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宝島(1)  作者: 畑のお肉
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知るも罪、知らぬも罪

私は幼い頃から何かを隠すのが好きな子だった。

大切な物は家族も知らない場所に隠した。例えば好きな男の子にもらった綺麗な石は、ぬいぐるみが身につけていた小さなポシェットの中に。学校の授業中で作った粘土の指輪は、スパンコールが充満したビンの中に。それぞれ自分だけが覚えていて、ふと眺めたくなったときはそこから取り出す。眺めるときは、物に対する恍惚感と、自分しか所在を知らないという独占した気持ちに、いつもうっとりとするのだった。

そして、思春期になる頃には、今度は大切な物ではなく別の物を隠すようになっていった。誰にも話せない「秘密の話」だ。

日記とも違う、他の人には知られてはいけない「秘密」なこと。友達のアキちゃんの恋愛事情、部活の先輩がしていた万引きの仕方、気になる同級生の詳しいプロフィールなど…。私はそのいろいろな秘密を、うまく家の中に隠していった。

多くは「木を隠すなら森の中に」方針で、本のページの間に秘密が書かれたメモを挟めていった。本はもちろん人目についてはいけないので、もう読まないであろう児童書や図鑑などにした。無垢な動物の紹介欄に性の秘密事などが挟めてあると滑稽だったが、それも含め、隠す作業には夢中になった。

そんな遊びをしていたことを思い出したのは、つい最近のことだ。少女時代を遥かに過ぎ、今年で35歳となった私は、仕事に明け暮れる日々ではあったが、何かに打ち込めるというのは有難いことだった。そうして過ごしていたある日、中学時代仲の良かったマキから突然連絡が来た。同級生のケンタと結婚したので、その結婚式に参加してほしい、という内容だった。

連絡を見た瞬間、胸に重苦しさを感じた。そしてあの少女だった頃、本のページにも隠せなかった「秘密」が、20年を過ぎた今、黒い靄のように立ち込め始めたのだった。

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