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マタギの里で、最強の獲物にされました〜クマとイケメンに囲まれて、私の命と恋は持つのか!?〜  作者: AAA


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8/10

第7話:陽気な次男と、ヒロインの奪い合い

 小屋の中で、私は慣れない手つきで、冬真の脇腹の傷を水で清めていた。


冬真は呻き声一つ上げないが、その額には冷や汗が滲んでいる。


「……都会の女が、何でこんなことまでする」


冬真は、私から顔を逸らしたまま、低い声で呟いた。


「恩返し、ですよ」

「恩など、山に捨てていけ」


「私にとっては、命を救ってくれた大切な恩です。それに、あなたがクマと戦ってくれたおかげで、里の誰も襲われずに済んだ。里の皆も、そのことを知ったら感謝するはずです」


冬真は鼻で笑った。


「くだらん。マタギは里の盾だ。褒められるためにやっているのではない」


(うわ、完璧主義者でクール! 攻略しがいがありすぎる!)


彼の手当てを続けていると、小屋の外から、軽快で明るい声が響いた。


「冬真兄さーん! 生きてるかー!?」


ドンドン、と勢いよく戸が叩かれる。


私と冬真は、同時に顔を見合わせた。


「誰だ」

「俺だ! 秋人アキトだよ、弟の!」


(弟!? また攻略対象!?)

(やだ、この里、イケメンの密度が高すぎる!)


冬真は舌打ちをした。


「帰れ、秋人。今は誰とも会いたくない」

「冷たいなー。珍しく兄さんが深手を負ったって聞いて、差し入れ持ってきてやったのに」


秋人は構わず、戸をガラリと開け、小屋に入ってきた。


「よう、兄さ――って、おや?」


小屋の薄暗い光の中、私と、上半身裸で寝床に横たわる冬真を見て、秋人は目を丸くした。


そして、すぐに満面の笑みになる。


「へぇ。これはこれは。都会から来た噂のツバキちゃんじゃないか!」


彼は一歩踏み出し、私の目の前まで来ると、手を差し伸べてきた。


「俺は秋人。冬真の弟で、里のムードメーカー担当さ。いやぁ、こんなところで会うなんて。運命ってやつかな?」


差し出された手は、冬真とは違い、荒々しさの中にもどこか女性慣れした優しさを感じさせる。


(きた! これがサブキャラ枠、優しく陽気な癒やし系か!)


(この顔面偏差値の高さ、やはり攻略対象に違いない!)


私は彼の手に手を重ねようとしたが、その瞬間。


バシッ!


秋人の手が、冬真の鍛えられた左腕によって、激しく払われた。


「何を馴れ馴れしい真似をしている、秋人」

「痛ぇなぁ、兄さん。兄さんの『獲物』に挨拶しただけだろ?」


秋人は目を細め、冬真を挑発するように笑った。


「兄さんは怪我してるんだ。ツバキちゃんみたいな可愛らしい女性は、優しくエスコートしないと。俺の獲物にするためにね」


「貴様に、この女に手を出す許可は与えん」


冬真の眼光が鋭くなる。


先ほどまで、傷の痛みに耐えていたはずなのに、弟が私に近づいた途端、獣のような威圧感を放ち始めた。


(うわあああ! 攻略対象同士の火花バチバチイベントきたー!)

(冬真さんが私を巡って、弟と争ってる!? 最高すぎる展開!!)


私は思わず、興奮で小さく震えた。


「へっ。相変わらず独占欲が強いな。いいか、ツバキちゃん」


秋人は冬真をちらりと見てから、私の耳元に顔を近づけた。


「兄さんは、冷たくて不器用な上に、獲物に近づく男は全て排除するめんどくさい性格だ。看病なんて、放り出して俺のところに来なよ。もっと優しく、楽しくしてあげる」


優しく、甘い言葉。


しかし、その瞳の奥には、兄である冬真への挑戦的な輝きがあった。


この里の男たちは、私という獲物を巡って、すでに戦いを始めているのだ。

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