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上谷太刀、魔法の新たな属性について学ぶ

シャルル魔法学園で最高の知識を持っているのはセオフィラスである。

それではシャルル魔法学園の最強は誰であるのか?

そう訊ねられれば多くの学園の生徒は『四天王のアリシア』と語るだろう。

理由は簡単である。

彼女が多くの生徒と戦い、そして勝利してきたからである。

戦闘狂バーサーカーと自負するニックよりも多くの戦闘を彼女はこなしてきた。

それはアリシアが自らそうなるように周囲に仕向けたからである。

アリシアが四天王の一角になった日、彼女はこう公言したのだ。

「私と一対一で戦って勝利することが出来たのなら、私に出来ること何でもしてあげるわ」

この公約に飛びついた多くの男子生徒がアリシアに戦いを挑んだ。

アリシアは学園でもトップレベルの美少女だった。

若い青少年たちがこの公約を見逃さないわけが無かった。

しかし、今まで勝利した人物は誰一人いなかった。

アリシアの戦闘力は『魔法騎士』のレベルまでに達していたのだ。

故に、彼女に戦いを挑むことを『騎士試験』と呼ばれた。

そしてその難易度のあまりの高さに、今では誰も彼女に挑むことはなくなったのである。

否、それだけでなく、彼女に近づくものもいなくなった。

孤高の最高戦力。

それが四天王のアリシアである。

と、太刀はメアリから説明を受けたのであった。

「うむ。先ほどのアリシアという奴の人物像はわかった。しかしセオフィラスよ。それがどうして我を探偵倶楽部に誘う流れになるのだ?」

「だから僕は抑止力のつもりだったんだよ。僕がこの間の会合でうっかり太刀君の情報をアリシア君に漏らしてしまってね。彼女えらく君に興味を持っていたようだから、そんな気を起こさせない為に、僕は君たちを入部させようとしたわけさ。ようは罪滅びしのつもりだったんだ」

「探偵倶楽部に入れば、アリシアも我に手出しはしないと?しかしそんな心配は杞憂であったな。全くお構い無しで突撃してきたぞ」

「突撃してきたね。それは僕も予想外だったよ」

「そして決闘を申し込まれたぞ」

「申し込まれたね。いや彼女が決闘を申し込むのは別に珍しいことじゃないんだよ。たしかにアリシア君は『騎士試験』で男性が彼女に決闘を申し込むように仕向けたけど、彼女から決闘を申し込んだケースがなかったわけではない。だから僕は警戒したんだけれど、警戒したところで無駄だったね。いやあ、すまない、すまない」

「目が笑っているぞ、セオフィラス」

セオフィラスはまるでこの状況を楽しむかのように笑っていた。

謝罪の言葉を示しているのに、表情は全くの逆であったのだ。

「本音を言え。この不慮の事態が、思わずもお前の目的と一致したんだろう?」

「ああ、その通りさ!まさかこんなに早くお目にかかれるとは思わなかった!魔法VS『気』!あぁ、どちらが優れている技術なんだろうね!ねえ僕も見に行っていいかな?いいよね!僕も責任を感じているから、太刀君とアリシア君の決闘を見届けたいんだ。否、今の言葉は真っ赤な嘘だ。僕はその本当の『気』の使い方が見てみたいんだ!本音を語ったからいいよね!?」

「本音を言えとはいったが、嬉々としすぎではないか?」

「そういう太刀君だって、笑っているよ」

そう、太刀もセオフィラスのように口角が上がっていた。

「セオフィラスは我に謝罪の言葉を述べたが、むしろ我はお前に感謝をしているのだ」

「感謝?」

「ああ。もしかするとアリシアが我の目的のもう一つを満たしてくれるかもしれん。これは確かめるにいい機会だ。このような機会を用意してくれたセオフィラスに感謝している」

「本当かい!だったら太刀君とアリシア君の決闘を観戦してもいいと?」

「別に構わん。見られて困るようなものは何一つ無いからな」

「やった!」

セオフィラスは諸手を挙げて喜んだ。

「ソフィア!ただちに椅子とテーブル、そしてレポート用紙を用意してくれ。いやぁ、久しぶりだよ。こんなに心踊るのは」

本当にこの場で踊りだしてしまうのではないかと思うぐらいの喜びようであった。

「ところでニックよ、一つ質問があるのだが……」

「なんだい?兄貴」

「お前はアリシアと戦ったことがあるのか?」

「ないっす。俺は女子供には手をあげる主義じゃないっすから。『騎士試験』なんかにゃ興味なかった。まあ向こうから挑んでくるのならば、拒みはしなかっただろうけど」

「ほう。アリシアはニックには戦いを挑まなかったのか?」

「ああ、もっともあのアリシアとかいう女と俺が戦ったら、十中八九俺は負けますよ」

「負けるのか?」

戦闘狂で熱血漢のニックからその言葉が出るとは、太刀は思っていなかった。

「えぇ、あの女は天才ですよ。そこのセオフィラスが知識面での天才ならば、アリシアは戦闘面での天才です。攻撃面で最も適しているといわれる『合成魔法』の『雷』を限界まで習得しているんです」

「『合成魔法』?」

太刀の知らない言葉がニックの口から発せられた。

「それはよく知らんな。いや、待てよ?確かお前の舎弟だったガインとかいう奴もそれを使えなかったか?」

「ガインのやつは『混合魔法』。アリシアのやつは『合成魔法』です。似て非なるものですよ」

「確かガインは『爆』と言ってたな。それにアリシアは『雷』?どちらも四大精霊の属性には無い名だが……一体全体どういうことだ?」

「混合魔法は二つの魔法を組み合わせて威力を増す魔法、と考えてください。火の熱さと風の力。単体でも脅威ですが、合わせればもっと増すことがある。つまり二つの魔法を同時に使用する。それが混合魔法ですね。二つの魔法を一度に操る感覚が掴めれば、まあ誰でも使えますよ。もっとも相性がいい魔法とそうでない魔法がありますし、その二つの魔法を一度に操る感覚がなかなか難しいんですけどね」

「成る程。魔法の一つも使えない今の我には到底不可能な魔法、というわけだな。それで?合成魔法のほうは?」

「合成魔法は二つの属性を掛け合わせて、全く新しい属性を作り出す魔法っす。『火』と『風』を組み合わせると『雷』。『水』と『土』を組み合わせると『木』、なんて感じです。と言葉で言うと簡単に聞こえるかもしれませんが習得は簡単ではありません。上級魔法という別名があるほどです。例えば『雷』の魔法を使うには『火』と『風』を限界まで習得し、その上で才能がなければ習得が出来ないとも言われてるっすね」

「……成る程、合成魔法、混合魔法共に、現段階の我では全くの習得不可能な魔法であるということは理解できた」

「あ、兄貴だって頑張ればきっと……」

ニックが苦い顔でフォローを入れようと考えたが、後の言葉は続かなかった。

そんな太刀にセオフィラスが声を掛けた。

「あっ、僕は六歳で『雷』の魔法が使えたよ」

ただの追い討ちの言葉だった。


アリシアが指定した決闘の場所は学園のグランドであった。

昼間や放課後では部活動を行うほかの生徒などがいるため、時刻は夜であった。

真っ暗闇の中、月の光だけが二人を照らした。

両者の間にはおよそ十メートルほどの距離が空いていた。

どちらが言い出したのではないが、どちらともおおよそこのぐらいの距離から決闘を始めようと、暗黙の了解があった。

二人を見守る影は四つ。

メアリ、ニック、セオフィラス、ソフィア。

セオフィラスとソフィアは椅子に座っており、セオフィラスに至っては二人の様子を観戦しながら、手だけはレポート用紙に筆を進めていた。まだ二人の戦いが始まっていないというのに、セオフィラスの筆は止まらない。

対してメアリとニックは立ち見であった。

ソフィアは二人の椅子も用意したのだが、二人はそれを拒んだ。

椅子に座って観戦して良い戦いではないとニックは思っていたし、メアリははらはらしてソフィアが用意してくれているのに気が回らなかった。

「始める前に質問をよいか?アリシアよ」

まだ戦闘態勢に入っていない為、比較的に飄々として太刀はアリシアに言った。

「下らない質問ならばお断りよ」

「何故『騎士試験』など起こした?お前はニックとは違い戦闘狂ではないだろう?」

「あら?私がバーサーカーじゃないとどうしてわかるのかしら。長く話したわけでも、ましてや戦ったわけでもないのに」

「雰囲気でわかる。これから戦いが始まるというのに、お前は全く嬉しそうじゃない。なにか義務感で実施しているように見えるぞ」

「そうね。確かに私はバーサーカーじゃないわ。あなたと戦えたって全然嬉しくないんだからね」

「ならば同じ問いをもう一度しよう。何故『騎士試験』など起こした。そして何故我に戦いを挑む」

「私の目的の為、とだけ答えておくわ」

そう言って、アリシアは空気を変えた。

特に構えをとったわけではない。ただその眼光で示したのだ。

これ以上語るつもりはないと。

「ふむ。戦闘狂ではないが、立派な戦士ではある。というわけか」

難儀なものだな、と付け加えて太刀も戦闘態勢に入ろうとした。

「私からも一つ、質問してもいいかしら」

しかしそれをアリシアが止めた。

「何だ?下らない質問ならば我もお断りしたいが」

「あなたは何故この学園に?」

「魔法を学ぶ為に決まっているだろう」

「その理由はきっと正しいのでしょうけれど、そういうことではないのよ。あなたはあそこのニックと魔法騎士を倒したという実力がある。それはおそらく魔法とは別の技術なのでしょう。その技術を有していながら、魔法を学びに来た理由は何?」

「我を倒したら、それも教えてやる。と格好つけたいところだが、たいした理由ではないので語らせてもらおう。我が扱う技術は『気』というもので、身体能力を向上させるのが主にその効果なのだが、如何せんその技術は接近戦に特化しすぎている。遠距離の、それも面での攻撃を行うことが苦手なのだ」

「遠距離攻撃を得る為に、魔法を習得したい、と?」

「そんなところだな。最悪それを習得するのは我でなくてもよいのだが」

「うん?どういうことかしら」

「まあ、それはお前と手合わせしてから確認することにしよう。先に言っておく。我は身体能力を向上させるが故にかなり頑丈だ。先手はくれてやる。最強の魔法を我に撃つがよい」

宣言通り、先に動いたのはアリシアであった。

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