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上谷太刀、友人が増える

「兄貴ぃ!」

翌日の昼休み。

メアリは信じられないものを見た。

メアリは昨日の一件から、太刀に対して驚愕と畏怖の念を抱いていて声をかけることが出来なかった。

それではいけないと、一念発起し太刀に話しかけようとしたのが、昼休みであった。

しかしメアリより早く太刀に声をかけた人物がいた。

それは太刀に決闘を申し込んだ人物。

ニック・ブロード、その人であった。

「な?」

「うっす!元気してましたか!太刀の兄貴!ところで昼飯をご一緒していいっすか!」

「構わんが、腹はもういいのか?ニックよ」

「な、な?」

「うっす!全然この通り問題ないす!ここの保険医の回復魔法は優秀ですからね!ガインの奴も昨日には全快したらしいっすよ!」

「ガインという奴は昨日の朝、自分の胸にパンチをしたあのでかい奴か?その話が本当であるならば、奴に治療費を払ったのは間違いだったか?」

「な、な、な?」

「あいつに金を渡していたんですか!申し訳ないです!直ぐに回収しておきます!」

「いや、構わん。はした金であるし、それに我が怪我させてしまったのも事実だしな」

「な、な、な、な?」

「流石兄貴です!太っ腹!」

「ところでな、ニック・ブロードよ。ひとつ訊ねたいことがあるんだが……」

「何であなたがここに来るのよ!?」

何かが爆発したようにメアリは叫んだ。

「うお!ビックリした!何だ!お前!急にでかい声出すんじゃねえよ!」

「『何だ!お前!』じゃないでしょ!?わけわかんない!昨日剣呑な空気で決闘しておいて、今日は何ワンコみたいに太刀君に尻尾振っているのよ!不良のポリシーみたいなものはどこに行ったの!」

「誰かと思ったら、昨日決闘を観戦していた奴じゃねえか。ワンコとはよく言ったものだ。思った以上に怖いもの知らずだな」

ニックがメアリに向かってメンチをきった。

しかし、メアリはそれにも物怖じもしなかった。

「今更そんな怖い顔しても遅いわよ!私の中のニック・ブロードは今さっき死んだわ!そんな凄んでも何も怖くないんだから!」

「手前ぇ。俺が女に手をあげねえとでも思ったか!?」

「いや、女性に手をあげるのは我の国でもないな。その行為は恥じ以外の何ものでもない行為だ」

「うっす!そうですよね!流石兄貴!」

「そ・れ・が!気持ち悪いのよ!」

ニックの昨日と全く間逆の態度に、メアリは変なテンションになっていた。

彼女がした自己分析、『平均的な自分』が崩れつつあった。

「ニック・ブロード!あなたは昨日、太刀君との決闘に敗れた!悔しいとかそういう感情はないの!何普通に、いいえ、普通以上に気持ち悪く太刀君に接しているのよ!」

「き、きも!?き、キモクねえし!」

女性に気持ち悪いと言われ、若干傷ついたのか、ニックは多少動揺した。

が、動揺したのは一瞬で直ぐに調子を戻した。

「俺はな、昨日兄貴に負けて思ったんだよ。世の中にゃ、上には上がいるもんだってな。俺なんか井の中の蛙に過ぎなかったってわけだ。それに比べて、兄貴は大分でかい男だ。よって、兄貴から少しでも何か学べればと考え、舎弟になることにした」

「太刀君に不良の頂点に立てって言うの!そんなのお天道様が許しても私が許さないわ!」

「誰が不良の頂点に立ってもらうといった!?兄貴がそんな小さな肩書きで納まる器じゃないだろ!それに俺は不良じゃねえからな!」

何と驚くべきことに、ニックは自分が不良という認識を持っていなかった。

自分の弟分に不良がいるということは理解できたが、自分がその括りにされているとは夢にも思っていなかったのである。

よって、メアリのその言葉は寝耳に水であったのだ。

「俺は兄貴のように強くでかい男になりてえ。故に、これから兄貴の側について、行動を共にさせてもらうつもりだ!」

「クラスと学年が違う!」

「そんなもんは些細な問題だろうが!」

「全然些細な問題じゃない!」

「何なら留年して兄貴と学年を合わせてもいいぜ!」

熱くなっている二人とは対照的に太刀は至って冷静に、二人に言った。

「熱くなっているところ悪いが、二人とも。我は腹が減った。本日はちゃんと金を持ってきているから、学食に案内してくれないか?」

「合点です!兄貴!」

「いいの!?太刀君!そいつはこの魔法学園一の問題児なのよ!?」

「構わんだろう。我の国にこういう言葉があってな。『昨日の敵は今日の友』。昨日のこやつの不遜な態度は水に流してやろうではないか」

「流石!兄貴!でかい男だぜ!」

「いや、その太刀君が一番不遜な態度をとっていると思うのだけれど」

「それに、飯は大勢で囲んだほうが楽しい。メアリも本日はサンドイッチか?メアリが構わなければ、一緒にどうだ?きっと今よりも楽しいぞ」

楽しいかどうかはさておいて、何というか、二人がほっとけなくなったメアリは彼らについていくことにした。

以後、腐れ縁のように彼らに関わっていく未来などは、まだ知らずに。


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