ギフト設定で思い止まる愚か者
恋は人を盲目にし、さらに愚かにさせる。
SNSに宝飾ブランドの広告が流れてきた。
その指輪の構成に自分と片想いする子の誕生石が使われている記述を目にし、さらに発売日当日ということもあり、運命を強く感じてしまう。
スマホで探すと一番近い実店舗は電車で1時間半。
「行くか……」
距離もだけれど、値段が三万円近くて悩む。
手に取りやすい価格帯のブランドだけれど、それでも学生には高く、けれど貯金を下ろせば手が届かないという事もない。
しかし、電車もお金がかかる。
今すぐ動けば閉店に間に合うが、新商品のため品切れの場合は無駄足になってしまう。
一度運命を感じてしまうと、好きな子との誕生石が使われた指輪が魅力的で、どうしても欲しくて堪らない。
駅へ走り出しそうになる気持ちを抑え、オンラインショップを検索。
すると即ヒット、高鳴る期待を伴い指輪をカートに入れる。
彼女のサイズは知らないが、とりあえず10号にし、衝動的に会計ボタンをタップしていた。
登録無しでゲスト購入が可能で、しかもクレジットカードの他に支払い方法があり、必要事項に個人情報を入力していく。
「届け先は自分でーー」
熱に浮かされ指が動いていたが、注文確定手前のギフト設定で唐突にブレーキがかかった。
メッセージ欄で止まり、深く瞬きをした。
何で渡せないアクセサリーを求めてたのか、冷静に立ち返り冷や汗が出る。
好きな子と自分の誕生石が使われた指輪を持ってるなんて、最高にキモくて自分ながら狂ってるし、中々にドン引きでしかない。
「まったく……高くて渡せない物より、彼女の好物だ」
まだ指輪が欲しい熱が燻る中、コンビニに入り彼女の好きなグミと新作のジュースを手に取った。
グミを一粒口にし、乳首と同じ食感らしいと言っていた友達が頭を掠めた。
しかも片想いの相手を思い浮かべてしまって、慌ててジュースをあおって呑み込んだ。
「ごほっごほ……!」
急な炭酸に喉が驚き、予想を上回るフレーバーの香りに咽せる。
涙を浮かべ咳き込んでいると、不意に声がかかった。
「大丈夫? それ美味し? 私も見かけて気になってたんだよね」
咽せながら渡すと、彼女は受け取り一口。
「うー、苦手かも。ん、グミちょーだい」
ジュースを返す彼女は、グミを見つけてニコニコになり、返事よりも先に手が伸びる。
もちろん、愚かにさせられた身として厭もない。
そんなやり取りと空気感に、渡せもしない指輪よりもお菓子を選び正解と口元が綻ぶ。




