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懺悔箱  作者: まない
1/1

コイワケ番外編~Eの悲劇~

「何、コレ」


 炬燵こたつに入ってPCを操作し、いつものページに無いハズのモノを見つけ、エイコは思わず口にした。

 その問いにマキはベッドから身を乗り出して、些細な事を思い出したように答えた。


「ああ懺悔箱。何でも作者が更新しないくせに一日数件あるアクセスに喜んで、その後猛烈な罪悪感に苛まれたせいで発生した謝罪会場だよ」


「まったくアホよね。とっととさくさく書いてりゃいいのに鈍くさいから。ところでエイコ、アンタ学校の宿題に手間取ってるんですって?」


「うえ?!サキ!」

 

 マキの部屋の入り口に、ケータイを持ちながら佇むイトコにエイコは驚く。コイツらの登場は、ホントにいつも気配がない。


 諦めて慣れる努力をしようとしたエイコと異なり、いきなり乱入してきた兄にマキは軽く抗議した。


「ノックぐらいしてよ。最中だったらどうす「おいいいいいいいい?!!」」


 何 か 言 っ て る……!!


「大丈夫よ、エイコの鳴き声しなかったし」


 ア ン タ も か……!!なにこの人達……!!

 そろった兄弟に嫌な予感がする。というか、既に――


「で、宿題って?珍しくフジが連絡してきたから、気になってんのよね?」


 ほらねやっぱりね!

 担任のアホーーッ!!


 フジこと藤村センセの不用心な行動に罵倒を浴びせる。

 数秒前にスル―した問いを再び投げかけて来たサキに、エイコは内心の焦りを悟られないよう表情筋を激励した。

 がんばれマイフェイス!悟られたら、君たちは近い将来過酷な労働を強いられる事になる――苦痛に歪むとか……!!



「……ええ〜と、あれね?ちょっと他の課題で時間食っちゃって。で、速攻で仕上げたから誤字脱字がかなりあったみたいで返されて。あと調べたい事もあったから手間取ってただけ?枚数も結構あってね~」


 だからPC借りに来たの、とうそぶく。余談だが現在我が家にPCは無い。したがって贅沢にも自分用を所持するマキを、検索目的で尋ねることはままある。不自然では無いハズ。

 幸いにも内容はバレていない様子だし、あとはソレが小論か何かだと勘違いしてくれれば、見せろだなんて言わないだろう。コイツが人の感想文なんか読みたいと思う訳が無い。

 

 なのに。


「そう、で、出来たの?見せて?」


 食 い つ い て き た !?

 

「って何の羞恥プレイ?!……あ」


 ここで私は後悔した。外は雪。とっさに家にあると言えば、流石に追及されることも無かったろうに、この正直な口は嘘をつけなかった。


 「「羞恥?」」


 案の定エイコの失言は両名に拾われる。

 目前のサキは、美形な面に怪訝そうな表情を浮かべて。後ろのベッドのイトコも同じく、と思っているエイコに反して、愉しげな顔をしていたと知るのは翌日遭遇したサキからの情報だ。


「イヤ、自分の文章って、読まれるの、恥ずかしく、ない」

 

 嗚呼今すぐ炬燵の中にインして外界との接触遮断したいぃ!!!

 なのに、ベッドから降りて、背後の隙間に座ったマキによって、成就しない。はいコンディションレッド―!!!


「エイコ、その宿題って何?」

 

 覗き込んできたマキの眼は、心なしかじゃなくキラキラと輝いている。

 例えるなら空腹状態でご馳走目前みたいな……!!私は食べられません!


「イヤ……だから、ふつうの」

「調べ事があるなら持って来てるよね?出して?」

「あの、だから」


 一度崩した態勢の立て直しは、そうそう出来るものではなく。

 うろたえた私は、ここに来てもう一度悔やむ事になる。


 追い詰められながらも、しかし私にはまだほんの微かな余裕があった。


 何故なら例の宿題は、ジンズのポケットに3回折ってミニサイズにした上でねじ込んでいたから。もともとのサイズだってA5。何よりソイツは担任の手書き作成で、パッと見高校の課題だなんて、誰も思わない。

 適当にバッグに在ると言って、無いならやっぱり家に忘れたのかもと、この場を凌げばいい……!


 ――なんて、思った自分の行動全て、奴らにはお見通しだったって事を。



「……ああ〜たぶんバッグにあるんじゃ〜」


 マキのデスクを指して、はははと笑う私。

 サキは眉を下げ、困ったような微笑で顎をしゃくる。後ろで、マキが溜息をついた。


 え、何。


「正直に言わないと、エイコのナカまで丁寧に探すよ?」


 さっきの苦笑は「手間掛けさせやがって」?!お前の考えなんて解ってんだよって鼻で笑った?!

 

 状況の芳しく無さに、逃走あるのみと炬燵を前方にスライドさせて立ち上がろうとする。が、真後ろにマキが来た時点で、それも織り込み済みだったと!背後から手を回されて身動きが取れず、両手を突っ張った状態で制止される。


 ナカを探るって?!その言葉に、スプラッタな想像が脳内を駆け巡る。幼いころに見たアニメの、土間で一心不乱に包丁を研ぐ老婆が、マキの姿にすり替わる……コ ワ イ……!!

 冷静になってほしい……!たかが宿題に、言葉が過激過ぎるんではなかろうか!?それで怯える私だって、知っててやってる!?


「弟のラブシーンに興味なんて無いけど、フジの宿題はホント、気になんのよね〜。だから、ヤっちゃって」


 スプラッタが何故にラブになるんですか馬鹿ですかアンタ!!

 と、ツッコもうとした声は出せずに、代わりに出た「むぅー!」という音に、マキの左手で口が塞がれている事に気付く。


 次いで、ぴちゃ――、と耳元で蠢く生温かい感触に、必死の抵抗を見せていたエイコの両足はビクッと静止した。


 全神経が、そこに集中する――。

 何をされているかなんて、これまでの経験で判りたくもないが解ってしまって。


 何もかも忘却して放心したツケは、瞬息の後エイコに回ってきた。


「見つけた――これ?」


 逃げようと腰を浮かせていた状態は、マキの手がジンズからソレを掴むのを手伝って。 

 いつの間にか開いたプリント用紙を、マキは怪訝そうに眺めた。どう見たって高校の課題には見えない。手書きの紙はいくつかの枠と、その上部に書かれた簡素な命令文で構成されている。


「フジの字ね――『異性・同性の名を5人あげろ』?何?」


「『それぞれに下記の色を充てろ』?……これ、ホントにそう?」


「さぁ?やけに言葉濁すなとは思って、だから気になったのよ。『ニュースソースその他を秘匿するのは義務なんだ!』とかなんとか、切られちゃって――?、私とアンタの名前のトコ、消した跡があるわね……赤と……紫」


「むううううううううう!!!!!」


 この時の私の焦りを理解して頂きたい。マジで羞恥プレイ!!

 ていうか担任!!あんたが秘匿の義務を遂行しても、宿題の存在を暴露した時点で手遅れなんですが!ニュースソースが秘密厳守出来ない可能性の考慮はされましたか!?お宅の友人の性格その他ちゃんと考慮しました?!


「……心理テスト?」


 ほらキターーーー!!


「イヤこれは全然当たって無くて、だから今考え中で!!」


 ようやくハズされた手に、急いでエイコは弁解する。心理テストは直感でやるべきだが、そんな前提は脳内に既に無い。

 終業式の前日、最後の授業で国語課担当の担任が、思いついたように既存の宿題にこれをプラスしたのを思い出す。最近やたらと心理テスト本を持ち歩いているなとは思っていた。まぁいつもの遊びだろうと軽視していたソレに、まさかここまで苦しめられると誰が思おうか。


「で、赤がサキで、紫が俺、ね」


 私が素直に白状する訳が無いとお分かりのマキは、カタカタとPCで調べ始める。

 場の雰囲気のヨロシク無さに、冷や汗通り越して脂汗が滲んできた。


 ヤ バ い……!!


 何かを予知したサキは、ニヤニヤしながら口元に手を充てている。私だけなら遠慮せず指さして爆笑するところを、この態度。ヤツは判っている……自分に充てられた色の意味を!!


 妙に静かな室内に響いていたタッチ音が途絶えたトコロで、マキがふーん。と意味ありげに呟く。


「くっ、アンタも馬鹿ねぇ。じゃ、私行くとこあるから。エイコ、お大事に〜」


 って何が!!?お大事にするところなんて、今のところ健康な私には無いんですが!何の予告!!

 サキが退室したのを見送って、マキの腕に囲まれたままだった私は世を儚みたくなった。


 顔を両手で固定して覗き込んでくるマキの笑顔が、眩しすぎる……!



「で、エイコ。実地体験とお仕置き、どっち先にする?」

  

 



 とっとと消えたイトコは、やはり心理テストの結果を知っていたようで、この後の悲劇を憂えて帰宅は深夜になったとか。


 番外編初作成です!

 いつも来て下さっているかも知れない方(←自分が落ちこまない為のネガティブ保険)、偶然通りかかった方、こんにちは!!


 タイトルはまんま、エイコの悲劇(笑)ていうかこの話、エイコの悲劇で構成されていると言っても過言じゃないような……(←ヒドイ)

 時系列は本編後、もしくは前でもイケるような……?今修正中なので、後々(かなり現状と)変わると思いますが……

 ちなみに深層心理の色イメージで検索して、適当にいろんなページ参考にしたなんちゃって心理テストなので、すみません(とりあえず謝る)

 

 サキが気になったのは担任と××だからなのかただエイコをイジメたかったのか、はたまた別の意図があるのか……!!話は膨らむのかどうなのか……!!←断言をしない事を覚えた作者(笑)

 

 それではまだまだ寒いので、皆さまご自愛ください(>∀<)

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