STORIES 059: 異国の夜とエアメール
海外から届く絵葉書や手紙。
何度かもらったことがあるけれど、あれはすごく素敵な贈り物だと思う。
美しい風景や、その地域の象徴的なデザインはもちろんのこと。
そのとき、異国の地で出逢った出来事や、感じた気持ち、これからの予定など…
物語を読むように、こちらもワクワクする。
そして何より…
特別な旅先、滞在先で、僕のことを思い出してくれたこと。
わざわざそこから、僕宛てに旅の便りを送ってくれたこと。
その気持ちが嬉しい。
もちろん、他の相手にも送っていて構わないのだけれど…
ちょっと特別な存在として扱われている気になれる。僕は単純だからね。
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沢木耕太郎の有名な「深夜特急」。
僕はあの作品、特に大沢たかお主演でドラマ化されたものが大好きだ。
ある青年が、乗合バスを使って世界を旅する物語で、訪問先でさまざまなドラマが起こる。
そして、その場面を彩る音楽。
何度も何度も繰り返し観てきた。
いつかあんな旅をしてみたい。
旅行とは、この味気ない日常を離れることのできる、人生のスパイスだ。
普通は、日々を旅行に充て続けることはできない。
だからこそ、特別な経験となるのだ。
僕はもっと旅をしていたい。
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スペイン、フランス、オーストリア、イタリア…
どれも行ったことのない土地ばかり。
僕に届いたエアメールは、確かにその土地、その場所に存在していたものなのだ。
憧れるなぁ。
羨ましいなぁ。
どんなところなんだろう?
遠い異国の地に想いを馳せる。
差出人、その人自身のことも思い浮かべ…
いつか自分でも、そういう魅力的な文章を添えた絵葉書を、特別な人たちに送ってみたい。
とても遠い、海の向こうの滞在先から、ね。
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異国の夜、薄暗い灯りの下でしたためる…
その場所、その瞬間に感じた想い。
それを受け取ったあなたは、どんな気持ちになるだろう。
笑顔で眺めるだろうか。
マジメな顔で読むだろうか。
呆れたように笑うだろうか。
でも、どうせならば…
あなたと一緒に旅をするほうが、もっとずっと楽しいのだろうな。