バレンタインデーの悲劇
バレンタインデーに一つもチョコをもえらなかったヤツが、嫉妬心で書いたストーリーです。過度な期待はしないでくださいね。
私、足立花芽。高校1年生。
今日は2月13日の木曜日。時刻は17時10分。
明日のバレンタインデーのために、私が密かに恋心を抱いている1学年上の吉田朝陽君のためにチョコを作っています。
友達の春日光ちゃんと一緒に我が家で手作りチョコを作っています。
彼は学校一の人気者。
サッカー部のキャプテンで、常に周りを気に掛ける思いやり、そして彼のサッカーに対する思い、他にもありますが私は彼の全てに惚れました。
うちの学校では、ばれなければチョコを渡してもいいということなので、明日のために私の思いを今日に賭けます。そして告白。
そして彼と付き合った後を妄想しながらして、にやにやしながらチョコを作っていました。
「ちょっと、花芽!集中しなさいよ」
「あ……ごめん、光」
光とは高校で知り合って、まだ友達1年未満の新しいお友達。
でもこの一年はずっと、一緒に登校したり、お弁当を食べたり、放課後に遊んだり……。
そんな仲。光の頼みも私は聞くし、私の頼みも光は聞いてくれる。
本当に、誇れる親友です。
「好きな先輩にチョコ渡すのもいいけど、明日の私のプロポーズに協力してくれる約束も忘れてないわよね」
「当たり前でしょ。忘れるわけないじゃない。むしろ成功してほしいぐらいだよ」
光も好きな人がいるらしい。なんでも同じ学年の村田君っていう人らしいです。
私はその子については、あまり知らないけど……。
だから光も、明日その人に渡すチョコを作っています。
「成功するといいよね。光」
「花芽もね」
もう私たちが本当の恋人かっていうぐらいの意思疎通。
女子の友情も捨てたものじゃないですね。
それから約1時間して完成。
「できたー!」
「これで明日なんとか渡せるわね」
「うん、ありがとう!お互い成功するといいね」
女子の会話を楽しみ、気づけば21時。
光と別れた後の晩。
ご飯を食べている間も、ずっと吉田先輩のことを想っていました。
そして2月14日、金曜日。
時刻はお昼休みの12時30分。
光と一緒に、私が所属するデザイン研究部の先輩、浅田芳香先輩を介して吉田先輩を呼び出す。
偶然にも図書室で、吉田先輩は一人で本を読んでいた。
本を読んでいる最中にお邪魔するのは迷惑かもしれないけど……
「ほら、がんばれ!」
光に勇気づけられ、そして……
「あ、あの吉田先輩……」
「……?」
知らないのも無理はないでしょう。
何せ今まで一度も話したことな……
「も、もしかしてチョコくれるのか!?」
「……え?」
「ち、違うのか?」
「い、いえ……」
威勢ある先輩との会話に押されながらも、チョコを渡した。
「これ、チョコです。先輩がいつも熱心にサッカー部で練習している姿、いつも部室の窓から見てます……。これは、先輩への私の想いです……!」
「うはぁ!マジで、ありがとう!……あ、そうだ。俺からもいいかな」
「は、はい……!」
「実は俺も、足立さんのことがずっと前から好きだったんだ」
「え!?」
まさか、そんなはずが……。
先輩とは今まで一度も話したことないし、おそらく存在も知らなかった。
それなのに、先輩はずっと前から私の事が好きだった……?
正に奇跡でしょうか。この展開が、神様からの贈り物だとしたら、どれだけ運命的なことなんでしょうか。
「あ、あの……私も先輩のことが、好きです」
「(大声で)キタコレ!!」
「……え?」
「じゃあさ、今日から付き合ってくれるよね!?」
「は、はい……、お願いします」
「悪いが、今は図書委員の仕事でここの担当なんだ。この後、もうすぐしたら弁当食べ終わった奴らが続々と来るから……、だから今日の放課後!ここにいるから足立さんも来て!その時なら、人も少ないと思うし!」
「わ、分かりました……」
そして図書室から退出。
正直、これまで私が想像していた先輩像とは何か違うような気がした。
それでも好きな先輩であることは間違いないし、いつ見ても先輩はかっこいい。
「どうだった?」
開口一番に光が聞いてきた。
「うん、なんとか渡せたよ」
「で、どんな反応だった?」
「"あ、ありがとう"って……」
「そう、印象付けとしては丁度良いじゃん」
それ以上のことは喋らなかった。
あまり変な噂が広まると困るから。
今度は光の番。
同級生の村田義弘君にチョコを渡し告白。
正直、私は吉田先輩の事で頭がいっぱいだけど、それでも気を取り直して光と一緒に村田君を探す。
村田君は3階校舎の一番奥の部屋、トレーニングルームにいました。
私の場合と違い、村田君は他の複数の男子たちと一緒にいました。
それでも私なんかと違い勇敢に部屋に入り……
「村田君いますか?」
「おーい、村田!彼女からお話だとよ」
「そ、そんなんじゃないですよ!」
「……」
奥から、無言で村田君らしき人が、光の前にやってきました。
私はトレーニングルームから見えるように光から少し離れた場所で、光の様子を見ていました。
「あの村田君、その……ずっと前から好きでした……なのでこれ、よかったらどうぞ!」
「本当に!?ありがとう!」
「あの……私と付き合ってください」
「お、俺でよければ……」
「ほ、本当に?」
「う、うん……」
「じゃあ今日から付き合ってくれるよね?」
「よ、よろこんで……」
まさか私たち2人とも1日でカップル成立するだなんて。
すごい奇跡です。
「やったじゃん、光」
「やばいマジで嬉しい!あ、紹介するね、彼女は足立さんっていうの」
「ど、ども……」
「こちらこそ……」
村田君との初絡みに照れながらも返事をする。
――それにしても、喜ぶ光の顔を見ると私まで喜んでしまいます。
これが友情というものでしょうか。
放課後。
光は村田君と一緒に帰りました。
私はというと、部活の前に図書室で待ち合わせている吉田先輩のところへ。
「し、失礼します……」
「きたきた!!」
先輩は図書室の隣の部屋の図書事務室にいました。
昼休みと同じ状況。
周りに誰もいない。先輩一人。これまたラッキー。
ぶっちゃけると私、最近欲求不足なんです。
もう、ずっとイチャイチャしたかったんです。
私のイメージが崩れたらすいません、でも本当なんです。
「あ、あの……、私のチ……」
「ハグしてほしい!」
私が話し出す前に、突然言いました。
「え?」
「だからハグしてほしい!……ダメ?」
「いえ、いいですよ!」
そう言い、私は先輩の目の前のすぐ近くまでやってきて……
抱いた。
今この瞬間、世界で一番密着していると思うぐらい抱きました。
先輩の股間が硬くなっていくのが分かります。
「せ、先輩……私のチョコ食べました?」
「昼休みに食べたよ、美味しかったよ……」
「なら、嬉しいです……」
「じゃあさ、今度はチョコじゃなくて足立さんが食べたいな……」
「え……」
瞬間、全身の感覚に苛まれました。
そして次にやってくるのは強烈な苦痛。
首筋から大量の血があふれだし、最後に見えたのは、先輩の眼。
獣のような餌を見る目線でした。
そして私の感覚は消えました―――
「美味しかったよ……花芽ちゃん……」
あまりのオチにびっくりしたでしょう?評価よろしくです^^;