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マタギの里で、最強の獲物にされました〜クマとイケメンに囲まれて、私の命と恋は持つのか!?〜  作者: AAA


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5/10

第4話:年下のツンデレと、火花の散る兄弟

 クマ騒ぎから数時間後。


私は、祖母の家の玄関前で、先ほどまで足が震えていたのが嘘のように、ぼんやりと座り込んでいた。


(冬真さんに助けられちゃったな……)

(「俺の所有物だ」なんて、あのクールな顔でサラッと言われたら、こっちの心臓が持たないわ!)


このシチュエーション、完全に「難攻不落のメインキャラに、いきなりフラグを立てられた」状態だ。


乙女ゲー的には大勝利だけど、現実としては怖すぎる。


(せめて、クマ避けの鈴くらい持っておけばよかった)


そんな反省をしていたとき。


「チッ。バカの癖に命拾いか」


突然、背後から投げかけられた声に、体が跳ね上がった。


振り返ると、そこに立っていたのは、やけに垢抜けた顔つきの少年だった。


年の頃は十代後半。細身だが引き締まった体をしており、やはり狩装束を身につけている。


「あ、あなたは……?」


「……別に、どうでもいいだろ。よそ者の女が」


春樹ハルキと名乗ったその少年は、私を心底軽蔑するような目で見ていた。


(わ、分かりやすい敵意!)

(なんだろう、この子は。里の男の子はみんな、こんな感じなの?)


春樹は私の足元に、何かを投げつけた。


チリン、チリン。


それは、真新しいクマ避けの鈴だった。


「なんでクマに遭遇する女が、こんなもんも持ってねぇんだ。アンタが山を荒らすから、里の迷惑になるんだよ」


「え、あ、ごめんなさい……」


怒鳴られた私に対し、春樹はフン、と鼻を鳴らした。


「別に、アンタのために持ってきたわけじゃねぇ。里の連中にこれ以上迷惑をかけたくねぇだけだ。二度と、山には近づくな」


そう言い捨てると、彼は私から顔を逸らし、来た道を戻ろうとする。


(うわ、典型的ツンデレの教科書みたいな言動!)

(でも、やっぱり根は優しいんだ。私、ちょっと感動したかも)


「あの、ありがとうございます! 大事に使います!」


私が素直に感謝を伝えると、春樹の耳がほんのり赤くなったような気がした。


「うるせぇな! 感謝なんていらねぇ!……っていうか、アンタ」


彼は私に一歩近づき、鋭い目つきになった。


「冬真兄さんに、余計な色目使うんじゃねぇぞ。あの人は、アンタみたいな都会の女が一番嫌いなんだからな」


(えっ)

(冬真兄さん!? この子、あのクールマタギの弟だったの!?)


どうやら、春樹は冬真の実の弟、または従弟のようだ。


そして、彼が持つ私への敵意は、都会への憧れと、兄(冬真)への対抗心や尊敬が入り混じった、複雑なものだと察した。


「俺は、アンタがこの里で一番の厄介者だって、証明してやるからな!」


そう、捨て台詞のように言い放ち、春樹は足早に去っていった。


クマ避けの鈴だけが、私の手のひらで寂しく鳴っている。


(わー……)


(攻略対象、二人目登場だ……しかも、兄弟間のギスギス付き!)


(これは乙女ゲーでいうところの、隠しルートの鍵になりそう……!)


春樹に突きつけられた言葉は、主人公である椿の*「都会から来た者」としてのアイデンティティを揺さぶる、重要な要素となるだろう。


マタギの里での生活は、思っていたよりもずっとスリリングになりそうだ。

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