔に寄せる形で建造物を作り、いろいろな処理などを一気にやったほうが面倒がないのでそこを役所とした。それが日本で最初のダンジョンである東京ダンジョンこと東京都庁である。


 そうして何年か経つうちにダンジョンはいくつも生まれ、今では県に最低一つはあるようになっている。都内には区ごとにあるほどだ。


 時を同じくして1980年代から子供に尋常ではない能力が備わるようになった。それは火を発生させるだとか水を生成するなどの不思議な現象を任意で起こすことができる能力だった。子供はおよそ10~15歳頃までに能力に目覚める。子供であるが故に感情の高ぶりなどで能力を周囲にまき散らす事件などが1980年代から1990年初頭までに何件も発生したことから、このころに生きた年代は能力者と聞くだけで嫌悪感をあらわにする。


 そういった事件などが起こった背景には差別があった。能力者はそうとわかった瞬間に隔離され、非能力者と接触を断たれる。能力者はまず能力の制御を叩き込まれ、それができるようになったらようやく通常の教育が実施される。


 しかし、能力者が一般の職に就くことはまず無い。大きな理由として防犯面でのことがある。先ほど言った火を生成させる能力者がいきなりそれを発生させた場合にそれを止める手段がないのだ。もちろん、対能力者用の防犯グッズだとか警備員などもあるにはあるしいるにはいるが足りていないのが現状だ。


 もろもろの理由もあり、能力者は対能力者用の警備員になるかダンジョンを探索する探索者(エクスプローラー)になるのが一般的だ。エネルギーはまあまあの値段で買取されているし、モンスターからドロップアイテムをゲットできればかなり高額で買い取ってもらえると聞く。


 というわけで能力者は探索者やったらいいんじゃない? というのが世間一般の常識だ。ちなみに能力者に対する差別は三十代より上の年齢の人はかなり激しいと聞くが二十代前半くらいまでの年齢ならほとんど存在しない。まあ親からいろいろ聞いたりした奴なら差別意識を持ったりしているかもしれないが誤差だろう。


 


「なるほどな」


 今俺は役所から帰ってきて、ネットで能力者やダンジョンについて調べていた。ウィキなどで詳しい情報なども調べれたのだが、何より有用だったのはやる夫で学ぶシリーズだった。


 役所での能力の登録は問題なくすんなりといった。理由は簡単で、身分証明書(ステータスカード)を更新するだけで良かったからだ。ネットで調べても載っていないし、俺自身も聞いたことがなかったが稀にある程度年齢を重ねてから能力に目覚めることもあるにはあるらしい。


 そんなわけで能力者になり、冊子を渡されて帰ってきた。二十歳を超えて能力に目覚めた人は能力を制御する研修などなく注意事項などが書かれた冊子を渡して、あとは自己責任でどうするかなどを決めれるらしい。すでに就職している人なんかは対能力者用の警備員などに再就職できるように案内されるらしいが、生憎俺はまだ学生なのでそういったこともなく普通に解放された。


 ダンジョンや能力者について調べたので次は自分の能力について調べることにする。能力は身分証明書に記されて、基本的に他人は見ることができない。警察などは特殊なライトを持っていて、それを照射することで身分証明書に隠された能力などを見ることもできるらしいが、まあ普通は見れない。こういった特殊なものは全部ドロップアイテムだったりダンジョンにあるオブジェクトを解析した結果判明した技術などを用いている。


 さて、俺の能力はいったいなんなんだ? 火を出せたし炎熱系? でもマウス操れたし念動力系かもしれない。


「超……能力……?」


 超能力ってなんだ? 能力者な俺、(スーパー)! って感じなの? ネットで検索をかけてみるも、特に検索に引っかかることはなかった。


 超っていうのが超えるとかスゴイって意味だからすげェ能力ってのはわかるがそれしかわからない。とりあえず、『能力 種類』で検索をかけてみて引っかかったのを試してみよう。


 そうこうしているうちに一時間。わかったことといえば割といろいろできるということくらいだった。水だの風だのも出すこともできるし、身体強化もできる。治癒能力は使ったら昔カッターで切って以来残っていた指の傷跡が治った。


 しかし能力者にありふれている○○使い系は無さそうということが分かった。剣使いとかもあればダンジョンに潜るのが楽だっただろうになあと思うがこんなに能力があるだけありがたいのだし贅沢言えない。


 ひとまず治癒能力があったのは僥倖だ。これがあるだけでコスパが違う。無かったらポーションとかの消費財を持って行かなきゃならないところだった。


 いろいろと考えることもありそうだったが、何はともあれ明日ちょっとダンジョンに行ってみるかと考えて今日はもう眠ることにした。

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