プロローグ
この世界が一冊の本だとする。書物はもちろん、太古の石碑、映画のフィルムに、漫画の原稿、電子書籍まで保管された巨大な図書館にある気が遠くなるほどの物語の一つだ。
それがページも表紙もバラバラに分解されて、図書館中に散らばされる。他の書物も同様に。それを適当につなぎ合わせて読んだり書いたりして見たら? 或いは、なかったはずのページを自分で書いて加えてみたら? そんなことができるとしたら、世界は混沌に満ち溢れるであろう。場合によっては世界を支配することもできるかもしれない。
図書館という無数の世界の保存庫が強大な何者かに襲撃されて、デタラメにページを破かれて落書きされ、バラバラにされて、適当に組み合わされる。そうしてできたのが、今の世界だとしたら? こうなったら、誰にも直せない。物語の登場人物たちは、あるはずだったかもしれないハッピーエンド、あるいはバッドエンドにも辿り着くことができなくなる。
世界観、時系列、人物相関図、パワーバランス、ジャンル、そしてキャラクター設定。全てが破綻しているからだ。
では、作者にもう一度思い出して書いてもらうのは? 無理だ。自分の創造物をそこまで破壊されたら、そんな気力など起こせないだろう。内容を思い出そうとしても、無理だ。この図書館を破壊した者は、作家やクリエイターの意欲、それだけでは飽き足らず、もしかしたら命おも奪ってしまったのかもしれない。つまりは、神を滅ぼしてしまったのだ。
では、試しにその読者やファンに任せてみるのは? それは愛が強すぎて二次創作、あるいはまったく新たな物語かもしれない。また、この壊されてしまった大好きなスーパーヒーローものに、大好きな魔法少女ものを加えてみたら? などという混沌として自分本位でしかないことを初めてしまう者もいるかもしれない。
世界という物語は破壊され、元には戻らない。誰にも直せない。
この世界という物語は、どうなるかわからないのだ。誰にも分からない。
この世界にあなたがいるとしたら、あなたは混沌とした世界を、自分で突き進んでいくしかないのだ。
完結編、あるいは続編に向かって。