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第4話 ミラーガール

 すると、政府の要請を受けた警察や軍隊がやって来て三人は囲まれてしまった。

「手をあげろ!」

「え、なんで⁉」と、ゼトリクスは手をあげた。「今さら来やがって! 全員ぶっ飛ばすぞ! さっきの虐殺人工知能みたいにな!」

「そっちの手をあげるかよ⁉ 平和を望むんじゃなかったの⁉」

「ここは俺に任せておけ」

 そう言ったDHに当局への対応を任せて、ゼトリクスとクロオビは待合室のようなところで待たされることになった。小さなクロオビと長身のゼトリクスで遠目から見ると兄弟に見えた。

 クロオビはひどく疲れてうつらうつらしていたが、ゼトリクスは暢気だった。

「あ、そうだ、聞きたいんだけど」

「……え、なに?」

「なんで、サイバーガールからみんなのこと救おうとしてたの? 危ないし死ぬかもしれないのに」

 ゼトリクスに訊かれたが、クロオビ自身も何故かよくわからないでいた。

「助けないといけないと思ったからかもな」

「はっ? なんだよそれ」

「僕たちは人を助けたいと思っちゃうんだよ。困っている人をほっとけないんだ」

「へぇ。面倒くさい性だな~」

「そうかもね」

 ゼトリクスは自分の前にいる少年たちは只者ではないのかもしれないと思った。見ず知らずの人のことを、自分には出来そうもないと思った。

 二人は人間としてとても信頼できる人たちなのではと思った。

「お前らって、すごい良いやつだな」

「そうかな? ありがとう」

 そこに一仕事終えたDHがやってきた。

「俺たちは自由の身だ」

「そうか。DH、ありがとう」

「なあ、警察って偉い人たちだろ? どうやって言いくるめたんだ?」

「未解決事件を何件か解決して汚職をバラすと脅した」と、DHは不気味な笑顔で言った。

「え、どういうことだよ?」

「あれ、なんだろう?」

 クロオビが気づいた方を見ると、何人かの警察官が連行されていき、その様子を報道陣が囲んでいるのが見えた。

「警察署長! 麻薬と武器の密売や殺人を容認していたって本当ですか⁉」

「うるせえ! 司法何てゴミだ! 死ね!」

 ゼトリクスとクロオビは恐る恐るDHを見た。DHは不敵な笑みを浮かべた。

「未解決事件の犯人は全て警察が起こしたことでよかった」

「よくはないよ! 怖いよ!」

「……⁉」ゼトリクスはあまりの真実に怪我んな表情をした。「なんだよ、この街。もうちょっとあの娘とその軍団に壊させた方がよかったんじゃねぇの?」

「……確かに」

「え……二人とも、そんな事言わないでよ」

「だけどよ……」

 すると、クロオビの耳に、人手が足りない、助けてほしいという人々の声が聞こえてきた。

「た、助けないと」

「俺も行く」

「え~……こんな街救う必要あるか?」

「救う価値がない命なんてないよ」

「なんじゃそりゃ?」

「来たくなきゃ来なくていいぞ」と、DHが冷ややかに言った。

「そう言われると行きたくなるだろうが」

 ゼトリクス、クロオビ、DHは他の街や国からやってきた人々と共に救助活動に参加した。

「救急ヘリよりオレの方が早い!」

 それに気づいてゼトリクスは病院に何人ものケガ人を連れて行くことができた。

 そして、最後の一人の少女を運び終えた時であった。ゼトリクスの前に、彼らに助けられた人々のなかにいた少女がトコトコとやってきた。彼女がロングコートの袖を掴んできた。彼女は何も言わなかったが、目でありがとうと言っていた。

 ゼトリクスは思わず優しい笑みを浮かべてしまった。


 一通り終えた後、三人は街を抜けて帰ろうとした。

「ちょっと待て。ゼトリクス、これからどうする?」

「……。どうしよう」

 ゼトリクスは、この後どうしたらよいのかわからなくなっていた。

「……ゼトリクス」と、DHはいった。「サイバーガールから街を守るついでに……」

「ついでに⁉」

「ああ。お前のことを世界中のデータから調べてみたんだが……」

「そんなことできんのかよ⁉」

「ああ。お前はこの地球上の存在ではなかった」

「……へ?」

「ど、どういうこと?」

「もしかして、オレって宇宙人⁉」

「そうかもしれないと思って、調べてみたら……」

「調べてわかんのかよ⁉」

「地球にいる宇宙人リストの中にお前のデータはなかった。お前の情報はこの世に存在しない。すなわち、どんなコンピュータを使っても、お前のことは分からないということだ」

「……えっと、つまり?」(今、宇宙人のリストって言わなかった?)

「お前の記憶を探るには、お前自身が頑張らないといけないということだ」

 ゼトリクスは途方に暮れた。何かを思い出そうとしても思い出せない。あらゆることからやる気が失せてきて、悲しい泣きたい気分になってくる。

「ゼトリクス」と、クロオビが言った。「僕らも協力するよ。君の記憶を探ること」

「……いいのか?」

「うん」「ああ」

「二人とも、ありがとう」

 ゼトリクスは心の底から感謝し、DHとクロオビも彼を助けようと思っていた。

「心の底ってドンくらい深いんだろうな?」と、ゼトリクスがボソッと言った。

「人によるだろ」と、DHがぶっきらぼうに言った。

「なに言ってるんだ、この二人……」(けど仲良くなれそうでよかった)


 そのあと、三人はレトロチックでおしゃれなカフェに向かった。しかし、『close』と看板がしてあった。

「ねぇ、閉まってるっぽいけど、勝手に入っていいの?」

 というゼトリクスをよそに、DHがカウンターに入って行った。

「何がいい?」

「え、もしかして……」

「うん。DHがやってるカフェだよ」

「マジかよ! なんかカッコいい」

 DHが美味しいブラックコーヒーを淹れてくれた……と思った時であった。

 ゼトリクスがふと窓ガラスを見ると、反射して写っていたのは自分の顔ではなく、透明感のある美少女の顔であった。

「オレって女だったっけ?」

「え、何言ってんの?」

 すると、窓ガラスの中からその美少女が飛び出してきて、ゼトリクスを蹴り飛ばした!

「はっ⁉」と、クロオビはゼトリクスに駆け寄った。「だ、大丈夫⁉」

「あたしは強盗ミラーガール! このカフェをいただきに来た!」

 彼女は鏡などの反射するものを通じてどんな場所にも移動でき、それを通じて様々なものを取り出すこともできる能力を持つ!

 それを、DHは分析してカフェ中の窓という隠しボタン一つで窓を全て閉めて、中を真っ暗にした。

「え、ちょっと、まって! 何も見えない……⁉」

「光がなければ反射できない」

「ぬあ~⁉」と、ミラーガールは真っ暗な中で怒鳴った。

「そこか⁉」

 その声で、真っ暗中クロオビは彼女の居場所を見抜いて羽交い絞めにしてしまった。

「こ、こうなったら無から鏡を……」

 すると、真っ暗なカフェの中にキラキラと光り輝く無数の鏡からできた可笑しな集合体が出来上がった。

「おっしゃ、オレに任せろ!」

「え⁉」

「え、ちょ、まだ制御が~⁉」

 ドカン、ヒューン!

 ゼトリクスはミラーガールを投げ飛ばし、彼女はカフェの屋根を突き破ってどこかに飛んで行ってしまった。

 そして、彼女が作った鏡の集合体だけが残った。

「あれ、遠くに投げれば消えるかと……」

「なにしてんの⁉」

 バン!

 突然、DHがクロオビとゼトリクスを突き飛ばした。次の瞬間、DHは空気が破裂したような音と共に後ろに吹き飛ばされてしまった!

「DH⁉」

 クロオビはすぐに起き上がって、遠くに倒れているDHを心配して叫んだ。

「なんだあいつ突然……うわっ!」

 すると今度は、ゼトリクスが異変に襲われた! ゼトリクスが空中に浮かんで、鏡の集合体に吸い込まれていく!

 クロオビはとっさにゼトリクスのロングコートの袖を右手でつかみ、少しでも抵抗するために体を横にして片方の手で柱を掴んでいた。しかし、クロオビも吸い込まれそうになってしまう!

「おい! もう片方の腕で僕の腕をつかめ!」

 クロオビはゼトリクスに向かって叫んだ。

 ゼトリクスはクロオビの袖をつかんでいる腕に手を伸ばした……と思いきや、ボタンに手を伸ばして外し始めた!

「……! おい! なにやって……」

 するとゼトリクスの上着があっという間に脱げ、その上着の持ち主は、吸い込まれ、跡形もなく消えてしまった!

「ぜ、ゼトリクス!」

 クロオビは叫んだ。しかし、それに答える者はいなかった。


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