-第1話-
ガヤガヤと騒ぐ声が聞こえる酒場で大きな声が響く。
「聞いたか!? 先月の終わり頃に新しい【迷宮】が出来たって話だ!」
木製で出来た取っ手付きのコップを片手に同じテーブルにいる仲間へ話かける男
「おう! 今度は南側の森の中に迷宮を作ったんだろ? …まだ【報酬】を貰った奴はいないよな?」
同じくコップを持ちながら返事をする男
「あぁ、今度のは4つ目の【初心者用迷宮】だってよ!」
「…ふん、初心者用なら俺達は無理だろ?」
2人が話てるのを聞きながら答える男
「だよなぁ…。 あ~ぁ、俺達は【中級者用迷宮】で稼ぎながら【迷宮】に挑むしかないか…」
そう言って最初の男はコップの飲み物を一気に飲み干すと「エールお代わり!」と注文を取っている女の子に声をかける。
此処【ミストラル世界】において有名な存在が幾つかある。
その1つが先程男達が話していた【迷宮】だ。
【迷宮】とはミストラルにおいては「神の遺産」とも「邪神の気紛れ」とも色々な憶測で話がされている物で、近年の各国の研究者達の認識は「ある一定にまで魔力が一ヶ所に溜まり続けると、その影響で魔物を産み出し続ける」迷宮が出来る、言うものだ。
迷宮は大抵小さい規模でも地下5階、大きな規模で100階までのが発見されている。
迷宮はミストラルに住む人々にとっては「災害」に等しい存在だ。
迷宮内で産み出され、その中が一杯になれば次々と外に出て来ては近隣に住む人々からどんどん襲われてしまい、被害も出る。
だが、同時に人々に恩恵も与えているのが迷宮だ。
迷宮内に溢れる魔物は倒せばその一部は武器や防具に薬や生活品の素材になったりするのだ。
そして最奥にある迷宮の心臓とも言うべき宝石の様な石があり、それを壊せばダンジョンの規模にも因るが迷宮は消滅していく。
…そして先程男達が話していた【ダンジョン】と【~用迷宮】…正しくは【迷宮】とダンジョンは【別の】存在だ。
ただ、ミストラルの【人々】に取っては違いは無い。
自然に出来るか【人工的に作られたか】の違いはあるとしても…だ。
「ふぅ~…こんなもんですかね?」
白髪の青年が石作りのトンネル内を見渡しながら呟く。
彼は1週間前から今いる【国】に、とある物を作る申請を出し、正式に許可を貰って作成した物の出来具合を確かめていた。
…そう、「初心者用迷宮」とか出ていた【ダンジョン】だ。