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第九話 ゲームマスターガール

 目が覚めると、三人は何人もの美少女たちと共に絶海の孤島に閉じ込められていた。

 首には爆弾付きの鋼鉄の首輪がつけられていた。

「うわ、どんな状況だよ⁉」

「目覚めたか、戦士たちよ……」

 声の聞こえた方を見ると、みんなをこの島に閉じ込めた美少女、ゲームマスターガールの姿がホログラムで映し出された。彼女はゲーミングパソコンやその類の装置についているカラフルな電飾を思わせるような装飾を施した恰好をしていた。

「その服、目がチカチカしないの?」と、ゼトリクスが言った。

「お前たちには……」

「聞けよ」

「……これから殺し合いといくつかのクエストをこなしてもらう。試合を放棄したり、その首輪を無理やり外そうとしたら爆発する」

 ……と、DHがタブレットを見ながら言った。

「おい、この野郎!」と、ゲームマスターガールは怒った。「アタシがかっこよく説明しようとしたのに全部しゃべりやがって! つか、そのタブレットどうやって持ち込んだ⁉」

「ここのガラクタから作った」

「な、なに~⁉ ……こ、今度の島は、廃墟もガラクタも残さずきれいに掃除しないと……」

「な、何のつもりだよ一体、僕らを殺し合わせて何がしたいんだ?」

「夢だったんだよ、ゲームみたいに他人の命を弄ぶのがな! ふん、こうなったら仕方がない、一人ずつ頭を吹き飛ばしてやる! まずはそこのイケメンからだ!」

「オレ⁉」

 そして、ゼトリクスにつけられていた首輪が爆発した。クロオビとDHは思わず駆け寄ったが、やはり、彼は無傷だった。

「ゼトリクス、大丈夫⁉」

「おう。破壊光線も核ミサイルも大丈夫なんだからこれくらい平気だろ。兵器だけにな」

 少女たちの中からクスクスと笑い声が聞こえた。その娘は周りの娘に振り向かれて気まずくなった。

「……お前」と、DHがにやけながら言った。「イケメンって言われてすぐ自分だとわかったよな」

「自分のこと美男子だと思ってたのか……」と、クロオビは少し呆れた。

「ナルシストだな」

「自分に変に自信がないよりいいだろ」

「そうだね、確かに」

「適度な自信は力になる」

「そして力こそ正義だ」

 そんな会話をする少年たちを見て、ゲームマスターガールは驚愕のあまりポカンとしていたが、気を取り直そうと首を振った。

「そいつはもういい! その頭全員吹き飛ばしてやる!」

 しかし、スイッチを押しても爆発しない。DHがハッキングして食い止めていたのだ。

「なに、こうなったら直に殺してやるまでだ! 運営軍団、行け!」

「もう何がしたいんだよ!」と、クロオビはつい怒鳴った。

 そして、武装した殺し合いゲーム運営側の軍隊がゾロゾロとやってきた。次々と現れる彼女たちを、クロオビが迎え撃つ。

「誰も殺させなんてしねぇ! 二人とも、僕は軍団の相手をする!」

「ああ。ゼトリクス、俺が何とかハッキングしているうちに、みんなから首輪をとるんだ。急げ、長くはもたん」

「わかった、行ってくるぜ! 助けたお礼に惚れられるかも!」

「じゃあ、俺の奴隷とクロオビのハーレムも探しといてくれ」

「二人とも何言ってるの⁉」

 クロオビが運営側の兵士をなぎ倒し、DHがシステムを食い止め、ゼトリクスが死の首輪から少女たちを救って行った。

「ムニャムニャ……ん?」と、ウィザードガールが起き上がった。「って、何この首輪⁉」

 彼女は首輪を無理やり外そうとして……爆発した。

「な、おい、え……⁉」

 ゼトリクスは、落ち込みながらDHとクロオビの元に帰った。軍団は倒されて、参加者の少女たちも開放されていた。

「こ、この~⁉」と、ゲームマスターガールは怒った。「こうなったら核ミサイルだ!」

 そして、みんながいる孤島に核ミサイルが発射された。

「まずい、核ミサイルが発射された」

「え、止められないの⁉」

「他は防いだが、最後の一発はもう間に合わない。だが……」

 そう言って、DHが見たのは意気消沈したゼトリクスだった。

「だけど、ゼトリクスにも危険が……」

「どちらにしろ、このままだとゼトリクス以外全員助からない。しかし、コイツの能力なら何とかなる可能性がある」

 クロオビは、ぐったりと横になっているゼトリクスに寄り添った。

「ゼトリクス、お願いだ、アレを止めてくれ」

「無理だ!」と、ゼトリクスは叫んだ。「みんなを救えると思ってたのに、救えなかった。何やったって無駄だ……オレには記憶の代わりに力があると思ってたけど、どうってことなかった」

「君には、力がある。力こそ正義なんだろ? その正義で、僕らを、みんなを救ってくれないか? 君ならできる。記憶がなくても、力と、自信と、勇気があるじゃないか」

 クロオビにそう言われて、ゼトリクスは立ち上がった。そして、浮かんだ。

「オレは、飛べる」

(改めてみるととてつもないな)DHは感心した。(物理法則に逆らえるとは、アイツはなら、やはり……)

「みんなを救える」

 そして、ゼトリクスはみんなを救うために飛んで行き……戻ってきた。

「で、何を止めればいいの?」

「話聞いてなかったんかい⁉」(そんなに落ち込んでたのか……)

 そして、ゼトリクスはDHに言われた方向に向かって飛んで行った。

 すると、こちらに向かって飛んでくる核ミサイルが見えた。高速で飛ぶそれに追いついて、それをヨイショとなんとか掴み、怪力で弾道を変えた。


 そして、軌道を変えられた核兵器はある工場に向かって落ちていった。

「やった! 二台も試作品を壊されたけど、このついに完成した殺戮破壊自動車で街を恐怖に陥れてやれる! それもこれもアンタの……なんだ⁉」

 ドカーン! 工場も殺戮兵器の数々も破壊された。

「おれの車が~⁉」


「お~い!」と、ゼトリクスが空を飛んで、スタッと帰ってきた。

「ゼトリクス、ありがとう、お疲れ様!」

「よくやった」

「おう! いや~、頑張ればなんとかなるもんだな」

 ゲームマスターガールはもう何もできなくなってしまったが、諦めてはいなかった。

「ふ、フハハハハ! 確かにバトルロワイヤルは食い止めたようだが、この絶海の孤島から脱出できるかな⁉」

 そして、ゲームマスターガールからの通信が切れて、島は外部から遮断されてしまった。

「そうだよ、どうしよう、DH。僕ら閉じ込められちゃったよ・・・・・・」

「心配ない。島の位置なら大体把握した。ゼトリクス、飛んで行って確認してきてくれ」

「おっしゃ!」

 三人の少年によって、絶海の孤島からの脱出計画が進められた。

 そんな様子の彼女たちを見て、美少女たちは……。

「ねぇ、わたしたちって必要だったかしら?」

「完全に背景だったよね?」

「あれよ、にぎやかしよ!」

「それって必要ある?」

「死ねばいいのよ」

「てか、アタシ爆発する必要あった⁉」と、ウィザードガールが怒鳴った。

「お前、生きてんじゃねぇか⁉」

「あれくらいで死んでたまるか! よし、今度こそお前ら全員ぶっ殺して魔法の材料にしてやる! そして、このバトロワのチャンピオンはアタシだ!」

「そうはいくか!」

 そう言うと、ゼトリクスは彼女を掴んではるか彼方に投げ飛ばした。

「アタシ、まだ何もしてな~い!」

 ウィザードガールははるか彼方に吹っ飛んで行った。

「ふん、変にメンタル攻撃しやがって!」

「いや、なんで投げたの⁉ それに、なんであの娘はここに?」

「ミラーガールが先に脱出させてやったんだろう」と、DHが理由を言った。

「そ、そうか……強盗するような悪い娘だけど、妹思いではあったんだな……」

「……そうか」ゼトリクスに罪悪感が芽生えた。「今度からはよく考えて人を投げ飛ばすことにするぜ」

「いや、投げ飛ばすなよ! 今更だけど!」

「いや、もしかすると」と、DHが面白そうに推測を言った。「ミラーガールのミラーゲートは正確ではない時もある。ウィザードガールはマシンガンで撃っても頭を吹き飛ばされても大丈夫なくらい不死身なようだから、行き先が安全な場所か確かめさせた可能性もあるな」

「あ、やりそう」

「やめなよ……」

 その様子を見て、美少女たちは戦慄していた。

「ちょっと、さっきの見た⁉」

「女の子投げ飛ばしたわよ!」

「逆らわないようにしよう……」

「死ねばいいのよ」

「アンタはさっきから何なの……」

「みんな、協力しろ」と、DHがお構いなしに話しかけてきた。「みんなで船を作るぞ。指示に従え」

「え、え~……」

「……。死ねばいいのよ」

「だから何なの⁉」

「……奪う側に回りたかったのよ」

「そ、そうなの」

「だけど、船なんて作れんのかよ?」と、ゼトリクスが気だるそうに言った。

 その言葉にはみんなも同感であった。普通の子どもの自分たちにそんなことなどできるのだろうか。ただでさえ先ほどの状況に翻弄されているというのに。

「ここにいるみんななら絶対できるよ」と、クロオビがみんなを励ますように言った。「ここにいるみんなで殺し合いをしろと言われたのに、みんなはしっかり戸惑った。それはみんながその状況が怖かったからじゃない。みんなが殺し合うよりも協力し合ったりする方が好きだからだよ。今だって話してたじゃないか」

「へ~、そうか」と、ゼトリクスは納得した。「確かに殴り合うより話し合う方が楽だしな」

「そうだ、合理的だ」と、DHも言った。「それに、無茶なことはさせない。得意だったり出来たりすることを教えてくれ。それに合わせて役割を振り分ける。ゼトリクス、お前は百人力だからいろいろやってもらうぞ。お前が要だ」

「お、じゃあオレがいないとダメってことだな! やってやるぜ」

 張り切っているゼトリクスを見て、クロオビは彼が元気になったようでホッとしたが、幼い体の自分に何ができるのだろうかと、気持ちが沈んでいた。しかし、そばで何人もの少女たちが恐怖と不安で心細そうに、泣き出しそうにしているのが見えた。

「みんな、もう大丈夫だからね。誰も恐い目には合わせないよ」

「ほ、本当?」

「うん。無理しないでいいから」

 クロオビはみんなの心のケアに回り、DHは指示を出して、ゼトリクスは動ける子どもたちと共に船を造るのだった。

 殺し合いどころか協力し合っていた。


 ゲームマスターガールのアジト。

「ちくしょう! バトルロワイヤルを金持ち共に見せて、賭け事とかさせて大儲け、そしてさらにデスゲームをやるはずだったのに⁉」

 そう怒鳴り散らしながら、島の様子を人工衛星のカメラから見てみると、彼らはみんなで協力して作った巨大な船で脱出するところであった。

「……あ」と、ゲームマスターガールは今頃になって思いついた。「こいつらの脱出する様子を動画サイトとかに配信すれば稼げたんじゃ……うわ~! なんで思いつかなかったんだ~⁉」

 完璧な計画に完璧な設備であった。しかし、選んだ参加者が悪かったのである。


 そして、ゼトリクスたちみんなは故郷の国の港に辿り着いたのであった。

 クロオビは新しい友達たちと別れを告げていた。

「あたし、善人になれるかな? 誰かと友達になれる?」

「うん。だから死ねばいいなんて言っちゃダメだよ。その言葉は君が死にたいと思うほど苦しい思いをした反動だ。それを何かで爆発させたかったんだろう。もう耐えなくていいし、イヤなことからは逃げたっていいんだよ。それに、もう君と僕は友達だよ?」

「……ありがとう」と、彼女は泣いて喜んだ。

「うん!」

「いや、何があったんだよ⁉」と、傍から聞いていたゼトリクスは言った。

 こうして、命の危機にあった子供たちは解放されて、三人の少年たちだけが残った。

「……。オレの家族は来なかったな」

「ゼトリクス……」

「もしかしたら、オレのことを知っている誰かが来てくれるかもって思ったんだ」

 ゼトリクスは感動の再会を果たしている親子や友達を見ながら、自分にもそんな誰かがいたらなと思い、寂しく感じていた。

「この事件のことは世界中に警察やメディアを通じて報じられている」と、DHは言った。「それでも来ないということは記憶がなくなる前のお前には、家族や友と言える存在がいなかったのかもしれない」

「うげ、マジかよ……」と、ゼトリクスはつぶやくように言った。

「ゼトリクス?」と、クロオビは悲しそうに俯く彼を見上げていった。

「……なんだよ?」

「君は、たくさんの大事な人を守って救ったんだ。たくさんの人に孤独で寂しい思いをさせなかったんだよ。誇りに思うべきだよ。そんな君なら誰からだって大事にされるよ」

「そうかな?」

「そうだよ。それに、僕らにとっても、君は大事な存在だよ」

「クロオビ……」と、ゼトリクスは嬉しいのに泣きだしそうな顔をした。しかし、耐えた。「な、なんだよ、お前。告白みたいな事いってんじゃねぇ!」

「え⁉ だって本当だしさ……君は大事だよ」

「やめろ、野郎から言われたってうれしくねぇ! なあ、DH?」

「なんで俺に振るんだ」と、DHは笑った。「お前本当は嬉しいんだろ。恥ずかしいのか。そう言う態度の方が恥ずかしいし、照れ隠ししている少女みたいだぞ。あと意地を通すなら最後まで否定してみろ」

「……う、うるせぇ! オレの方がヘンみたいじゃねぇか!」

 そう言うと、ゼトリクスはどこかに歩いて行こうとした。

「あ、ゼトリクス……」

「まあ、待て。どうせ戻ってくる。少し反対方向に歩いてみよう」

「え……」

 DHとクロオビが反対に歩いて行くと、トコトコと早足でゼトリクスは戻ってきた。

「なんだ、止めてくれると思ってたのか?」

「……うるせぇ」

 ゼトリクスはこのまま二人がどこかに自分を置いて行くのではと不安に思ってしまっていた。ものすごく悔しかった。

「すまん、クロオビ。ヘンだったぜ」

「いいよ。そんなの気にしてないよ」

「仲良しか、お前ら」

「そうだといいな」「そんなんじゃねぇ」

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